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文明が滅びた近未来で、俺の万能ナノマシンが便利すぎて静かに暮らせない  作者: 月灯り庵


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ほんの少しだけ近い距離

湖畔。


静かな風。


揺れる水面。


……さっきから誰も喋らない。


原因は分かっている。


考えなくても分かる。


「……」


さっきの事故。


転倒。


抱き止め。


距離ゼロ。


思い出すだけで妙に気まずい。


「……」


ちらりと視線を向ける。


リナ。


「……」


妙に静か。


妙に大人しい。


妙に視線を合わせない。


珍しい。


「……大丈夫か?」


何気なく声をかける。


できるだけ自然に。


「……え?」


少し遅れて反応。


「な、なにが?」


「いやさっき」


「問題ないわよ!」


被せ気味即答。


だが顔が赤い。


「……」


説得力がない。


だが。


なぜかそれ以上言葉が続かない。


妙な沈黙。


妙な距離。


妙な空気。


風の音だけがやけに響く。


「……」


少しだけ。


本当に少しだけ。


距離が近い。


偶然か。


立ち位置か。


気のせいか。


「……」


さっきより。


ほんの少しだけ。


「……」


なぜか離れない。


理由不明。


確認不能。


だが悪くない感覚。


「……」


リナが小さく呟いた。


「……ありがと」


「え?」


「……さっきの」


視線は合わせないまま。


「……助かったから」


一瞬。


思考が止まる。


「ああ」


それだけ答える。


それ以上の言葉が出ない。


だが。


「……」


なぜか少しだけ。


空気が柔らかくなる。


湖の光。


静かな風。


穏やかな時間。


終末世界とは思えないほど。


「……」


悪くない。


本当に悪くない。


「……」


ほんのわずか。


本当にわずか。


リナの肩が触れた。


偶然かどうかは


誰も確認しなかった。


遠くで。


「記録しました」


ノアの声が聞こえた。


聞こえないことにした。

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