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俺達の説明は続く…ジンコびっくり大会…そんなに俺達凄くなってる?

「あの事件の担当検事は急遽うちの父が決まったのよ!

 実家に連絡したら毎晩遅くまで検察局で大変そうよ。

 実は私も来年の話だけど卒論のテーマはあの事件の事を掘り下げようと思っていたのよ。

 …え…じゃあ、じゃあ、世間で言われてる仕事人て…」

「…ええ、そうよ。

 あれ、私達なの。」


真鈴が答えるとジンコは目を見開いて俺達を順番に見た。

その時個室のドアが開き、加奈と喜朗おじが皿を抱えて入って来た。


「お待たせしました!

 ちょっとお店の方で注文が立て込んじゃって遅くなってごめんなさい。」


加奈と喜朗おじが俺達の前に注文の料理を並べた。


「あ、喜朗おじ、こちらがジンコさんだ。」

「あ、どうも、明石からお話は伺っています。

 明日は店を少し早じまいして私らもあの屋敷に伺いますのでその時に。」

「あ、はい、お手を煩わせてごめんなさい。

 ジンコと言います。

 よろしくお願いいたします。」


笑顔で挨拶した喜朗おじがちらりとジンコの下半身を埋め尽くしているスケベ死霊達を見た。


「なるほど、道理で加奈の足元がすっきりしたわけだ。」

「なんですか?」


ジンコの問いに喜朗おじがいやいやと手を振ってからジンコの顔を見た。


「いや、何でもないですよ。

 どうぞごゆっくり。」


喜朗が個室を出て行こうとするとジンコが声を掛けた。


「あの…マスターもあの…悪鬼なんですか?」

「はい、その通りでございます。」

「え…なんだか全然そんな感じに見えなくて…。」


ジンコが言うと喜朗おじがドアを閉めた。


「う~ん、こうすれば納得できますか?」


喜朗おじが見る見る凶悪な悪鬼の顔に変貌した。


「ひっ、あ、判りました。

 ありがとうございます。」


好好爺(実年齢は永遠の45歳だが)の顔に戻った喜朗おじは笑顔を残して出て行った。


「ふぅ、なんかとても驚く事が沢山です。」

「ジンコあまり驚いた感じじゃ無いじゃん。」

「真鈴、私は実は内心驚く事ばかりなのよ。

 でも、いちいち顔に出していては…なるべく顔に出さないように冷静でいようと思ったのよ。

 だから四郎さんの腕を真鈴が斬ったあの時、真鈴にビンタして!って頼んだのよ。

 気をしっかり持たないと、と思ったから。

 痛みのお陰で冷静になれたけどね。」

「うむ、われも昔幻術を操る悪鬼との戦いで危うくなった時は己の足をナイフで刺して正気を取り戻した事があったな。」

「ですよね~。

 でも、真鈴のビンタは効きすぎたみたいでした。

 いまでも顔が痛いわ。

 あら、良い匂い!

 美味しそうですね!」

「食べながら話を続けましょう。」


俺がそう言って食事が始まった。

ドアが開いて加奈が何かを包んだお絞りを持って来た。


「ジンコさん、喜朗おじがこれでお顔を冷やすようにって。

 氷を包んだおしぼりです。

 ごめんなさいね、私もジンコさんの顔が少し腫れているのを気が付いていたけど、なんか言っては失礼かな?と思って言わなかったんだけど。」

「ありがとう、加奈さん。

 マスターにもお礼を言っていたと伝えてください。

 ふわぁ、冷たくて気持ち良いです!

 助かります!」

「ふわぁ~!

 さん付けなんかしないで加奈と呼び捨てにしてください~!

 失礼します。」


加奈が恐縮しながら個室を出て行った。

なるほど、モテる男の気づかいとはこう言うものかと俺は感心した。

そして加奈の無邪気な可愛らしさと人懐っこさ。

あの晩に雑魚の悪鬼の集団を目の前にして少しも臆せずに翻弄し挑発して殺しまくった加奈の姿をジンコが見たらどう思うだろうか?

そして俺達は子供殺しの外道の件の続きを話した。


「え?じゃあ、あの動画に映っていた黒い犬は明石さんが変化していたの?」

「うむ、われら悪鬼はどういう訳か幾つかの系統の動物に分かれるがそのうちに変化できるようになるのだ。」

「じゃあ、さっきのマスターも何かの生き物に…あんなお年寄りなのに…」


俺達は吹き出した。

喜朗おじは悪鬼になった時45歳で、それ以来歳をとっていないのだ。

喜朗おじがハルクのように、いやいや、あの狂暴なグリフォンに変化した時のジンコの顔が見たくなった。


その後、はなちゃんが暴走気味になり小規模の地震と停電を引き起こした事、ジョスホールと岩井テレサと接触した事、死霊屋敷の隣の土地に眠る強大な力を持つ何かの事、岩井テレサと同盟を組んで俺達は第5騎兵ワイバーンと呼ばれるようになった事、廃ボーリング場で凶悪な大集団の悪鬼との壮絶な戦闘の事、救援に来た第3騎兵スコルピオの副長が四郎の婚約者と言うか恋人のルージュリリーで160年ぶりの再会を果たした事、そして岩井テレサ達は対立する悪鬼の組織が危うく人類を滅ぼしてしまう事態を3回以上阻止している事、今も正体不明の悪鬼の組織が暗躍している事など色々な事をジンコに話した。


「ふぅ、皆さんのお話を伺って驚く事ばかりです。

 なるほど、私は今までいろいろな歴史を調べて来て、よく人類が今まで絶滅しなかった物だと、非常に運が良かったと思っていましたが、人類と共存しようとする悪鬼の組織と人類を支配下に置こうとする悪鬼の組織との戦いが続いていて、人類史の裏に悪鬼の組織が介入していたと思うと合点が行きます。

人類はただ単に運が良かったなどとは違うと言う事が判りました。

…真鈴、あなたはいつの間にか私が知らない所で大きな、気が遠くなるほど大きな戦いに身を投じていたのね…。」


ジンコが手を伸ばして真鈴の手を握った。


「ジンコ…私達はそんな大それたことにまだ参加していないわ。

 よしてよ、なんか顔が赤くなっちゃうよ。」

「真鈴、あまり謙遜しないで。

 そして、岩井テレサさん達が言うように人類は自分達と別の者が存在してこの社会にいる事をすんなり受け入れられるほど成熟していない事は私にもはっきり判るわ。

 悪鬼の存在を人類全体が知ってしまうとどんな大混乱が起こるか…あなた達が秘密裏に動いている事の重要さも充分に理解できました。」


俺達はジンコの言葉を聞いて体の力が抜けた。

冷静な検察官の様なジンコが俺達の事を判ってくれたのかと、実はそれまで張りつめていた俺達の気分が和らいだ。


「あとは、四郎さん達が本当に不老不死の存在で何百年も生きて来ているのかを、あの明石全登の息子で関ヶ原の頃から武将として生きて来たと言う明石景行さんにお話をお伺いして事実を確認したいと思います。

 私の疑問はまだまだあります。

 疑問の全てを納得して、あなた達に関しての事が私の中で確信に変わるまで私はあなた達を追求します。」


ほっとした俺達は、ガクッとずっこけたい気持ちになった。

なんてなんてなんて疑い深い女性なんだろうか?

なんでこんなに疑い深い美しい女性があんなに足が臭くて女性並みに足が小さい男と恋人になんか…


その後、食事を終えた俺達は明日、死霊屋敷で明石一家と合流して話を聞くと言う事を確認して店を出た。

店を出て駐車場まで歩く途中、振り返るとあのスケベ死霊達がジンコの後ろをカサコソと四つん這いでぞろぞろ付いて来ているのを見てしまった。


「うわ…あれ何とかならないかな…」

「うむ、マンションまで付いてきたら邪魔くさいな。」

「確かにジンコに実害は無いとはいえウザイじゃの。

 四郎、止まってわらわをあいつらに向けるじゃの。」


はなちゃんが小声で言い、はなちゃんを抱いた四郎が立ち止まって店を振り返った。


「え?四郎さん、忘れものですか?」

「いや、店の外観を見たくなってな。

 われもいつかこんな感じのアメリカ南部料理の店でも作るかな。

 われとリリーでな。」

「ええ~!

 四郎、それは素敵ね!

 ジンコ、ここの料理も凄く美味しかったけど、四郎が作るケイジャン料理の煮込みとかも凄く美味しいのよ!」

「ええ?そうなんですか?

 私も食べてみたいです!」


四郎と真鈴、ジンコが話している間、はなちゃんがジンコに付いて来ているスケベ死霊達に向かって白目を剥いて顔をかくかくさせた。


「そのスケベどもがぁ!

 図々しいのじゃの!

 かあぁあああ!」


はなちゃんがかろうじてすぐ横の俺に聞こえる程度の小声で言うと、スケベ死霊達がはじかれたように後ろに飛び、慌てて俺達に向かって土下座した。


「ひっ、はなちゃん怖い顔をしているけどどうしたのかしら?」

「あ、いや、はなちゃんは何だかんだ言っても7歳の女の子で時々こんな顔をして遊ぶんだよ。」

「そうなのよジンコ、はなちゃんは喜ぶと少し気色悪い顔になるのよ。

 でも、慣れれば大丈夫よ。」

「うむ、さあ、帰ろうか。

 夜のトレーニングをせねばな。」


俺達は恐怖の表情で土下座しているスケベ死霊達を後にマンションに帰った。

マンションに帰ると俺達はトレーニングウェアに着替えた。


「あの、これから何をするんですか?」

「ジンコ、私達は悪鬼と何とか互角に戦えるように殆ど毎日、朝晩と時間が空いた時にトレーニングしてるのよ。」

「あ、それで真鈴は良く食べるようになってるのにスタイルが引き締まって来たのね!

 それに最近反射神経凄いし!なるほど!」

「うふふ、まだ数週間と言う所だけどね。

 ジンコも見学する?」

「ええ!見学と言うよりも私も参加してみたいんだけど、良いかしら?」


真鈴が俺達を見た。


「うむ、まぁ、ただ見てるよりは面白いとは思う。

 ジンコさんが付いてこれるかどうかは別だけどな。」


四郎が苦笑いを浮かべて頷いた。


「よし、ジンコ、私の替えのトレーニングウェアを貸してあげる。

 まぁ、試しに体験しても損は無いわよね。」


トレーニングウェアに着替えたジンコを交えて、まず俺達は日本間で準備運動をした。

軽い前屈をしただけなのにジンコは悲鳴を上げた。


「痛い痛い痛い!真鈴!もう少し普通にしてよ!」

「なによジンコ、あなた身体が固いわね。」

「私は高校まで新体操をしてたのよ!

 体は普通の人より柔らかい方よ!」


確かに、俺も真鈴も最初の頃は前屈で四郎に押された時は体が悲鳴をあげた物だった。

やっと今気が付いたけど今では俺達は相撲取り並みに体が柔らかくなっている事に気が付いた。

準備体操を終わった時点ですでにジンコの息が荒くなっている。

そして公園までのランニング。

ジンコは俺達のペースについてこれず、たびたび止まって息を荒くしているジンコの周りをランニングして、ジンコが再び走り出せるまで待った。

公園でのストレッチ、ここでもジンコは周りの人が振り返るほどの悲鳴を上げた。

おれは股割りをするジンコの足を押しながら、ジンコの悲鳴とジンコの髪から香る良い匂いにやや興奮してしまった。


「ああ!痛い痛い痛い!

 吉岡さん!もう少しゆっくり押して!

 ゆっくり押して~!

 優しく押して~!」

「うふふ、ジンコさん。

 我慢すればだんだん気持ち良くなりますよ~。」

「彩斗!何を卑猥な会話してるのよ!」

「え?ああ、ごめんごめん。」

「さあ、交代だ。

 今度は彩斗が股割り、ジンコさんが足を押してくれ。」


ジンコは先ほどの復讐なのか俺の足を思い切り地面に押した。

しかし、股割りをしている俺の足は抵抗なくべったりと地面についた。


「ええ、うそ、信じられない、こんなの初めて。

 吉岡さんの足はこんな固い筋肉なのにこんな…私こんなの…初めて…。」


俺の耳元で思い切り俺の足を押して息を乱したジンコが驚いて囁いている。

それは今や脳の大部分がエロの方向に向いている俺にとってはジンコの言葉がエロ転換されて物凄く卑猥な響きに聞こえた。

もう、俺はこのまま一生ジンコに股割りをして足を押されていたいと思ったがちょっと股間が危なくなって来て慌ててしまった。

勿論四郎に足を押されて股割りをしている真鈴の足もべったり地面についている。

その後、反復横跳びをする俺達の動きにもジンコは全然ついてこれなかった。


ストレッチが終わり、ジンコは中身の綿を抜かれたぬいぐるみのようにベンチで伸びていた。


「さて、ジンコさんが動けるようになったら帰ろう。

 そしてナイフトレーニングとルージュの槍の訓練だな。」


死にそうなジンコを何とか走らせながらマンションに帰りつくと俺達は日本間でナイフトレーニングを始めた。

畳に寝そべって起き上がれないくらいに疲れ果てたジンコは俺達の無様なナイフトレーニングを見つめている。


「やれやれ、君らはまだまだだな。

 よし、次はルージュの槍の練習だな。

 少し汗でも拭いて水分補給をしろ。」


俺と真鈴がタオルで汗を拭き、水を飲みながらジンコの横に立った。


「ジンコ、どう?」


ジンコがやっと畳から身を起こした。


「どうって…真鈴…あなた達、気が付いていないの?

 今、私はあなた達を見ていたけど…プロのボクシング選手でもあんなに早く動けないわよ…それなのに四郎さんはまだまだだって…」

「え?」

「え?」


ジンコの言葉に俺も真鈴も驚いた。

俺達そんなに速くなってる?

そう言えば四郎もだんだんと動きを速くして俺達の相手をしているって言ってたけど、まさかプロのボクシング選手なんて…。

確かにあの晩、廃ボーリング場で雑魚の悪鬼の集団と戦っていた時、俺はかなり冷静に悪鬼の動きを捉えていた感じはする。

奴らがそんなに速い動きをするとは見えなかった。

四郎や加奈に比べたら随分のろまな奴らだと思っていたんだが…。 


「ジンコさん、彩斗も真鈴も確かに短期間でかなり速く正確な動きが出来るようになったが、われから見たらまだまだだな。

 せめて加奈程度の速さと正確さを身につけたら少しは安心できるのだが。」

「…加奈って『ひだまり』のあの加奈ちゃんですか?」

「うむ、加奈はずっと速いぞ。

 彩斗と真鈴が束になって掛かってもまだまだ加奈には敵わないな。」

「あの、悪鬼ってそんなに凄いんですか?

 私には今の吉岡さんや真鈴の動きがとても速くて…」

「ジンコ、吉岡さんなんてもう呼ばないで彩斗と呼んで良いわよ。

 四郎だって呼び捨てで構わないわ。

 ジンコ、四郎が本気出した時の速さを見たい?」

「…うん、見てみたい。」

「うむ、ただわれは悪鬼の中でも早い方だとは思うがな、だが、景行やポール様はもっと段違いに早いのだが。

 まあ、見ていなさい。」


四郎がそう言うと日本間の向こうまで歩いて行った。


「ジンコさん、いや、ジンコ。

 瞬き厳禁だぞ。」


そう言うと四郎の体が一瞬消えたかのような錯覚を覚え、何か黒い霧状の物が物凄い速さでこちらに向かってくるように見え、そしてジンコの横に笑顔の四郎が立っていた。

ほんの数瞬間遅れて四郎が巻き起こした風がやって来た。

何度か見ている俺達はともかく、初めて四郎の全速力を見るジンコはさっきまで四郎が立っていたところをじっと見つめ、そしてすぐ横に立っている四郎を見て口をぽかんと開けた。


「どうかなジンコ?」

「…悪鬼と戦うって…大変…なんですね…。」

「そうよ、ジンコ、凄く大変なんだよ~!」


真鈴は大して大変そうな感じがしない口調で言った。




続く




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