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第19話 エール

「どうしたんですか?二人共」


 お昼から帰ったら何だか上の空で仕事に集中できないようだ。


「結末が気になって仕事が手に付かないわ」と美和さん。


「漫画の続きが気になる小学生ですね」


「くっ、笑わないでよサト……神島さん」


「御免なさい美和さん、会社の帰り道にでも教えますよ」


「また、そんな軽く言って」


「いいじゃないですか?密室で話す事でもないですから」


「いや、密室でする話でしょうよ」


松坂さんも突っ込んでくる。


「そうかな?」




 午後の休憩時間に我が経理部に社長秘書の氷山玲華さんが訪れて来た。次元の違う美女が突然現れて男子社員達が狼狽え始めた。


「秘書の氷山さんだ」

「本当綺麗だな、だから社長秘書か」

「容姿だけで成れる訳ねぇだろ!」


「失礼します。神島さんチョットツラ貸してください」


「えっ?口が悪いですね氷山さんは、僕はトイレの個室かビルの裏手に連れ込まれボコられるのですか?」


「どこの不良だよ!」


 誰かが突っ込んでくれた。僕の意図が通じて少し嬉しかった。


「私について来てください。部長少し彼を借りますね。そんなに時間は掛からないと思います」


「ええ、どうぞごゆっくり」


あー、僕は売られたんだ。




 なんか、皆んなの視線が痛いわ美和さんの目付きが悪くなっているし、松坂さんは無言だし、何の用だろう玲華さん。


エレベーターで上の階を上がっていく。


 エレベーター内のこの雰囲気が僕は苦手だ。玲華さんは何も話さない僕も無言だ。然程時間も掛かっていない筈なのに体感的に五分も十分もその場に立っている気になってしまう。エレベーターあるある、なのかもしれない。


「この会議室を使いましょうれ」


僕は玲華さんの後に着いて側に座った。


「要件はなんでしょうか?氷山さん」


 じっと僕を見る彼女は社長秘書にしか見えない。出来る女なんだろうな。


あっ社長秘書だったわ!


 まあ、当たりはつけてある。僕と氷山さんの共通点は松坂さんだ。

推すのか、潰すのか、現状維持か……


「お嬢様との交際はどうなの?」


「交際とは?」


「親密度よ」


「当初と然程変わってませんが、5%もアップしてませんね。消費税より低いですよ。アハハハ」


一応笑って見た。


「そう」


「最近松坂さんの所に行ってないようですけど、監視は良いのですか?まあ、カメラなどあるから必要ないかも知れませんけどね」


「私も多忙でね」


もっと、話せよ!情報くれよ!駄目か。


「そうですか。それでは用も済んだ事だし僕は仕事に戻ります」


ガタッと椅子をずらし立ち上がると。


「貴方、お嬢様と結婚しない?」


「へっ?けっこんでしゅか?」


 チクショー!突然変な事言うから噛んでしまっただろ!


「本気ですか?僕の事も調べているんでしょう。何処からその様な話になるのでしょうか?」


あー、あのジジィの差金だね。


「貴方はお嬢様との相性が良さそうだからそう言った迄」


「素敵なお嬢様ですが、全くその気にはなりません。と言ったら貴方はどうしますか?」


「何もしないわ」


 そりゃそうだ。自分から動いてヘマこいたらジジィに捨てられるものな。


 はぁ、金と権利者。庶民には太刀打ち出来ないわ!


「仕事に戻ります」


一言だけ言って僕は会議室を出た。


 僕は経理部に戻りながら今の事を考えたが何も分からなかった。


 ただ、氷山玲華という女がジジィの手足イヤ、傀儡だな完璧に調教されていると言うか洗脳レベルの刷り込みだ。


 ジジィめ!何を考えている?娘メグミさんの幸せ……有り得んな全く……それとも僕か……ひぃ!ケツの穴がひゅんとなったワイ!後は……美和さん?


情報が足りない……


ノックをしながらドアを開け中に入る。


「神島戻りました」


 全員が僕をチラッと見る。そうだよな見た目完璧な社長秘書さんと出掛けなもんな。でも直ぐに帰って来ただろ?君達のゲスな勘ぐりは当てはまらないよ!


でも美和さんは違った。


「サトルさん!氷山さんと何していたの?

まさか!」


 僕の襟元の匂いを嗅ぎ出す。


「やめてください美和さん!」


 めっちゃ美人の美和さん今日も良い匂いがします。大きな胸を所構わずに押し当ててくるし、深い谷間も見せてくれる。しかし、その行為は旦那の浮気を疑う奥さんの如く、物的証拠を探し出そうとする彼女。しまいには僕のズボンのファスナー迄開けて僕ちゃんを調べる美和さん。勿論、僕ちゃんは表に出させなかった。職場での仕事中だ本体の僕が死んでしまうから……


「なんで、ここが膨らんでいるの?」


「それは……三和子さんの所為でこうなりました!」


「えっ?」


顔を赤らめて急に、しおらしくなる。


 経験が無い訳では無い彼女、初めては僕だと言っていた気がするが……


 彼女には隠し事が出来ないと僕は肝に銘じた。


「一言二言話しただけですよ。あ、三言かな?」


 じぃっと僕を見る美和さん。松坂さんは無言のままだ。ジジィがでしゃばって来た事は分かっている様子だけど中身迄は知らさせていないんだろう。


 僕は美和さんを安心させる為、彼女にそっと耳打ちした。


「今の僕には三和子さんだけですよ」


 ふっと、言ってから気がついた。

僕の横にはメグミさんがいた事を……

彼女が大人し過ぎて僕がメグミさんを見落とした?


背中に尋常でない汗が流れ出した。


 ポっとしていた美和さんも気付いたようだメグミさんの存在を……僕が日替わりで彼女達と交際をしていた事を他の人が知ったら二股ヤリチンクズ野郎と罵るだろう。


 自覚はあるしかし僕は言いたい!

スケジュールを決めたのは彼女達なのだと!僕の意見は一つも聞いて貰えなかったと!会う度に徹底して搾り取られる事を声を大にして皆んなに告げたい!


言っても誰も信じてくれないよな……


「僕は二人ともしゅきでしゅ!」と言った途端に激痛が!


「ぎゃっーーー!!!」


静かな職場に響き渡る男の悲鳴!


 両脇から手が延び僕の両太腿を力一杯

彼女達につねられたのだ。


 尋常じゃない悲鳴を聞いてドタドタと周りの部署から人が集まって来た。


 事件性を感じたのであろうサスマタが二本見える。 


「ヤベって、早く弁明しないと大変な事になるわ!」


 僕は立ち上がり腰を九十度に曲げ頭を下げながら大声で弁明をした。


「大変申し訳ございません!今の奇声は僕があげたものです!足の裏が急に痒くなり靴を脱いで机に擦っていたら、思いの外強く滑ってしまい机に左足の小指を強打していまい、余りにもの激痛で悲鳴を上げてしまいました。皆様のお仕事の邪魔をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!」


僕は更に深く頭を下げた。


 美和さんが何か言おうとしたが僕は手でそれを制した。余計に面倒くさくなるからな。


 皆んなが引いてくれた、安堵する者や舌打ちする者はサボれなかったしな。


僕は部署の皆んなにも謝罪をする。


「お仕事の邪魔をして大変申し訳ございません」


 部長が代表して今後注意をする様にと仰った。


 清水さんが僕を見てニヤニヤしているが何か気付かれたか?


 その後退社時間まで甲斐甲斐しく彼女達に世話を焼かれていた。




 会社が見えなくなるまで歩くと美和さんが待ってましたと、僕の腕にしがみついて来た。メグミさんは僕に寄り添う様に触れないギリギリの位置を保っている。


二人とも頑固だよな。僕はそう感じた。


「御免なさいねサトルさん迷惑掛けてしまって」


「いえ、別に迷惑だと思ってもいませんし」


「サトルさんが水虫で悩んで居たなんて私ちっとも気づかなかったわ帰りにドラッグストアに寄りましょうよ」


「アンタ、何見ていたのよ!サトル君は一度も靴を脱いで居ないわ」


「えっ?」


「あれはサトル君の咄嗟の方便よ」


「そうなの?サトルさん」


僕は黙って美和さんの手を握った。


 一瞬目を見開いたが僕にしだれかかり

上目遣いに潤んだ美和さんの瞳に不覚にも僕は可愛いと思ってしまった。


「それじゃ、約束通り結末を話すね」


「結構人通りもあるわよ」


「平気さ僕は気にしていないし終わった事だからね」


 メグミさんの言う通りだと思う。周りには同じ流れの人も歩いている。何だろうか、人が集まって来てる?


「サトル君がドアを開けると裸の男女がいた。からかな?」


「そっからね。男はソファに座りアレは男の股間に顔を埋めていたんだ」


「フェラね」


平気でボソリ呟くメグミさん。


「男は僕と目が合うと達してしまったようだった」


「見られて喜ぶタイプなのね」


意外にも美和さんの口から出たのだ。


「アレも沢山出して貰って嬉しそうに口を押さえていたよ」


「「「全部飲み込むのね」」」


 二人の声が揃った……何人かの別の人の声も聞こえてた気もしたが……


「男の異変に気付いたアレは徐に振り返ったんだ。そして僕と初めて目が合った途端にブホッと吹き出したんだ」


「それって笑う所?」


「「「違うわよ」」」


 メグミさんと知らない何人かの人に突っ込まれる美和さん……天然なのか?


「口から大量の男のモノを吹き出し必死に手で押さえたが指の間からボタボタこぼれ落ちるし顔中男の汁だらけだったよ」


「ひぇーー!!結婚を前提に一緒に暮らしていた女がやらかしたーー!!」


「思わず僕も貰いゲロを受けてしまってトイレに駆け込んだんだ」


「わかるわー!他人の口から吐き出したのは気持ち悪いよね」


「アンタ、少しズレているわよ」


 周りを囲む様に歩いていた人達も頷いていた。


 トイレでゲーゲーしているとドアをドンドン叩く奴がいたんだ。


「サトル!聞いて!コレは違うのよ!

ねえ!聞いている?コレは違うのよ!」


 ああ、僕はこんな馬鹿と結婚しょうとしていたのか……自分が惨めに思えた。


「私が全てを飲み込めば良かったのに吐き出した所為でこんな事に……」


「お前が飲み込んでも僕には飲み込める訳ないだろ!」


 男の体液さえ見せなければセーフと思っているのか?途方も無い馬鹿だったとは、結婚前に知れて良かったわ!


 何でこんなのと付き合ったんだろうと暫く考え込んだよ。


「兎に角直ぐに出て行け!警察を呼んで男を不法侵入で告訴する!お前の荷物は全て外に出して置く!

三日経ってもあったらすべて処分するからな!分かったらさっさと出て行け!」



「ってな事があったんですよ!」


「なにぃ!女は黙って!……」


「ノリは良いんだけど、思いつかなかったらやらない事ね」


「あい……」


 外してしまった美和さん恥ずかしそうだ。でも可愛いから許すぞ!


「それが、女性の手作りが食べられない理由なのね」


「そうだね。精液だらけの口元、手の平からこぼれ落ちる男の精子これだけは今もハッキリ覚えているよ。吐きそうになるくらい気持ちの悪いものだった」


「女の作る手料理は男の精液だらけの手で作ったモノに見えてね。食べられないのさ、全然違うのは分かっていてもね」


「サトルさん……」


「でも、特に不便も無いし気にもして無いから、治さなくても良いと思っているよ」


「サトル君、そんな経験したなら女性に対しての不信感が半端ないでしょう?」


「まあ、生活費用の口座のキャッシュカードをアレが持っていたので口座に入っていた300万全部抜かれていたけどね」


「300万もですか?」


 それで良いのかと激オコの美和さんだった。


「そう、思うとこはそれぐらいかな」


「えっその裏切ったその人に対しては

何もないんですか?」


「えー、だって雌だよ!いくら口では好きです、愛しているって言ってもデカチンで突かれりゃ直ぐに裏切るのが当たり前の雌なのに、そんなのに精神を割いても無駄の極致ででしょう!無駄だよね」


「サトルさん……」


「ふう、こうなる前に雌理論を読んでおいて良かったとつくづく思うね」


「雌理論ってなんですか?」


「ああ、簡単な事だよメスなんて元々生殖のために生きているもんでしょう?

基本強い遺伝子を取り込む為の生殖。

お金とか権利とか持っている男は稀で庶民ではデカチンが優遇される。

勿論、優秀な女性も沢山いるけど、オスに関しては最終的な意志は子宮が決めるのさ」


「そんな事があるのでしょうか?」


「メグミさんの気持ちも分かるけど、実例なんて沢山あるでしょう?しっかりとした子なのに次の日にチャラい男と腕を組んで歩いていたり、旦那さん一筋だった奥さんがキモいオヤジと不倫していたなんて、頭で考えれば直ぐに答えが出る筈なのにそんな馬鹿な結論を出すのは、脳味噌の決定ではなく別の意志が働いたと言っているんだよ。

つまり、人生の決定も子宮が決めているって事だね」


「それってエロ漫画の世界によくある設定だけど現実でも良くあるわね」


 メグミさんはエロ漫画も詳しいのか

美和さんはお口ぽか〜んだ。


「コレがトラウマの原因だね。ありふれていただろう」


「まあ、よくある不倫現場遭遇ね」


「私、サトルさんのトラウマ克服を手伝います」


「えー、別にいいですよ不便してないし」


「いえ、駄目です私が何とかしますので安心して下さい!」


美和さんマジだわ。


「あー、はいではお願いします?」


あー、頼んじゃったよ!


突然知らない女性から声を掛けられた。


「あの〜頑張って下さい私応援しています」


「えっ?はい、ありがとうございます?」


「私も応援しますので頑張って下さい」


「ありがとうございます?」


「ガンバレよ!」

「俺も応援するぜ!」

「頑張って下さいね」


「えっ?どう言う事?」


「あの〜是非握手して下さい!私も応援します!」


「あ、はい、ありがとう?」


 何故か周りに居た見知らぬ人達が僕にエールを送り足速に去っていった。


 えっえー!僕の両脇には絶世の美女が居るのに何故僕だけが同情されたの?

幾ら考えても分からなかった。


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