リナ視点:なんか引っかかるのよね……
……おかしい。
私は静かに違和感を覚えていた。
原因は分かっている。
「……妙ですね……」
あの女である。
エリシア。
いつも通りの無表情。
いつも通りの冷静さ。
いつも通りの理性モード。
……のはずなのに。
「……?」
微妙に違う。
ほんのわずか。
本当にわずか。
視線の動き。
間の取り方。
発言タイミング。
長く一緒にいると分かる。
「……」
なぜか時々、
主人公の方を見ている。
いや、別に不自然ではない。
会話している。
同じ空間にいる。
視界に入る。
それだけ。
それだけのはずなのに。
「……なんなのよ……」
妙に引っかかる。
理由不明。
説明不能。
だが確実に何かある。
「どうかしましたか?」
エリシアが真顔で聞いてくる。
「別に」
反射的に否定。
だが内心は真逆。
「……」
なぜだろう。
妙に落ち着かない。
主人公を見る。
いつも通り。
異常なほど通常運転。
「……」
次にエリシアを見る。
やはり真顔。
やはり冷静。
やはりクール。
……なのに。
「…………」
なぜか少しだけ。
本当に少しだけ。
距離感が近く見える。
「は?」
自分で思って即否定。
意味不明である。
物理距離は変わらない。
立ち位置も同じ。
何も変化していない。
なのに。
「……気のせいよね……」
そう結論付けようとして。
「……妙ですね……」
また言った。
またその台詞。
「なによさっきから妙妙って」
「いえ」
エリシア首を振る。
「問題ありません」
問題あるわよ。
絶対あるわよ。
なぜか確信が強まる。
女の勘。
理屈ではない。
経験則でもない。
ただの直感。
「……」
この違和感。
知っている。
非常によく知っている。
だが認めたくない。
絶対に認めたくない。
「……まさかね……」
私は小さく呟いた。
誰にも聞こえない声で。
最も面倒な可能性を、
全力で思考から排除しながら。




