金剛
綾女曰く、遠くから見て学べることは無い。実際に攻撃を受ける事で、相手が攻撃を受けた際にどう逃げるかを体験し、今度は自分が攻撃する時にそれを参考にする。それが彼女の練習方法だった。
今、灯也がボコボコにされている能力は『金剛力士』に関する書籍による身体強化。筋力を上げ、瞬発力を高める能力を使っていた。その瞬発力で灯也に詰めより、威力が底上げされた掌低を打ちこむ。
灯也にも同じ能力が付与されていたが、当然まともに使えるはずも無く、先程から一方的に綾女の攻撃を受け続けている。
(ヤバイッ、避けらんねぇ)
腹部に衝撃が襲う。
「この能力は応用が無いシンプルなものだから初歩的なものよ。出典が気になるなら、後日にでも書庫で確認しなさい」
言って彼女はもう一度灯也に掌底を打つ。が、空振りに終わった。そこに有るべき灯也の顔面が無い。綾女が片目の視線を下げると、膝と腰をかがめた姿が写る。
気を失ったのかと手を伸ばす綾女を、灯也は右手で制す。
「大丈夫です。今のは意図的に避けました。ほとんど本能に近かったけど」
「そういうのの積み重ねが必要よ。でもね……」
立ち上がった灯也に、今までの倍以上のスピードで蹴りが灯也を吹き飛ばす。
「今のが全力のスピードよ。それでも過信は出来ない。なぜなら、防げる生徒が何人かいるからよ」
床をゴロゴロと転がり続けて壁で止まる。壁はクッション素材でできていて柔らかい。蹴りの衝撃に耐え、壁に手を付き何とか立ち上がる。
(あれを普通に防ぐ人がいるのか。つくづく大変な高校だ)
その後も幾つかの能力を体験し、その日の訓練が終了した。
図書委員会の能力の個数は不明。今後も増える事は間違いない。その一つ一つに世の法則を無視した力が有り、それを把握しなければならない。能力を見て受ける事は確実に灯也を成長させていた。




