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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第四章 エルナ&アイリス西方視察
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第三十二話 西方視察・謎の鐘鎚

 盗賊たちとの一件からしばらく。


 再び街道を進む馬車の中。


 アイリスが、ふと思い出したようにヴィンセントへ尋ねた。


「そういえば、ヴィンセント?」


「はい?」


「その鐘の音なのですが……」


 アイリスがヴィンセントの持つ鐘鎚を見る。


「音そのものに、何か力がありますの?」


「ないと思いますよ?」


 ヴィンセントは少し考えてから答えた。


「訓練の時も、皆さんは近くで聞いていましたよね?」


「…………」


 アイリスが思い返す。


 ごぉぉん。


 リゼットが吹き飛んだ時も。


 ごぉぉん。


 何度も訓練場に響いた鐘の音。


 しかし――


「……確かに、何もありませんでしたわね」


「はい」


「では、盗賊たちが動けなくなったのは?」


「私が殴ったからだと思います!」


「そうですわよね」


 エルナも鐘鎚を見る。


「となると、やはり謎なのは、なぜ鐘の音がするのかですわね」


「本当に……」


 エルナがため息をつく。


「教会でも光っていましたし……」


 アイリスがヴィンセントを見る。


「ヴィンセントは、熱心な太陽教の信者でしたの?」


「いえ」


 ヴィンセントは即答した。


「熱心ではありません」


「そうなのですか?」


「日々、普通に感謝はしますが……教会へ行くのも年に数度程度です」


「…………」


「…………」


 ますます謎だった。


「では、なぜ……」


「さあ?」


 ヴィンセントは鐘鎚を見る。


 鐘鎚も何も答えない。


「……ますます謎ですわね」


 アイリスが呟いた。


 ◇


 その頃。


 西方、ウェストリア王国。


 密偵は王宮へ戻り、報告を終えていた。


「それでは何も分からんではないか!」


 報告を聞いた男が頭を抱える。


「申し訳ありません」


「金色の閃光と鐘の音がして、盗賊が吹き飛んだ……それだけか!」


「はい……」


「うーむ……」


 男は考え込む。


「今度は帰路の際に、草の者を手配するか」


「草の者を?」


「やはり、ある程度実力のある者でなければ測れん」


 今回の密偵は、遠くから見ることしかできなかった。


 それではヴィンセントの実力も、皇女たちの警備体制も分からない。


「手配しろ」


「はっ!」


 西方では、新たな調査が動き始めた。


 ◇


 一方。


 南方、サウレア王国。


 こちらでも密偵からの報告が届いていた。


「……なるほど」


 報告を読み終えた重臣が呟く。


「敵対は、ありえないな」


「はい」


 皇国の皇女たちは西方へ向かっている。


 その途中で盗賊に襲われた。


 そして――


 金色の閃光とともに、盗賊たちは壊滅した。


 しかし、それだけではない。


「南方都市では、道路の敷設も始まり……」


「料理の新しいレシピも広まっているようだ」


「はい。都市は以前より活気づいております」


 重臣は満足そうに頷く。


「ならば、今後は更なる友好を求めようではないか」


「よろしいので?」


「ああ」


 少なくとも、皇国が南方へ敵意を向けているようには見えない。


 むしろ――


「こちらには蛮族もおるでな」


「……確かに」


「皇国と争っている場合ではない」


 南国は、静かに友好路線へ舵を切り始めていた。


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