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19話 ノーリッジ魔法王国

ノーリッジ魔法王国。

その国は中央大陸から南西に位置するバッファ大陸にある3つの国のうちの1つ。

冒険者ギルド総本山があり英雄王が治める国、自由国家リバテイル。

商業ギルド本社があり商王が治める国、商業都市プロスペリア。

そして、魔術ギルド本部があり魔導王が治める国、ノーリッジ魔法王国。

この3国は三国同盟を結んでおり、永世中立国という立場を取ってる。

理由はバッファ大陸から更に南、世界の果てとも言われる永久凍土が関係している。

大陸の3%も攻略されていないと言われる永久凍土。

気候は不安定でブリザートやサイクロンが吹き荒れる極寒の大陸でもあり、豊富な資源が眠っている大陸でもある。

その大陸に冒険者を送るリバテイル、持ち帰った資源や素材などを研究するノーリッジ、それを世界各国へと流通させるプロスペリア。

そういった仕組みでこの大陸にある三ヵ国は同盟を結び、永世中立国として存在している。

ノーリッジに訪れる人々がまず驚くのが大結界。

結界を超えるとガラリと空気が変わるのだ。

そして王都ノーリッジを大きく囲う球体の大結界は、空からも地中からも魔物の侵入を防ぐ。

初代魔導王が発案した首都包囲型大結界は、今も尚健在である。

大結界を超えると見えてくるのが、王都をぐるりと囲う美しい装飾が施された外壁。

本来であれば強固で頑丈な防壁でなければならないが、ノーリッジは大結界のおかげで訪れる者を魅了する美しい外壁となっている。

そしてこの国で何よりも美しいのは夜だ。

光の魔道具によって幻想的に照らされる街並みは訪れる人々の心を掴むだろう。





商業区メルリス商会ノーリッジ支店。

商会の娘、メメス・メリルスは浮かれに浮かれまくっていた。


「あぁ!4年に一度の魔導祭典!とても楽しみですわ!」


金髪ツインテールをユラユラと揺らし、フリフリでゴスロリ風な薄ピンクの衣装を身に纏いながら、メメスは胸に手を当て、クルクルと周り、その喜びを表現していた。


「しかしですわ!商会の娘として、そして未来の商会長として、楽しむだけではなりませんわ!大きなお金が動くこと!それすなわち、商売のヒントが、チャンスが転がっているという事ですわ!ここは市場をしっかりと調査し、未来の商会長としてしっかりと役目を果たさなければなりませんわ!」


腰に手を当て、人差し指をビシッと天に差し、正に威風堂々と言った様子で宣言をするメメス。


「さぁ、行きますわよダーニャ!いざ、市場調査ですわ!」


「かしこまりました、メメスお嬢様」


自身の世話係兼商会のメイドでもあるダーニャを連れ、メメスはもっとも人が集まる中央区へと繰り出していった。


「儲け話の匂いがプンプンしますわ!」


目を$マークに変えながら。





東区裏通り。

シャルマ王国4大公爵家の娘、エリカ・フリーヴェル・ディリジェントは強そうな者、血の気が多そうな者を見つけては所構わず喧嘩を売りまくっていた。

いや、売られまくっていた。

先ほど肩がぶつかった男は5人組のグループだったらしく、身なりの良いエリカに目を付けて喧嘩を売ってきたが、今は白目を剥いて地べたに転がっている。


「ふん!全然大したことないじゃない!どういう事なの!マリアン!」


「どういう事かと言われましても、私の知ったことではありません。男共が弱い事と私は何の関係もありませんので」


「それもそうね!」


不完全燃焼だ、と言わんばかりに転がっている男の頭をゴンと蹴飛ばすと、エリカはまた次の獲物を探しに繰り出すのだった。


「次はもうちょっと手ごたえのある奴がいいわね!」


期待に胸を膨らませ、若干頬を紅潮させながら。





2年間の修行を終え、師匠の元を卒業した俺とルシェは、ビーストウィングの面々と共にノーリッジ魔法王国、王都ノーリッジへと向かっていた。

道のりは約14日。

冒険者の足であれば7日、ギルドが所有している緊急依頼用の高速馬車であれば3日で到着する距離だが、野営の仕方やパーティでの立ち回り、その他冒険者のいろはを道中で教えてもらっていた為、かなりゆったりとしたペースだ。


「さすがだな、二人とも!戦闘や知識に関しては問題なさそうだ。あとは複数パーティーでの立ち回り等色々あるが、追々覚えていけば問題ないだろう」


ビーストウィングのリーダー、レイクが俺の背中をバシバシと叩いてきた。


「はは、ありがとうございます」


「特にルシェリィさんは前衛としてとても優秀で凄いです!流石、双翼の魔術師様の一番弟子といったところでしょうか!」


「ふふん!」


テンの背中に乗り、ぺったんこな胸をこれでもかと反らして腰に手を当てるルシェ。

そう、旅が始まってからもう俺とルシェへのよいしょが止まらないのだ。

前衛では単騎無双のルシェ、後衛にはデュアルマジックでヘイト管理ができる俺。

そして状況によってはスイッチし、前後衛を入れ替えられる。

今の所100点満点だそうだ。


「ただし、複数パーティーで行動の際はもう少し手を抜いてもいい」


そう言ったのはフレッドだ。


「手を抜くですか?」


「あぁ、お前達はなんでも出来てしまうからな。複数パーティーでの戦闘となるとそれなりの戦い方があるんだ。まぁこれは追々覚えていくといいだろう」


なるほど。

一人はみんなの為に、みんなは一人の為にってやつか。

うん、わかるよ。

漫画とかでもあるもんね。

知ってる。

知ってるけど、じゃあどうすればいいの?って言われたら、俺はこう答えるだろう。

分からん!と。

だから、追々覚えていけばいいのだ。


そんな話をしてると、一瞬体に違和感があった。

超極薄の膜を通過したような、そんな違和感だ。



「あれ?今なんか・・・」

「なに今の?」


どうやらルシェも違和感に気づいたようだ。

そして、違和感の後には、妙な安心感が訪れた。


「分かったか?今のがノーリッジの大結界だ」


「どお?凄いでしょ。ノーリッジを囲う球体の結界で、地面の下にまで張られてるらしいわよ。この結界のおかげで大半の魔物が王都へ近づけないようになってるの」


「ほぉ~~」


ルシェが感銘の声を上げて、結界の狭間を行ったり来たりしてる。

表情がコロコロと変わってちょっと面白い。


「ルシェ、結界の解析とかできそう?」


ちょっと意地悪な質問を投げかけてみた。

この結界の解析は無理だ。

恐らく師匠でも無理だ。

ルシェならなんて答えるだろう。


「え?無理だよ。これはお師さんでも無理だと思う」


即答でした。

そんな話をしていると、パーラがぼそりと呟いた。


「結界を超えた後、結界の解析の話をする人初めて見ました・・・」



そうこうしているうちに、王都ノーリッジが見えてきた。

外壁には美しい装飾が施されていて、入口でもある巨大な正門には、馬車、旅人、獣人、エルフがずらりと列をなして並んでいる。


え!?獣人!?

列には頭からケモ耳、お尻からは尻尾を生やした獣人の姿もあった!


うおおおお!

獣人だよ!獣人!

やばい、耳を触らせてほしい!

尻尾をモフってみたい!

そんな感情が一気に湧き出て興奮してきた!

だって獣人ですよ!

そんなことを思っていると、どこから声が聞こえた。


「こんにちは!その尻尾とか耳って本物ですか!?触ってもいいですか!?」


ルシェだ。

素直さと好奇心が天元突破して、きっと我慢が出来なかったんだろう。

ちょっとイケメン風のお兄さん獣人に目をキラキラと輝かせながらせがんでいる。


「お?元気なお嬢ちゃんだな。尻尾は触らせられねぇが、耳ならいいぜ!」


そんなやりとりをして、耳を触らせてもらってるルシェ。

いいなぁ、俺も触ってみたいど、可愛い幼女ならともかく、野郎に触られても嬉しくないだろうし、俺は大人しくしておこう。


入場手続きに関しては簡単だ。

ビーストウィングが俺達の身元保証人となり、仮の在留ビザのようなものを発行してもらい入場。

そして、テンの入場許可証も同時に発行してもらった。


こうして、俺たちはノーリッジ魔法王国、王都ノーリッジへ入場した。




読んで頂きありがとうございます。


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