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大爆発

スパイダーウェブ。


研究区画。


爆発音の直後。


廊下には煙が流れていた。


蜘蛛娘達が慌てて駆ける。


「また爆発したぁ!?」


「今度は何!?」


「クリエイの部屋からよ!!」


扉の前。


ヴォイド。


ナイザー。


ディスナイズ。


クライム。


クロル。


そしてクリエイ本人。


全員が無言で立っていた。


部屋の中。


酷かった。


金属机。


焦げ跡。


割れたガラス。


飛び散る水。


白い氷。


そして。


天井まで黄色く舞う粉塵。


部屋中央には。


大型の圧力機器が二台。


どちらも完全に吹き飛んでいた。


沈黙。


ナイザーがぽつり。


「……ちゃんと爆発したな」


クライムが頷く。


「この部屋全部綺麗に」


クロルが床の水をつつく。


「むしろなんで爆発したんだ」


クリエイが叫ぶ。


「途中まで成功しとったんや!!」


「圧力維持があとちょっとで―――」


その時。


コツ。


コツ。


ヒールの音。


全員が振り向く。


マダムだった。


黒いドレス。


長い脚。


首元には蜘蛛の巣の紋章。


そして。


いつもの気怠そうな顔。


部屋を見る。


一秒。


二秒。


ちらりと目元を指で掻いた。


「……すごいわね」


さらに。


研究室全体を見渡す。


爆発。


破損。


煙。


焦げ。


飛び散った器具。


マダムは静かに言った。


「金貨五枚ね」


そして。


そのまま去ろうとする。


クリエイが飛びついた。


「待ってぇや!!」


「今回は意味あったんや!!」


マダムが半目で振り返る。


「毎回そう言うのよあなた」


「いやほんまに!!」


クリエイが慌てて机を漁る。


小瓶を取り出した。


内部。


淡く光る液体。


うっすら冷気。


「これや!!」


「魔力水!!」


蜘蛛娘達が距離を取る。


「また変なの出した……」


「今度は何するの……」


クリエイは興奮していた。


「オーガ草の花粉な!」


「これで消えるんや!!」


マダムが眉を上げる。


「へぇ?」


クリエイが近づく。


小瓶を掲げる。


「試しに目ぇに―――」


その瞬間。


蜘蛛娘の一人が飛び出した。


「待ってください!!」


全員が止まる。


若い蜘蛛娘だった。


少し怯えている。


だが。


前へ出る。


「マダムに何かあったら困ります」


「私が実験台になります」


クリエイが目を丸くする。


「え」


「ええんか?」


蜘蛛娘はごくりと唾を飲む。


それでも頷いた。


「……はい」


マダムは少しだけ目を細めた。


止めなかった。


クリエイが慎重に小瓶を開ける。


冷気。


白い霧。


そして。


蜘蛛娘の腕。


そこに並ぶ小さな目。


黄色い花粉で少し赤くなっていた。


クリエイが一滴垂らす。


ぽたり。


一瞬。


静寂。


次の瞬間。


蜘蛛娘が悶えた。


「ひぁっ!!?」


全員が身構える。


蜘蛛娘は目を押さえた。


「いたっ……!」


「しみるっ……!」


「うわぁぁ……!!」


ナイザーが真顔になる。


「失敗じゃねぇか?」


クリエイが青ざめる。


「いやいやいや待ってぇや!?」


だが。


数秒後。


蜘蛛娘の動きが止まった。


ぱちぱち。


目を開く。


瞬き。


そして。


固まった。


「……あれ?」


周囲が静まる。


蜘蛛娘が腕の目を触る。


何度も。


何度も。


「……痒くない」


さらに。


顔を上げた。


驚いたように。


「こっちの目だけすっきりする……」


沈黙。


クリエイ。


ゆっくり振り向く。


満面の笑み。


「ほらぁぁぁぁ!!!」


叫び。


飛び跳ねる。


「成功やぁぁぁ!!!」


蜘蛛娘達がざわめいた。


「えっ」


「本当に?」


「花粉消えたの?」


ディスナイズが静かに近づく。


蜘蛛娘の目を見る。


赤み。


消失。


花粉反応。


完全消滅。


「……間違いありません」


クライムが息を吐く。


「やばいなこれ」


クロルも頷いた。


「オーガ草対策完成か」


マダムだけが静かだった。


蜘蛛娘の目を見る。


小瓶を見る。


そして。


ゆっくり口角を上げた。


「……面白いじゃない」


クリエイが胸を張る。


「せやろ!」


「天才やからな!!」


ナイザーがぼそり。


「部屋吹き飛ばしてるけどな」


「必要経費や!!」


即答だった。


ヴォイドは。


その様子を静かに見ていた。


そして。


ぽつり。


「……怒ってた理由がわかってきた」


全員がヴォイドを見る。


ヴォイドは机の上。


オーガ草の実を見る。


棘。


花粉。


異臭。


だが。


その奥。


昔は。


人が育てていた。


食べていた。


利用していた。


植物。


「……戻りたかったのかもしれない」


部屋が静かになった。


その時。


マダムがふっと笑う。


「で?」


「金貨五枚は?」


クリエイが固まった。


「……え?」


マダムはにっこり笑った。


「補償費って大事よね?」


研究室に。


クリエイの悲鳴が響いた。


「ぼったくりやぁぁぁぁ!!!」

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