剣の雫
夕方頃、背負い袋を抱えた聖仙様が宿にやってきました。
ドラゴンもどきにやられた病人を見舞うので、同行して欲しいと頼まれます。
「これは、聖仙様、わざわざありがとうございます」
村長さんから、二人が寝ている天蓋車へと案内してもらいます。
その周りは、皆が心配そうに中の様子を伺っています。
聖仙様は、皆に自分と私を紹介し、背負い袋から竹筒を取り出しました。
「これは、龍巫女殿が剣舞をもって女神様と龍神様に許しを得ていただいた癒しの水じゃ。我らは剣の雫と呼んでおる。神々からは、決して人に知られることなく必要な者にのみ使うようにと厳命され、儂が管理しておる。今回は、龍巫女殿たっての願いでこの病人に遣わされた」
おお~と周囲からどよめきが上がる。
「今から見ること、起きることは口外無用じゃ。それが守れるかの?」
皆、こくこくとうなずく。私だけ、また何か始めるつもりですか? と内心渋い顔。
「では、これを差し上げる故飲ませなさい、効き目は保証付きじゃ、何せ金貨10枚する代物じゃ」
微笑みながら、それを巫女に渡す聖仙様・・・。
「お待ちください!そのような貴重なものいただくわけには参りません」
護衛隊長が慌てて辞退する。
「くわっくわっ、命に代えはないぞ、それを思えば安いものじゃ、のう龍巫女殿?」
聖仙様、剣の雫の値段が3倍以上に跳ね上がりました。とっても悪い顔しています!
「どうぞ!」
やむをえず微笑む私・・・。
それではお言葉に甘えてと隊長は引き下がり、巫女達が剣の雫を二人に飲ませます。
「・・・目が見える!」
「・・・焼けるような痛みが消えた?」
横になっていた二人が寝台から体を起こし、あまりの回復の早さに驚きます。
それを見ておお~、とさらに大きなどよめきと喜びの声が巻き起こります。
巫女達と隊長は、跪き両手を胸の前で交差させ最大限の謝意を表すと、周囲もそれに続きます。
「聖仙様、奇跡を目の当たりし感激に耐えません。ところで、お近づきの印に一献どうでしょうか?王都から特上の酒を持参しております。癒しの水のお話をもそっと詳しく・・・」
いやいや私の方こそ、と貴族や商人が聖仙様にすり寄ります。
「くわっくわっ、損して得撮れ、とはこのことじゃ!」
聖仙様は、貴族や商人に取り囲まれながらその場を後にしたのでした。
後に残った、巫女二人と護衛隊隊長さん、
しばらく、ラシルに向けた跪拝礼を崩そうとはしませんでした・・・。
重体の二人は、剣の雫のおかげで無事回復です。聖仙様、なかなかやり手のようですね。




