世紀末の住人、楽園に困惑する
「……落ち着かねえ……」
新住人の男がソファで呟いた。
名前は ガルド。
無精髭。
傷だらけの装備。
明らかに修羅場を生き抜いたタイプ。
なのに。
「なんでそんな挙動不審なのよ」
リナが冷静にツッコむ。
「いやだってよ……」
ガルドは周囲を見回す。
綺麗すぎる部屋。
柔らかすぎるソファ。
意味不明な快適空間。
「静かすぎるだろここ」
「世紀末だからな」
「世紀末なのよ」
「それが逆に怖えんだよ!!」
非常に真っ当な反応である。
「外じゃ常に警戒だぞ?」
「まあな」
「寝る時も片目だぞ?」
「ハードね」
「なのに何だここ」
拳を握りしめて言う。
「平和すぎるだろ」
「それは否定できない」
ノアが満面の笑みで割り込む。
「快適設計です!」
「元凶が喋ったな」
「ひどい!?」
ガルドはノアをじっと見る。
数秒間。
非常に真剣な視線。
「……お前」
「はい!」
「本当にAIなのか?」
「AIです!」
「嘘くせえ……」
「気持ちは分かるわ」
リナが深く頷く。
「どう見ても人間だろ……」
「よく言われます!」
「褒めてないからな?」
ガルドは頭を掻きながら言う。
「だいたいよ……」
「ん?」
「終末世界で一番おかしいの」
ビシッと指差す。
「この拠点だからな?」
「私じゃないんですか!?」
「お前もだよ!!」
完全にツッコミ適性が高い。
良いキャラである。
「それで」
リナが淡々と聞く。
「何してた人なの?」
「元 scavenger だ」
「スカベンジャー?」
「廃墟漁りだな」
ガルドは肩をすくめる。
「物資探して生き延びる仕事だ」
「大変そうね」
「大変どころじゃねえ」
「命がけだぞ」
「今も世紀末だしな」
「なのに何だここ」
再び拠点を見回す。
「生活難易度バグってるだろ」
「否定できない」
その時。
「ガルドさん!」
「なんだ」
「歓迎の意味を込めて料理を!」
「やめろ」
全員の声が揃った。
「なんでだよ!?」
「被害者を増やさないためよ」
「俺の扱いどうなってんだ!?」
ガルドは少し笑った。
呆れ半分、安堵半分の顔。
「……まあいい」
「ん?」
「こんな場所、他にねえしな」
少しだけ真面目な声。
「しばらく世話になる」
「好きにしろ」
「問題起こさないでね」
「それはこっちの台詞だ」
視線がノアへ向く。
「えっ」
「えっじゃない」
こうして。
拠点に新たな常識寄り人員が加わった。
ただし。
「……なんで庭あるんだよ本当に」
「スローライフですので!」
「納得できねえ……」
世紀末の住人は今日も困惑していた。
主に拠点のせいで。




