第6話 夜空
縁側で夜空を見上げる。空には月と星。潜入した日と同じように輝いている。
(やはり無駄だな・・・)
ジュンの居たU-120は空なんてものは無かった。どこまでも機械化され合理的な移民宇宙船であった。
「なにを見ているのですか?」
巫女の女が話しかけてきた。
「別に・・・ただ夜空を投影するなんて無駄だと思ってな」
「夜空が・・・無駄。そんなこと考えたこともありませんでした」
「本物ではないだろう。だから無駄なエネルギーを使っているなと」
「私にとっては、これが当たり前の夜の風景です」
会話が途切れる。虫の声まで聞こえる・・・なんて無駄なんだろう。
「タナカ殿にとって夜とはどんなものですか」
「何だ急に」
「なんとなく、聞きたくて・・・」
「夜か・・・訓練が終わり、寝る時間だ」
「そうですか。それだけだったのですね」
「何?」
「あなたにっとの夜はそれだけ。私は恵まれていたんだなと・・・」
「・・・馬鹿にしてるのか」
「違います。・・・私はもう休みます。おやすみなさい」
そう言って巫女の女は去って行った。
夜の意味、体を休める時間としか考えてなかった自分が今、夜空を眺めている。
『ちゃんと季節の星々になってるんだぜ』
「そうか」
『この移民宇宙船は神々が心安く過ごせるようにと設計された。だが、一番安らいでいるのは人間かもしれないな』
神々の船。この船には他に何があるのだろう。自分は何のために、この船に潜入したのだろう。
今更ながらそんな疑問が浮かんだのであった。