第4話 妹分
翌日の朝、他の捕虜に面会したいという話を巫女の女に切り出したところ、あっさりと認められた。
「ただし、私も一緒に参ります」
『そうだな。あと、会うのはお前の妹分だけだ』
「何故だ」
『リーダーの男と会って、脱走の打ち合わせでもされたら困るからな』
・・・そうだ、思考は全て読まれているのだった。俺は狐の思考が読めないことが悔しい。
『悔しがるなよ。俺が神様だから仕方ないだろ』
(・・・傲慢)
『神だからな。鈴、飯食ったら連れてってやれ』
「かしこまりました」
潜入した際は夜だったから、しっかりと日の中を歩くのは初めてだった。
「本当に古典的な建物ばかりだな」
「木造建築の事ですか?古き良き街並みを守っているのです」
「・・・馬鹿馬鹿しい」
『そんなこと無いぜ。懐かしいってかんじだろ』
(懐かしさなんて分かるかよ)
「ここです」
連れてこられた建物も木造建築の古典的なものだった。
『まあ、ここは見た目だけで、ちゃんとした施設だぞ』
「そうですね。木目調ですが建物自体は・・・」
巫女の女が近づきインターホンへ近づく。
「稲荷神社の稲荷 鈴です。捕虜の面会に参りました」
ピッ ガ――――――――――――――――
「・・・しっかりとしています。脱走の手引きなど、お考えにならないよう」
「思考を読まれてるんだ・・・無駄な事はしない」
「左様ですか」
階段を降り、地下に案内される。
「この先に捕縛された女性1名が居ます」
「・・・お前もついてくるのか」
「ウカ様をお一人にする訳にはいきません」
「そうか・・・入るぞ」
ドアを開ける。そこには格子を隔てて俺の妹分、マリア・タテガミが立っていた。
「マリア!大丈夫か」
「ジュン。どうやってここに」
「説明する。お前は大丈夫か。ケガとか・・・」
「何もないよ。捕まっちゃったけどね、ジュンこそ大丈夫なの」
「ああ。俺は大丈夫だ。今、俺は信じられないかもしれないんだが・・・」
マリアに潜入からの経緯を話す。マリアが怪訝な顔になっていく。
「ジュン・・・頭を打っておかしくなっちゃたの?」
「本当なんだ。ここは、俺たちの常識が通じないんだ」
『その言い方は酷くないか?俺からしてみれば、お前たちの暮らしが非常識だよ』
「マリアが混乱する。黙れ」
『いいや。話す。マリアよ。俺がウカ様だ。ジュンの体に憑依している』
「・・・声が違う。目も変だ。ジュンは大丈夫なのか」
『ああ、健康体だぜ』
「・・・信じる」
「マリア」
「ジュン、鏡を見た?ウカ・・・様が話しているとき、貴方の目が金色だった」
「金・・・色?」
『鏡を見て話したことは無かったからな。大丈夫。体に害はないさ』
「なら良かった・・・ジュン、後ろの女は?」
「ああ。狐・・・ウカ様の神社の巫女だ。・・・世話になっている」
「・・・ふーん」
二人の間で視線が交わされた。・・・何故だかゾッとした。
『・・・女は怖いな』
「何の話だ?」
鈍いなと返されたが意味が分からない。とりあえず、マリアの無事が確認できて良かった。