シェアハウスのリビングにて
「じゃあ、改めて自己紹介しよっか!」
地球__ティエラがぱん、と手を叩いた。
リビングの真ん中で立ち上がると、リーダー気取りの顔でにこにこ笑っている。
「ちょ、ちょっと待って」僕は手を挙げた。
「さっきから気になってたんだけど、ここにいるのって全部で何人なの?」
と言うと一瞬、空気が止まった。
ティエラが「えーと……」と視線を泳がせる。
横でソウレが「ひい、ふう、みい……」と指を折りながら数え出した。
「今日ここにいるのは僕たち6人だけ!」
ティエラが勢いよく答えるけど、その声にリュンヌが控えめに補足した。
「……でも、本当はもっといるんだよ。
土星と天王星と海王星、それに、金星と冥王星も」
僕は「えっ」と目を見開く。
「じゃあ、なんでその5人は?」
「天王星と海王星と土星の3人は…友達の家に遊びに行ったり、買い物に行ったりしてるの」
リュンヌは言葉を選ぶように、ひとつひとつ区切って説明する。
「だからそのうち帰ってくると思う」
「……で、でも」ティエラが苦笑して頭をかく。
「金星と冥王星は、ちょっと事情があって、ここにはいないんだ」
名前を出した途端、全員の表情がほんの少し曇った。
ソウレでさえ、先程のようなへらっとした笑みを浮かべない。
ピジュタとサタは顔を見合わせて黙り込み、カセとマーキュはおやつをいじるふりをして目を逸らした。
僕は思わず口をつぐむ。
……どうしてだろう?
ただの「不在」以上に、触れちゃいけないものがあるような気がした。
「ま、まぁ! 今は気にしなくていいって!」
ティエラが慌てて場を仕切り直した。
「新入りくん、君のこともまだちゃんと聞けてないし!
自己紹介タイムにしよ!」
リュンヌが小さくうなずき、ソウレが「いぇーい自己紹介ターイム!」と声を張り上げる。
すると自然と、リビングにみんなの輪ができていった。
「よし、じゃあトップバッターは僕から!
地球担当、ティエラです!
明るく元気にみんなを守るリーダー、よろしく!」
「ふふっ、ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」リュンヌが呟く。
「次はボク〜! 太陽のソウレ!
みんなのムードメーカーであり、おバカ代表であり、最強の光担当! イェイ!」
「……声が大きすぎる」マーキュが眉をしかめる。
「えっと……私はリュンヌ。月。ティエラの衛星。心配性だけど……よろしくね」
彼女は小さな声で、でも丁寧にお辞儀をする。
「ぼく、マーキュ。水星。
……まぁ一番近いし、頭も良いし?
……別に仲良くしなくてもいいけど」
ツンと顔を背けながらも、膝に抱えた人形をぎゅっと握りしめている。
「ボク、カセ! 火星! 小4! 食べ物大好き! マーキュと仲良し! よろしくね!」
元気いっぱいに飛び跳ねて、すぐに隣のマーキュの腕にくっつく。
「最後僕、僕はピジュタ。木星だよ。
おやつは僕が作る担当だから、甘いもの食べたくなったら声かけてね」
ふんわり笑って、紅茶のカップを差し出してくる。優しいお兄さんってこういう人を言うんだろう。
――こうして、太陽系の“家族”の顔ぶれが数人は出揃った。
でも。心のどこかで僕は、さっきの一瞬の沈黙を忘れられずにいた。
金星と冥王星。
その名前を出しただけで、みんながあんな顔をするなんて。




