第5話 学校
『おい、学校に行くぞ』
「何だ唐突に」
『ジュン。捕虜とは言え、日がな一日鈴の家でゴロゴロしてる訳にはいかんだろ。だから鈴と学校へ通え』
狐が言う。確かに、巫女の女が居なければマリアの面会にもいけないし、やることはないが・・・
『すでに制服も用意してある。鈴』
「はい」
そこには学校の制服を着た巫女の女が立っていた。
「・・・」
『お、何だ。鈴の制服姿に見惚れたか』
「な、違う。巫女服以外も着るのかと思ってだな・・・」
「制服ですから。これがタナカ殿の男子用の制服です」
制服を手渡される。
「・・・着付けいたしますか?」
「問題ない!自分で着替えられる」
「左様ですか」
・・・この女、わざとなのだろうか。
学校に着いたらすべて話は通っているらしく、教室に案内された。巫女の女と同じクラスだ。
「タナカ殿、自己紹介を」
「ジュン・タナカだ」
『宇迦之御魂神だ。気軽にウカ様と呼んでくれ』
席は巫女の女の隣だった。
「へえ、あんたが噂の侵入者か」
前の席の男が話しかけてきた。
「俺は諏訪 健斗。諏訪神社の宮司で鈴の幼馴染だ。男同士だから気兼ねなく行こうぜ。ウカ様もよろしく」
『おう』
「あと、もう一人幼馴染が居て。おい小鳥!」
一人の少女がクラスから逃げるように去って行った。
「あいつ、侵入者のお前怖がってやがる。ウカ様が憑いてるのにな」
「普通の態度だろう」
「かもな。逃げたのが伊勢 小鳥。伊勢神社の巫女で俺たちの幼馴染だ」
『小鳥は相変わらず小さいな~』
「あ、ウカ様もそう思います?」
結局、宮司の男と狐が話し続けた。
授業も数学、化学のみならず、国語や歴史といった古典的なものまであった。
(地球時代の歴史なんて勉強してどうするんだ)
『俺にとっては懐かしいけどな』
(だいたい・・・こんな知識、なんの役に立つ)
『役に立つ、立たないより・・・ジュン、これはお前の先祖の話だ』
(・・・先祖?)
『地球時代にお前の先祖がいなかったら、今のお前も居ないだろう?これは、お前のご先祖様の話。そう思って、ありがたく聞くんだな』
先祖、親・・・概念でしか知らないもの。ジュンが育ったU-120は、物心ついた時には子供たちが集団で生活し、特性に合わせた職業訓練を受けていた。ジュンの場合は軍人だ。だから、親なんて、先祖なんて考えたこともなかった。
(昔のこと・・・俺の先祖・・・)
狐にそそのかされ、そんな事を考える自分が馬鹿らしく、同時にとても不思議だった。




