金龍
石壁に囲まれた中に、巨大な眠れる金龍・・・。
それは、かつて目にした水龍神とも違う、圧倒的な存在感を放っています・・・。
(これはマズイ・・・)
冷たい汗が、背筋を伝わります・・・。
ジメジメした空気が、やけに重く感じられます。
私は、気配を消してそっと体の向きを替え、龍から離れようと慎重に足を踏み出します・・・。
一歩、二歩、三・・・ズ~ッ!
(あ、足、滑った・・・!)
「・・・待て!」
(・・・!)
すさまじい太さの龍の尾が、ゆっくりと私の行く手を遮ります!
(あわわ・・・、起こしてしまってごめんなさい!)
「儂の眠りを妨げたのはお主か?」
(ごめんなさい、ごめんなさい、そんなつもりは、これっぽっちもありませんでした!)
「どうやってここに入れた?」
(えっと、癒しの井戸の跡に立っていたら意識が遠くなって・・・。その~、気がついたらここにいました)
「ふむ、結界を越えたか・・・するとお主は・・・か?」
(え? はい? よく聞こえない・・・)
「儂は、まだ眠りから完全に覚めておらぬ。目が覚めるまで、人の世の感覚であと数年はかかる・・・」
(はい、すいませんでした。どうぞゆっくりお休みして下さい・・・)
よし! なんとかごまかしたら、ピンチを切り抜けられるかも・・・。
「お主、名は何という?」
(ひゃ、ラ、ラシルといいます・・・)
「必ず我が嫁に迎える故、もうしばらく待て・・・」
「はい?」
「これを渡しておこう。手を出せ」
龍の尾が僅かに振られると、手のひらに刻印のある金色の指輪が転がります。
「ではもう行け! 目が覚めたら迎えに行く故案ずるな。儂はもうしばらくまどろむことにする」
(え? あの・・・)
・・・・・・・・
「あら、気が付いたのね。大丈夫?」
私は、井戸が埋められた場所で、奥様に抱きかかえられていました。金の指輪を握りしめたまま・・・。
「立てるかしら? 誰か人を呼ぶ?」
奥様に聞くと、私が気を失っていたのは、ほんのわずかの間だったとか。そして、龍から、必ず我が嫁に迎える、と宣言され指輪をもらってしまった私。これってまさかのプロポーズ・・・?
もう、早く村に帰って皆に相談しないと大変です! 翌朝、奥様が、もう1日休んだら? と引き留めるのを、大丈夫です、大丈夫です、と振り切るようにして私はお屋敷を出ました・・・。
次回、帰郷、です。




