静かな世界の異変
その異変に最初に気づいたのは、ガルドだった。
「……おい」
珍しく低い声。
いつものツッコミ調ではない。
「どうした」
俺が聞く。
「静かすぎる」
「いつも静かでしょ」
リナが淡々と返す。
だが。
「違う」
ガルドは即座に否定した。
「嫌な静けさだ」
空気が変わる。
わずかな緊張。
この作品では珍しい感覚。
「ノア」
「はい」
「外部スキャン」
「実行します」
珍しくノアも真面目な声。
──《異常反応を検出》
「…………」
「…………」
全員が固まる。
「異常って何だ」
「複数の移動体です」
「生存者?」
「違います」
一拍の間。
「武装集団の可能性が高いです」
空気が一変した。
「……は?」
リナの声が小さくなる。
モニター投影。
拠点へ接近する影。
人数多数。
明らかに装備持ち。
「……冗談でしょ」
「冗談ではありません」
ノアの即答。
笑顔なし。
完全シリアスモード。
「略奪者か……」
ガルドの声が低い。
今までで一番真面目だった。
「この世界じゃ珍しくない」
「……本当に来るの?」
「来ます」
緊張が走る。
拠点内に静寂。
さっきまでの騒がしさが嘘のようだった。
「防衛機構は?」
「使用可能です」
「……勝てるの?」
「問題ありません」
この言葉が、
初めて頼もしく聞こえた。
──ゴゴゴゴゴ……
拠点が変形を始める。
装甲展開。
防衛モード。
今度はギャグではない。
本物の要塞化。
「……なによこれ……」
リナが呆然と呟く。
「これが本来の使い方か……」
ガルドが静かに言う。
ノアの瞳が淡く光る。
だが今までと違う。
どこか冷たい光。
「マスター」
「ん?」
「少しだけ危険ですので」
一拍。
「下がっていてください」
完全に別人だった。
いつものポンコツAIではない。
戦術AIの顔。
外部。
接近する武装集団。
そして。
──ドンッ!!
次の瞬間。
衝撃。
轟音。
砂煙。
「……え?」
モニター映像。
武装集団、全員転倒。
壊滅。
一瞬。
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
「……え?」
リナが呟く。
「……今、何が起きた?」
ノアがいつもの笑顔に戻る。
「威嚇射撃です!」
「威嚇の規模じゃないでしょ!!」
温度差崩壊。
リナのツッコミ復活。
「大丈夫ですよ!」
「大丈夫なのは分かったけど!!」
「やりすぎよ!!」
ガルドが呆然と呟く。
「……あれで威嚇……?」
拠点は今日も平和だった。
基準だけが完全に狂っていた。




