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羅針盤が示す異世界で。  作者: AIで書い太郎
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第4章 光の街の影

治癒院ヒーラリウム


 光の街リュミエールの中心部へ近づくにつれ、建物は白亜の壁に金の装飾が増え、どこか神殿めいた空気をまとっていた。


「ここが……治癒院?」


「はい。“ヒーラリウム”。この街の心臓部です」


 アリアは淡い息を吐く。  その声音はどこか固く、先ほどまでの柔らかさが消えていた。


 入口は大きなアーチになっており、魔光石で組まれた紋章が静かに輝いている。  門の左右では、白衣姿の治癒師たちが怪我人を迎え入れていた。


「レイ様ですね。アリア様より伺っています。こちらへどうぞ」


「あ、はい……」


(なんか、アリアより扱い良くない?)


 治癒師に案内され、白く清潔な部屋へ通された。

 壁には光の紋章が刻まれ、淡い温度の魔力が室内を満たしている。


「失礼ですが、腕の紋章を見せていただけますか?」


「これ……熱くなってるやつ?」


「ええ」


 俺が服の袖をめくると、治癒師は息を呑んだ。


「これは……まさか、本当に“選定者の紋”……!」


「やっぱり特別なのか?」


「特別どころではありません。これは……世界の位相そのものに干渉する高度な――」


「専門用語はほどほどに」


 背後からアリアが部屋へ入ってきた。  治癒師は慌てて黙る。


「レイ。検査はすぐ終わります。時間は……少しかかりますが」


「どれくらい?」


「半刻ほど」


(けっこう長いな……)


 治癒師は俺の腕に魔力を通していく。

 暖かい波が皮膚の下を流れ、紋章がゆっくり脈動し始めた。


「痛みはありませんか?」


「ないけど……なんか変な感じだな……」


「変、とは?」


「いや……部屋の空気が色で見える感じ。青とか白とか……」


「……!」


 治癒師の目が大きく見開かれた。


「“視界の変色”。副作用の初期症状です」


「副作用……!?」


 アリアの顔が一瞬だけ険しくなった。



---


◆スキル《羅針盤の導き》の“副作用”


「レイ。落ち着いて聞いてください」


「もっと優しく言って……」


「では落ち着きなさい」


「結局同じだろ!」


 アリアは小さく息をつくと、俺の隣に座った。


「レイのスキルは、本来ひとりの人間が扱うには強すぎる力です。  だから……世界の情報を“見える形”で脳に押しつけてきます」


「押しつけって……」


「あなたの選択によって世界が変わる。その分、世界もあなたを“観測しようとする”」


「なにそれ怖い!」


「観測される側は、色彩の乱れ、未来の断片、音の歪み……さまざまな副作用が現れます」


 治癒師が小さく頷いた。


「最初は軽度です。しかし、使用を重ねるほど強くなります」


「……俺、そんな危ないスキル使ってたの?」


「危険ではありません。“方向性”さえ誤らなければ」


 アリアは俺の手の上にそっと手を重ねた。


「レイ……あなたは、自分が思っているよりずっと強い人です。

 だから、このスキルはあなたを選んだのでしょう」


 その言葉は優しかった。

 だが同時に、胸の奥がざわつく。


(アリア……どうしてそんなに確信してるんだ?)


 すると治癒師が口を開いた。


「アリア様。そろそろ“例の件”をお話しするべきかと……」


 アリアの肩がびくりと跳ねた。


「……まだです」


「しかし――」


「まだです」


 治癒師が口を閉ざす。

 アリアは俺から視線をそらした。


(……アリアの秘密。やっぱり何か隠してる)


 問いただしたい気持ちが胸に渦巻く。

 だが、その前に治癒師が告げた。


「検査は終わりました。レイ様、スキル使用による副作用は軽度です。ただし——」


「ただし……?」


「“次の選択”があるとすれば、負荷は一段階増すでしょう」


「あああ……嫌な予告……」


 アリアは複雑そうに唇を噛む。


「レイ。今日のところは休みましょう。体を慣らす時間が必要です」


「ああ……そうだな。正直、疲れたし」


「宿を取ります。その前に——」


 アリアは窓の外を見る。


 街の中心部。

 大きな塔の周囲で、光がわずかに揺らいでいた。


「レイ……見えますか?」


「あれ……光が震えてる?」


「ええ。あれが……綻びの前兆です」


「っ……!」


「そしてその下には、“私の秘密”が眠っています」


 アリアの声は淡い震えを帯びていた。


 街の中心に潜む綻び。

 アリアの隠された正体。

 そして次に訪れる選択。


 俺の胸の奥で、紋章が鈍く脈を打った。


(また……何かが始まる)


 光の街リュミエールは、美しく輝いている。

 なのに、まるで“光が揺らいで崩れ落ちる直前”のような冷たい気配が満ちていた。


「レイ。今夜、必ず話します」


 アリアは静かに宣言した。


「私が……“何者なのか”を」


 その瞳に浮かぶ影は、光の街の輝きとは対照的だった。

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