やぁ、久しぶり?
「ここか…」
俺が『アンダータ』から降り立ったのは、目的地であるファイアドレイクがよく出現している…というフェレイス地方のとある火山のふもとにある、冒険者ギルドの支部があるとある町の近くだった。
「あのしつこいストーカーでも、義母上殿たちが差し向けてくだすった追手たちからも十分逃げられるだけの距離は稼げただろ…ふぅーーーっ! つっかれたぁ…」
『アンダータ』の使用距離は喰わせる魔力によって変動する。
さっきまで俺がうろついていた王都近辺からこのフェレイス地方まではおよそ400マイル(マイルってのは約1.6キロメートルのことで、この世界での距離や重さの単位はイギリスで使われてるヤード・ポンド法のものと同じだ。………自分で思っといてなんだけど、イギリスってなんだ?)だから…相当数の魔力を喰わせた。
王族とか貴族ってのは何故かに魔力の絶対数が高いらしく、俺も例外ではない。
っていうか、魔法に適性がないのに保有量で言ったらこの国でも指折り………らしい。全部リオンの受け売りだけどな!
――――――――何はともあれ、俺的に魔力を回復させるのの一番の回復方法は美味いもん食ってとっとと寝ることなんだよね。
だから、その欲求を果たすべく冒険者ギルドの所属者だけに解放されている食堂兼宿屋へ向かうべく冒険者ギルドの扉を開いた瞬間だった。
「やぁ、久しぶり? そう思わないかい………レクス?」
「そ……その声は……っ!」
背後からかけられたその声に俺の背筋が凍りつく。
ああ…俺としたことが、なんていうことだ。
一番会いたくないと思っていた相手だというのに、解放された嬉しさのあまり対策なんてほとんどとっていなかった。
「僕の眼から離れたら途端にコレ? よっぽど『お仕置き』、されたかったの?」
「そっ、そんな…わけっ! ないに決まってんだろっ!!」
「ふぅん……? そう?」
ポン、と俺の肩におかれたその手には、いったいどこにそんな力があるんだというような力がこもっていた。
ってちょ、魔力! 魔力を肩においた手を媒体にして無理やり吸収しようとすんな!! 普段なら絶えられる(それでも十分やだ)けど、俺今魔力かなり使った後! 下手したら死ぬよ俺!?
「や、やめろ! さっき『アンダータ』で長距離移動したばっかなんだよ!」
「あ…なるほど。だから普段の無駄に放出してる魔力が少なかったのか」
「そうだ、そういうことだから…これ以上俺の魔力吸収すんのやめてくんないかなぁ、リオン!!」
俺が後ろを振り返るとそこには俺の予想のその通り、もう見慣れた儚げな顔(またの名を女顔。だが俺は知っている…リオンに対してその言葉を口にする=死、あるのみと言う方程式があることを…)に花でも舞うんじゃないかと言うような(花? そりゃ…スズランとかキンポウゲとかジンチョウゲだな…因みに、全部毒花だ)イイ笑顔を浮かべた相棒兼幼馴染兼従者がいた。
「えー、やだ」
返ってきた返事はそう、予想通り。予想通り、俺に対する情けも容赦もないものだったけど。
「「やだ」じゃねぇだろ!? 死ぬよ、俺! 死んじゃうよ!?」
「大丈夫大丈夫…今日一日何かしでかす気力体力分の魔力を吸い取ったらちゃんとやめてあげる予定だから」
「大丈夫じゃねーだろ!?」
「それに万が一君を殺しちゃったとしても………責任は君だし。僕は悪くない」
「なにそれどこのマイナスな方ですか!?」
―――――――――この後…
リオンに「勝手な行動してまことに申し訳ありませんでした。是非にお目付け役として仲間に入ってくださいお願いします」と言って土下座して謝り懇願するまで、リオンのお説教はとまらなかったのを明記しておきたいと思う。
どっちのが偉いのかって? そりゃ社会的ヒエラルキーで言ったら俺はかなり上位の存在だが、現実で言うと俺はリオンに勝てたためしがない。本当にガキだった頃から、一度も。
でもさ……情状酌量の余地はあってもいいと思うんだ!