閑話休題 爆運の男
※このお話は本編とは直接関係のない、解呪師チームのとある日常です。
ある日の昼下がり、解呪師の詰め所。
ジャンとマルコが部屋で書類を書いていた。
そこに、困惑した顔のダミアンが現れる。
彼は、両手いっぱいに缶の飲み物を持っていた。
ダミアン「おい。すぐそこの自販機こわれてるぞ」
マルコ「あれ? 俺がさっき買った時は普通でしたけど?」
ダミアン「連続で10回、当たりが出続けた」
ジャン「それは壊れてるかもしれねぇなぁ。修理の人に連絡しておくか」
ダミアン「そうしてくれ、これで3回目だ」
マルコ「3回目!?」
ダミアン「ああ、先月もそうだった」
ジャン「……それって──」
マルコ「……俺、ちょっと自販機で飲み物買ってみます」
そういって、マルコが出ていく。
数分後、マルコは沈黙のまま戻ってきた。
手には一本だけジュースを持っている。
その顔には「なんで当たらないんだ……」と困惑が滲んでいた。
マルコ「……普通に買えましたけど……」
ダミアン「……」
マルコ「主任、確認なんですけど……最近、呪詛攻撃を受けてる心当たりってあります?」
ダミアン「ない」
マルコ「最近の主任、お店のくじ運、飲み物、抽選、全部一発です。むしろ怖いです。たとえば、他者の犠牲が必要なタイプの呪いとか──」
ジャン「……それ、呪いって言わないんじゃないか?」
マルコ「ジャンさん、過剰な幸運は絶対やばいですって。世界の均衡が崩れますよ」
ジャン「そうかぁ?」
マルコ「周りは誰も被害をうけてないんですね?」
ダミアン「それはない」
ジャン(あれ多分、精霊からの加護だよなぁ……)
その数日後、ダミアンは別な自販機でまた当たりを出し、ジュースを8個ほど手に持っていた。
マルコも流石にこれは呪いではないということに気づき、衝撃をうけていた。
マルコ「ジャンさん、加護ってあんなに強くなるんですか……!?」
ジャン「……まあな。個人差はあるが、あれぐらいの”祝福”を受ける奴はたまにいる」
マルコ「祝福?加護じゃなくてですか?」
ジャン「あれくらいになると、“加護”って呼び方じゃ足りねぇ。特に精霊に愛されてるって意味で、“祝福”って言うんだよ」
マルコ「そういえば、俺、主任の後ろに立ってるときだけ、魔法攻撃の被弾がほとんど無いかも……」
ジャン「……一応言っておくが、それお前の実力じゃねえからな?絶対無茶すんなよ?」
マルコ「でも、主任って自分が豪運なことに気づいてないですよね?」
ジャン「気づいてない。または、興味がない。だな、あれは」
マルコ「えー! もったいなくないですか!? もっと使えばいいのに!」
ジャン「……精霊は、豪運にあぐらをかいて悪用する奴には”祝福”を与えない。俺たちみたいなのとかな」
マルコ「俺、一生あのレベルになれないってこと!?」
ジャン「そ。まあ、観念して地道に努力しろってことだ」
* * *
マルコ「主任はもう、当たりつきの自販機は禁止で。幸運は現場で使ってください……ある日突然無くなったら怖いです」
そうマルコに言われ、ダミアンは数週間、『当たりつき』の自販機を避けて暮らすことになった。
彼の爆運が、次にどこで発動するか――チームの誰もまだわからない。
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因みに、本人はあまり気づいてないですが、ジャンも現場では強力な加護が発動してます(ダミアンや他の人だけ気づいている)




