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裁判

時は進む。


三日。


その間——


ヴォイドは、動いていた。


鍛冶場。


火。


熱。


鉄を打つ音。


メタが炉の前に立つ。


無言。


ヴォイドの注文


「短い剣を」


条件だけが並ぶ。


オーガ鋼と鋼。


芯は軽く。

 

片刃。


刃は薄く。


峰には別の加工。


そして——


「魔属石を入れる」


メタの手が止まる。


「……無理だ」


即答。


「魔属石は熱で死ぬ」


「溶かした時点で、ただの石だ」


常識。ドワーフから教わった。


覆らない前提。


ヴォイドは何も言わない。


ただ——見る。


沈黙。


圧ではない。


だが、逃げ場もない。


メタが息を吐く。


「……分かった」


三日。


打つ。


削る。


削りすぎる。


組み直す。


叩く。


また削る。


寝ない。


試す。


壊す。


やり直す。


そして——


完成。


細身。


短い。


肘から指先ほど。


柄も含めて一体の金属。


無駄がない。


だが——


異質。


峰側だけ、熱の入りが違う。


泥と鉱粉で被覆。


熱を逃がし、局所だけ温度を抑えた構造。


内部。


魔属石は——“燃え尽きていない”。


完全ではない。


だが——死んでもいない。


メタは理解する。


(……これは武器じゃない)


(“仕込むための器”だ)


ヴォイドが受け取る。


何も言わない。


そのまま去る。


夜。


ヴォイドは一人になる。


「近づくな」


それだけ。


誰も寄らない。


中で——


音はしない。


ただ、わずかな光。


そして。


“くぐもる声”


三日目の夜。


すべてが終わる。



指定日当日。


ヴォイドは歩く。


正午前。


盆地。


低地。


囲まれている。


見られている。


準備された“場”。


ヴォイドは歩く。


布の服。


靴。


それだけ。


武装は——ない。


少なくとも、外からは。


中央。


磔台。


低い位置。


鎖。


ノゲシ。


動かない。


だが——


胸が、わずかに上下している。


(生きてる)


足は止まらない。


そのまま進む。


前。


ヴァレリア=オーレナイ。


鎧。


剣。


帯刀。


ヴォイドは止まる。


見る。


違和感。


周囲。


高所。


視線。


複数。


隠していない。


“見せている配置”。


そして——


その下。


“隠している気配”。


地面。


空気の揺れ。


わずかな違和感。


消える呼吸。


(……いるな)


中央。


交渉役——武装。


背後。


人質——過剰拘束。


逃がす気がない配置。


(……交渉じゃない)


結論。


だが——


動かない。


ヴァレリアが前に出る。


紙を開く。


「オーガリーダーよ」


「条件どおり、武器や防具なしでの登場を確認した」


一拍。


「では——抵抗なきよう、両手を上げて聞け」


——ゆっくりと。


ヴォイドは両手を上げる。


迷いはない。


従っているように見える。


周囲。


わずかに緊張が緩む。


“通った”と思う。


ヴァレリアは続ける。


「このオーガは——」


声は強い。


だが——


揺れる。


ノゲシを見る。


痩せている。


水も与えられていない。


鎖。


過剰。


呼吸は浅い。


(……これは)


裁きではない。


見せ物だ。


「幼子の前で、親を——」


読みながら。


視線が止まる。


ノゲシ。


その体。


傷。


拘束。


(……これは)


裁きではない。


見せ物だ。


「ゆえに——」


声が詰まる。


それでも読む。


役目だから。


だが——


内側で、崩れ始める。


顔を上げる。


ヴォイドを見る。


両手を上げたまま。


動かない。


目だけが——静か。


見ている。


“全部”。


「……誠心誠意の謝罪を——」


その瞬間。


ヴォイドの中で。


すべてが繋がる。


地形。


配置。


気配。


言葉。


“タイミング”。


(ここだな)


確信。


次の瞬間——


地面が、跳ね上がる。


爆ぜる。


土が裂ける。


内側から。


人影。


一斉に。


現れる。


十。


二十。


——百。


囲む。


殺意。


気配。


一気に満ちる。


完成した包囲。


ヴァレリアの目が見開かれる。


「……なっ——」


理解が追いつかない。


遅い。


すべてが遅い。


これは——最初から仕組まれていた。


罠。


完全な。


だが。


一つだけ——


想定外がある。


ヴォイド。


両手を上げたまま。


動かない。


ただ。


立っている。


その目だけが。


わずかに細くなる。


恐怖ではない。


焦りでもない。


——確認。


“全員出たな”


その静かな理解が。


この場で最も異質だった。

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