第7話 任務再開
ここでの生活も慣れてきた。そう思ってしまう日数が経った。巫女の女は別々に行動しても良いと言って、俺を散歩に出す。曰く「ここでの生活に慣れてもらうため」だそうだ。学校でも瀬戸という男子生徒とは話すようになった。主に話すのは狐だが、俺もポツポツ話をする。
(・・・こんな生活をしていて良いのだろうか)
『良いんじゃねえか?俺の器になっている恩恵だと思えよ』
「・・・むしろ呪いだ」
その時、誰かに腕をつかまれた。
『「誰だ」』
腕に何かをはめられる。
『これは、呪いの・・・!!!』
「おい、狐?」
狐の声が聞こえない。
「タナカ。俺だ」
暗がりから現れたのは・・・。
「リーダー!どうやってここに」
「し!説明は後だ。任務を遂行するぞ」
「任務って・・・。あと他のメンバーは?」
「タナカ!お前は任務に疑問を挟むのか!?」
言われて体が硬直した。そうだ。任務に疑問を挟むなんて・・・。リーダーに疑問を抱くなんて・・・。
「すみません」
「よし、行くぞ」
俺は大分、不抜けていたようだ。
任務の目的を気にするなんて、狐の声がどうして聞こえなくなったか気にするなんて・・・。
(そんなこと、あってはならない)
リーダーの後を一心不乱に追いかける。何故リーダーはこんなに道に詳しいんだ?いけない。また疑問に思ってしまった。ここでの生活が俺を蝕んでいる・・・。
「この建物に潜入する」
「はい」
建物の外観は他の木造建築と同じ。しかし、セキュリティが牢より厳しそうだった。そのセキュリティもリーダーが難なく解除する。
「この奥だ」
俺は黙ってついていく。そのことにリーダーは満足そうだった。
地下へ地下へと降りていく。この宇宙船にこんな地下があるなんて思ってもみなかった。
「?」
下の方で何か赤く輝いている。
「あれが目的のもの。アマテラスシステムだ」
それは宝石のように光り輝く石のような物体だった。
「システム?これが?」
「ああ。この石が宇宙船のすべてを賄っている」
「石、一つで・・・」
なんという力だろう。これを手に入れることが任務だったと思えば納得がいく。
「さあ。タナカ。その石を取れ」
「?俺がですか?」
「早くしろ」
手を伸ばしかけた、その時だった。
「それに触れてはいけません!!」
現れたのは、巫女の女、そしてマリアだった。
「ジュン、その人リーダーだけどリーダーじゃないんだ!」
マリアが叫ぶ。
「は?何を言って」
「タナカ!!さっさと取るんだ」
「他のみんなが、殺されたの!!脱走する際。そいつに」
マリアの言葉が地下に響いた。
「殺された・・・殺した?リーダーが?」
「任務に必要だったからだ」
「な、脱走するのにそんな必要が」
「お前は!!任務に疑問を持つな!!」
疑問を持つな。当たり前の事。でも、今は違う。
「教えてください。何故ですか?何故、みんなを・・・」
「馬鹿が」
「貴方が教えてくれないなら・・・こいつに聞く」
俺は腕輪を外しながら叫んだ。
「狐!!俺の疑問に答えてくれ!!!」