とんでもない娘だった。
「私に任せて!こいつをやればまた相当強くなれるってことじゃない!!」
「お、おい!」
ユウが制止するよりも早く、ルカがヒュドラの前へと飛び出していく。それと同時にどこに隠れていたのか、沢山の様々な奴らが集まってきた。
皆ヒュドラ討伐が目的のように囲んでいる。
「あぁ!もう!どいつもこいつも欲張りなんだから!」
お前もその一人じゃないか。まあ、でも生き抜く為には強くならないといけないし、その為には戦わないといけないもんな。
ヒュドラは依然として周囲を警戒しながらいくつもの首で威嚇している。
ユウはそれを見ながら手のひらに大気が集まり球になるイメージを集中していた。貫くか、吹き飛ばすかできれば御の字ではあるが、サイクロプスよりの三倍は大きく体重も重い相手にどれだけ通用するのか分からない。
「一番手もらったぁーーーーーーーーー!!」
そう叫んだのはルカだった。一体何をと見た瞬間だった。ルカの瞳が燃えるように赤く光り、全身から赤茶色の体毛が溢れ出し、ルカの顔が大きく変化していく。
「あれは・・・狼男・・・?狼女か?」
「ウォオォオォォ!!」
遠吠えにも似た大きく甲高い声をルカが発した瞬間、周囲の大気が震え、ズン!っと言う音と共に物理的な何かが身体を抑え付けるような錯覚に襲われた。
それはヒュドラも周囲の奴らも同じようだった。身動きが一瞬取れず、出鼻をくじかれたようにつんのめっている。
その隙にルカが大きく地面を蹴り、真っ直ぐにヒュドラへと飛び込んでいった。
その距離を瞬きさえ許さない速度で入り込み、その勢いのまま手の鉤爪で一閃する。
この一連の動きが見えたのは果たしてどれほどの者たちだろうか、タケヒロは――――まだ起き上がってすらいない。というか草むらからケツが確認できるだけだ。
ヒュドラの反対側へと飛び降りたルカの足が地面に降り立ったとき、数ある内の首の一本が引きちぎられるように切断されていた。
「キシャアアアアアアアアアアア!!!」
ヒュドラが大きく足踏みをして闇雲に尻尾を振り回す。どうやらルカの攻撃で混乱したようだ。とんでもない娘が仲間になったようだ。
巨大な尻尾が振り回されることで何十人かのゴブリンやら戦士やらがなぎ倒されるが、皆怯むことなく攻撃を仕掛けていく。
戦線はもう大混戦だ。
「この調子で首取ってけば終わるんじゃなぁーい?」
ルカが余裕の表情で首を投げ捨てたときだった。切断された首は今度は二股に分かれて二つの首になって再生したのだ。
明らかに怒ったヒュドラの口から紫色の煙が見えた。
「何あれずるい!!」
「バカ!下がれルカ!!」
ユウがそう叫んで手に集めていた大気の球をヒュドラに投げる。
それと同時にヒュドラの口から高圧の毒気が噴出された。なぎ払うように放たれた毒気は木々を一瞬で溶かすほどだったが、そこにいた奴らがかぶる前にユウの大気の球がヒュドラの目の前に到達する。
「弾けろ!!!」
ユウが叫んで開いた手を握る。
その瞬間、大気の球が破裂し、瞬間的な暴風が巻き起こった。ヒュドラと戦士たちの間で空気の爆発のようなものが起こり、戦士は後方へ吹き飛ばされ、ヒュドラは自らが吐いた毒気をもろに自身にかぶることになった。
強力な毒気を浴びたヒュドラの表皮が酸を浴びたようにジュワジュワと溶け出す。
「うへぇ・・・ユウ・・・アンタえげつないことすんのね。」
「あ、いや・・・そんなつもりじゃ・・・」
あまりの苦痛にかヒュドラがのたうち回ったところで森の奥から大きな影が飛び出してきた。
それはおそらく他の転生者だろう者だったが一言で言えばミノタウロスだった。牛の頭に筋肉隆々の人間の身体。下半身は牛。体長は4mはあるだろう。怯んでいるヒュドラの腹部を大きな斧で横薙ぎにする。
あまりの衝撃にヒュドラが大きくのけぞり腹部から大量に出血した。
「ミノタウロスの人!ヒュドラの血にも毒がある可能性が!!」
ユウが叫ぶとすぐにミノタウロスが反応して斧で血を浴びるのを回避した。しかし、斧はわずかに溶けてしまったようだ。それを見て、ミノタウロスがユウにわずかに向き直る。
「忠告感謝する。前衛は任されよ。」
うわーミノタウロスさんかっけぇー。うちのタケヒロとかまだケツ・・・あれ?タケヒロは?
周囲を見渡すがタケヒロがいない。おかしな事を考えなければいいが。
「ちょっと!前衛は私なの!アンタはすっこんでなさいよ!」
「タケヒロショットガァーーン!!ショットガァーーーン!!」
あぁ、あの石つぶてか。邪魔になってなければいいけど。いや、ルカもミノタウロスもやりにくそう。足元でひたすら石投げてる人いたらそりゃやりにくいよね。
タケヒロはひたすら足を狙っているようでそれなりに動きを鈍らせているようだった。
ルカが首を切断し、ミノタウロスが突進と殴打で牽制。良い連携だが、決めてがない。何よりこれでは首が増えるばかりでヒュドラの再生能力に追いついていない。
「確か・・・ヒュドラの再生を止めるには首を切断した後に焼かなければならないはず。火属性・・・火属性・・・」
そうユウが悩んでいると突然後ろから声をかけられる。
「炎があればいいのか?」
振り向けばそこには竜がいた。ドラゴンというよりワイバーンという少し小さいサイズのようだったが。
「うお・・!びっくりした!え?ワイバーンって炎吐けたっけ?」
「ワイバーンも種族スキルでそういった属性を扱えるようだ。幸いにも私は火属性を得ている。君の仲間の連携プレイを見ていて一緒に戦いたくなった。」
「あ、ありがとう!足元のは気にしなくていいから、ミノタウロスと狼女とタイミングを合わせてくれ!毒気がまた来たら俺が何とかする!」
「了解した!」
やだ、なにこのイケメン。




