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No.12 ユニークスキル





「「勝ったぞー!!!!」」


 結界内でドサッと倒れ込み勝鬨の声をあげるノートとユリン。

 今回の一戦は最後だけあって、わざわざ課金ポイントを使って使い切りの強力なバフアイテムを使用する念の入れようで、絶対に負けられないし負けるはずがないという気持ちはあったが、やはり勝利は嬉しい。

 ムキになって現段階で課金ポイントを使うのは失策には違いない。だがゲームを楽しむという意味では、初めて苦戦を乗り越えた充実感と歓喜で相殺できておりそれだけの価値はあったとノートは納得していた。

 


 その代償はもちろんそれだけにとどまらない。装備品も耐久限界でHPMPもすっからかん。辛勝というのも怪しい所。だが勝利は勝利だった。普通のRPGのLv10アップ相当がALLFOのランク1アップだと考えると、たった三体の討伐でランクが2もアップしたノートとユリンがどれほどの激闘を制したのか御理解いただけるだろう。


「でもさ…………あの三体、森の中では弱いよねぇ」


「ああ、あの般若面蟷螂はほんっとに強かった」


まるで仮面ライダーの敵役のような、昆虫を人型にしたような造形。黒光りするキチン質の外殻に覆われたボディで腕には非常に鋭利な鎌が付いており、背中の羽根は見せかけではなくユリンのように低空ながらも高速で飛び回る。頭部が黒い般若のお面の様なのもその不気味さを大きく煽っている。


 パワーとスピードが桁外れに高く、セルフでバフデバフまで使い、魔法抵抗力も桁外れ。遭遇すると次の瞬間目の前にその般若面がどアップでせまり、何がなんだかわからないうちに瞬殺されるのだ。何より恐ろしいのは、それがエリアボスとかでもなんでもなく、腐沈森の中の敵性MOBの一つに過ぎないということだろう。

 そして初戦で遭遇した鮟鱇も厄介さではどっこいどっこい。地面を泥化させて泳ぎ回るので、潜られている間は手出し出来ない。加えて逃げ足も速い。


 ノートとユリンも流石に実力差がありすぎるので南側にはしばらくは出入りしないと決めて、今回の成果を確認することにした。


「まずは採取した物だと……」



———————————————————————————————————

・穢れた枯れ草(用途不明。とりあえず採ってきた)

・狂痺蕈(触れるだけで麻痺。見た目は普通の松茸に見えるところがヤバイ。炙って食べよう物なら炙った時点で飛ぶ菌で麻痺を引き起こすほどヤバい)

・赤蠱茸(食べなくても食べたらヤバいとわかる何かを生み付けられたようにでこぼこした赤いキノコ)

・邪囚石(手に持ってるだけで呪いにかかる)

・呪生の林檎(しおしおの黒いリンゴ)

・緑泥草 (鮟鱇のいたあたりから採取。ヌルヌルしてる)

・哀藍薔薇(棘がやたらデカい黒い茎の青薔薇)

・向滅葵(日の光と逆方向をむく白と灰色の向日葵)

・濁血石(どす黒い血のような石。手にもってるだけで呪われる)

・白蝕菌糸(見た目ただのカビ)

・渇命草 (HPドレインしてくるヤバい花。見た目が普通のピンクのチューリップぽいのがシュール)

・幻豊胡瓜(食べると二度と覚めない夢を見せてくれる。気付いたらリスポンしてる)

・痺縛ゼンマイ(触れるだけで麻痺)

・腐栄白苔(魔物の死体オブジェクトの様な物に繁殖していた苔)

・不浄水(名前の割にとても綺麗なところが逆に不気味)

・壊れた絡繰時計(崩壊した集落の残骸の様な場所で取得)

・腐壊した人形(同上。モデルを意識した造形のアイテム。慎重に扱わないとあっさり砕けてしまう)


———————————————————————————————————


「どれもデバフ系の毒物ばっかだねぇ。多分同じエリアで育てる他の作物も全滅すると思う」


「同感だな」


 次にステータスを確認。



———————————————————————————————————

名前:ノート

種族:秘忌人(固定)

ランク:7

性質:極悪(固定)

 

正職業

❶死霊術師・特:D

❷魔法使い:B

副職業

❶鑑定士:F

 

HP:17/47

MP:15/803

筋力:Ⅰ

体力:Ⅰ

敏捷:Ⅰ

器用:Ⅰ

物耐:Ⅰ

魔耐:H

精神:C

 

称号(新たに取得した物のみ表示)


限界突破【死霊】・原初(使役する死霊のいずれかを進化させた者の称号:使役死霊成長率微上昇)

友愛贈呈【死霊】・原初:(ギフトを取得した者の称号:使役死霊の好感度上昇率微上昇)

蛮勇・原初(ランク差の大きい敵を討伐した者の称号:敵性MOBと対比して一定以上能力値が下回る場合全ステータス強化)


———————————————————————————————————



———————————————————————————————————

名前:ユリン

種族:堕天使

ランク:7

性質:極悪

 

正職業

❶堕天法双剣士・特:D

❷殺戮兇手:H

副職業

 

HP:34/159

MP:2/81

筋力:F

体力:G

敏捷:C

器用:B

物耐:F

魔耐:Ⅰ

精神:Ⅰ

 

称号(新たに取得した物のみ表示)

蛮勇・原初

兇手・原初(職業・兇手にて死角より格上を討伐:死角攻撃時の攻撃力微上昇)

———————————————————————————————————



 ステータスとしては大きな変化は見られないが、新たに会得したスキルや魔法類は強力であり、其方もノートとユリンで勝利後の嬉しさを噛み締めながら穏やかに情報共有しておく。


「あ、そうだ。ユニークスキルまたゲットしたよ」


「はぁ!?」


 その穏やかな空気もユリンの爆弾発言で掻き消されるのだが。


「ユニークスキル〔フリューゲルマーダー〕。飛翔時間延長で、滑空からの急襲時に全ステータス強化・攻撃力倍加・critical確定だって。クールタイムは10分、消費MP25だからまあまあかな?」


「いやいやいや、なんでポンポンそんなにユニークスキルをゲットしてるの?可笑しいってばよ!」



 口調こそ荒いが責めるわけではなく、ただただ困惑が隠せないノート。しかし張本人たるユリンが思案顔なのに気づき目配せしてみる。ユリンはうーん、と暫く唸ったのち、ゆっくりと口を開いた。


「それがねぇ、ボクの中でちょっとした仮説があるんだよ。ユニークスキルだけじゃなく、初期限定特典全体に通じる仮説かな?」


「と言うと?」


「うん、ちょっと話がズレるけど、ノート兄もこの初期限定特典に関してかなり変だと思ってることあるでしょ?」


 ノートはユリンの問いかけに対しコクリと頷く。


「そうだな、明らかにただのラッキーなスタートパックにしては性能が凄まじい。反面、デメリットがゲーム進行困難なレベルでキツい設定になってる」


「そう、そこなんだよねぇ。『街に出入りできない』ってそれだけでもかなり致命的だよ。僕たちは幸運にもバルちゃんが封印されてたあの場所をセーフティーゾーンにできたから気軽にログアウトできたけどさ、普通だとやむなくフィールドでログアウトするじゃん?その場合ってアバターは残るから魔物辺りに無防備なまま殺されて装備の耐久値削れるしデスペナ喰らうし散々でしょ?

 正直、ゲームさせる気あんの?て言いたいペナルティだよね。で、あのおっさんも言ってたけどリタイア勢が現にいるし、残りも一万人の内で数百人しかいない。だけど説明してる時は困った風でもなく淡々と説明してた。つまりは……社員でもこれは可笑しいって思ってるし、予定調和なのかも。加えて初期特典の追加もゲームの宣伝自体は発売の1年も前からしてたのに、発売まで残り1ヶ月ってギリギリでいきなり公表された要素じゃん?」


「ふむ、それで?」


 ノートもだんだんとユリンの言わんとする事を理解し始めたが、弟分がここまで話し続けることも珍しく、ノートは楽しげにユリンの説明を聞いていた。


「それらを考えると、この初期特典ってそもそも最初の企画段階にはなくて強引に捻じ込まれた要素なんだと思うよ、誰が発起人かは知らないけどさ。ゲームバランスの完全調整を喧伝するALLFOには不自然なまでのバランス崩壊要素…………完全にやっつけ仕事だよね。だからこれは、仕返しなんじゃない?無茶なことを急に提案したお馬鹿への反撃の為に、ポーズだけはするけどよほど酔狂じゃなきゃ取らないようにデメリットを極端にした…………うーん、反撃っていうと違うか。方針の違いによるささやかな抵抗だったんだと思う」


「成る程、それならこのぶっ壊れ性能も納得だ。でもまだ続きがありそうな顔だな」


「うん、今のを踏まえて考えて欲しいんだけど、やっつけ仕事だとしても初期特典にはなんらかのコンセプトがあるんだと思う。で、そのコンセプトが“ソロプレイ”なんだと思う」


 ユリンの説明を聞くと、ノートはなるほどね、と頷いて続きを促す。


「初期特典持ちは、ペナルティが多過ぎて普通のプレイヤーならパーティーも組んでくれないしNPCも敵対的だから孤立はほぼ確定。だけど全くゲームがプレイできない要素を作ってしまえば責任問題になっちゃう。だからこそソロでも超頑張ればプレイできるギリギリの性能を与えてある。例えば、ノート兄は本人のデバフが優秀で、トドメはネクロノミコンで本来より強化された死霊に任せられる。あと結構死霊のバリエーションが多いよね。ソロのデメリットを召喚した死霊で補う。それがネクロノミコンの真髄だと思う。

 対してボクは、自分で言うのも何だけど“最強の個”がその真髄だと思う。一緒にプレイしてて思ったけど、やっぱり同じランクでも基本スペックが堕天使は優れ過ぎてる。集を捨て個を追求した結果がボク。効率の良いスキルの習得などの原因はそこにあるんだと思う。目に見えてない要素に大きなメリットがガン積みされてるんじゃないかな?」


ユリンの言葉に大きな矛盾点は見つけられず、ノートは頷いて同意する。


「ユニークスキルの習得の原因はそれだと思うんだよ。あと習得方法も何となくわかった。要するに、ゲームのシステムを応用したトリッキーな動きがトリガーになってると思う。例えば1つ目のスキルを習得する前、ボクはスキル発動中にセルフで回転すると範囲攻撃と変わりない効果が得られることに気づいた。だからPKの時はMP消費を減らす為にもこの自己流の技を多用した。2つ目のユニークの時は、飛行からの兇手系のスキルを使いながらの急襲。これも自己流で組み合わせたコンボ技。それがユニークスキル化した。

 ボクから言わせてもらえば、ノート兄だってバルバリッチャとかユニークのタナトスを引き当ててるし十分可笑しいからね!それもボクよりはるかに!」



 そう叫んでグイッと詰め寄るユリン。

 最初と真反対の図に、ノートは苦笑し肩をすくめるのだった。






おまいう


※質問が相次いだのでランク制に関しての補足


ランク制なんですけど、ランクが更新される毎に実は全パラメータはIで再スタートします。

つまりI〜Sってのは数値っていうより、ランク◯に於ける成長率と考えてください。


例えばの話、ランク1での筋力の成長率が90%オーバーでSランク評価がついても、ランク2になればまた成長率はリセットされてランク2に於ける成長率という形で新しくパラメータが表示されます。


つまり、ランクを上げる前のパラメータってランクアップ以降は見えない形で引き継がれていく恐ろしい数値なので、ランクを上げる前には出来るだけ全体的なパラメータを上げておいた方が後々楽になります。要するに急足でランクを上げると後々響いてくるという事です。



もう少し具体的に説明すると

例えばランク1の時、筋力の成長率評価が『S』だったとして、数値化すると90だったとします。

しかしランク2にアップするとステータス上では『I』で表示されます。

同様に、ランク1の時、ランクアップ前の筋力成長率評価が『E』だったとして、数値化すると30だったとします。これもまたランクアップすればステータス状の表記は同じく『I』です。

しかし同じ『I』でも潜在的には60もの数値の差がある訳ですね。これが毎回のランクアップで発生し積み重なると最終的にどうなるか、考えるまでもありませんね

また、その積み立てが多いほど、ランクアップ時には成長率補正がかかるのでより大きく成長しやすくなるので放置するとステータスは偏り気味になります。ノートがいい例ですね。


因みに隠しパラメータは基本リセットされません。隠しパラメータ時累積計算です。何故ならダウンする事もあるからです

あと職業もランクアップによって成長性はリセットされません。リセットされるのは転職した時のみです。ただし、下位職から上位職への派生の場合、パラメータ同様に成長補正があります。

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― 新着の感想 ―
>>名前:ノート おそらく表記ゆれだと思うのですが、6話では“NOTO”となっています。どちらが正しいのでしょうか?
[気になる点] 兇手・原初(職業・兇手にて死角より格上を討伐:死角攻撃時の攻撃力微上昇) 職業の名前の称号は珍しいんでしたっけ? やっぱり同じランクでも基本スペックが堕天使は優れ過ぎてる。集を捨て…
[気になる点] ノートとユーリの称号で蛮勇っていうのがあるんですけど、どちらも原初が付いてるのはなぜですかね?
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