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第三十三章《剣騎喪失 -Blade Princess;22 Lost the Lust-》

 雨が戦いの終結を告げていた。

 ジンは、雨に濡れながら、倒れた相棒の頬をそっと撫でる。

 雨の冷たさは、生きていることを実感させてくれる。どうにも、生き残ったらしいと教えてくれる。

 戦いの最中に閃いた斬撃は、鉄をも斬り裂く強靱な刃と化していた。

 風の仙術だけでは決して出せない威力。それは、新しい可能性の発露だ。

 まだ、強くなれる。まだ、先に行ける。

 これで彼女を、守れる。

 ジンは、冷えた相棒の身体を温めるように、その手を握り続けた。

 その手が握り返してくることはなくても、握り続けた。

 彼女を支え続けることが、きっと自分の存在理由なのだろうから。

 だから、今はその手を包む。それだけだ。

 やがて彼女が立ち上がれるその時まで、ジンは支え続ける。

 自身の命の価値は、それだけで構わなかった。


――


 撤退命令。

 それは、中途半端な苛立ちばかりを生じさせる。

 殺しきれなかった。

 生きている。それは確信していた。

 しかし、出されたのは撤退命令だ。

 そのうえ、雨で視界は悪い。転がった屍体も多く、戦闘の継続には適していない場所だ。

 それでも戦いはできる。敵は殺せる。

 見失いさえしなければ。雨さえ降らなければ。

 不運さえ重ならなければ、マーカスは敵を殺せた。

 果たすことができたのに。

 苛立ちは募るばかりだ。

 伝令を殺してやろうかとさえ思った。

 しかし、すぐ近くまで、ジークの気配が迫ってきていては、それもできない。ヤツは無駄な殺生にはうるさい。

 エルフという言葉には過敏に反応するが、それ以外には比較的慎重と言わざるを得ない性格をしている。

 全く以て度し難い。

 殺戮を愉しめないとは、あまりに貧弱だ。虚弱だとすら感じる。

 あるいは臆病なのか、慎重なのか……。

 そんな心境は実にどうでもいいことだが、疑問といえば疑問だ。

 あんな人殺しが得意な人間が、それを愉しまない道理とは一体何なのだろう。

 理解に苦しむところだ。あれだけの戦力があればあの二人を殺してもお釣りが来るくらいだったろうに……。

 ……無い物ねだりも、みっともないか。と、マーカスは思考を打ち切った。

 その手の中では、拳銃が鈍く禍々しい光を放っていた。


――


 搬送するための担架に乗せられたスピアは、混濁した意識の中、聞こえるはずのない声を聞いた気がした。


「……やれやれ。このザマでは先が思いやられるのぅ、……スピアや」


 懐かしい声に一瞬意識が覚醒しかけたスピアだったが、それも僅かな間のことだった。

 深いダメージがスピアの精神を削ってゆく。

 再び意識の水底へ沈んでゆくのを、力なく横たわるだけのスピアは、留める術など持たなかった。


 スピアと同様に担架で運ばれていたのはリースだ。

 傷はスピア同様に深く、相当に消耗していた。仙術に覚醒したばかりだったからこそ、出血を抑えられていたのだろう。それこそが生死を分けていた。

 もしも、覚醒がもっと早く訪れていたのならば、今頃出血は抑え切れていなかっただろう。

 そうなれば、彼女は死んでいた。

 それは本当に些細な偶然に過ぎなかった。

 そんな些細な偶然がいくつも重なったことで、アークたちは生存することができた。

 辛うじて生き延びるに至ったのだ。


 そうして、エイクスと呼ばれた青年と、その仲間たちによる救護班の活躍により、仙術使いたちはほとんどが生存・帰還が確認された。

 だがしかし……、フレアだけが依然として姿が確認されなかったのだった。


 姿自体は一度見つかってはいたのだ。だが、救出のための担架を用意しているほんの僅かな時間、目を逸らしている間に、彼の姿はなくなっていた。

 その後の彼の動向は誰にも掴めなかった。

 アークは方々に手を伸ばし策を弄したものの、やはり見つからず、そのまま戦後処理や部隊の再編成、次なる戦闘の準備にとやらねばならない作業が山ほど増えた結果、捜索活動は打ち切らざるを得なくなった。

 手の空いた時間に救護班ことエイクスたちに捜索を依頼するも、フレアの行方はようとして知れず、時ばかりが無駄に経過した。


 ――一体、何処へ行ってしまったんですか、フレア君……!

なんかちょっと中途半端な気もするけれど、とりあえず第2篇、剣姫篇終了です。

突然ですが、フレアの物語は復讐がテーマです。

そんなわけでボスは復讐者です。

そんなボスに立ち向かう主人公が復讐心を持たないというのでは、あまりに内容が薄い気がするのです。

大切な誰かを失った誰かじゃなきゃ、大切な誰かを失った痛みを分かち合えないと思うんです。

そんなボスと戦うからこそ、主人公にはしっかりと復讐心に芽生えていただく必要がありました。

そのためのシナリオが剣姫篇です。クレアはこのエピソードのために生まれました。

初期案ではフェリーという名の妹キャラだったんですが、より強い復讐心を抱いてもらうためにより大切な人になっていただきました。

それを失ったフレアの悲しみは作者にも量りきれませんが、それを克服することこそがこのお話のテーマでした。

なので次からはフレアが立ち直るまでのお話になります。そのあとはラストバトルですね!

いやぁ、全然終わりが見えないなぁw

ともあれ、マイペースに続けていきますので、お時間のあるかたはお付き合いください。

拙い筆と、拙いキャラたちで精一杯のおもてなしをさせてください。

どうかよろしくお願いします。

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