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「塗り壁」  作者: first
7/7

ヌリカベ―後編―④

    

  

               ○    



     この姉の懺悔のような悪夢の様な独り言は続く


       

  「だけど、私はその時殺されなかった・・・・・たぶん私は祐君にとってまだ使える道具のように思えたのね」

  


  井上宮は俺の傷口に包帯を巻きながら

  誰に言うわけでもなくボツボツとつぶやいている。

 

  俺は気を失ったふりをして、初めから今の今まで話を聴いていた。


 


  「私はその後、二度と祐君の邪魔をする事の無いように、気絶している少女を「あの部屋」にかたずけた」





   あの部屋・・・・・・・すなわち先程の話であった「死体置き場」そこにかたずけたと言う事は


   すなわち・・・・・・・・・・・・・・・・・もう既に・・・    

  

 



    


  

   「私はもうどうにもならない祐君の、祐君と祐君を肯定する「何か」だけが存在する壁に囲まれた世界の

    壁を壊せないのなら、せめて少しの間だけでも長く存在させ、幸せな時間を保たせようと思った。」

   

   


  そして、俺がこの家に訪れた・・・・祐人や・・・皆、陽子を救いに「井上宮が全ての歪みの元凶」だと信じて、

  ・・・・・・・・だが、実際は違った、井上宮は祐人の偽りの幸せな世界を守ろうとしていただけだった。

  


  すなわち、井上宮は祐人の世界を守るいくつもの壁の一つに過ぎないというわけだ。


  

  だから・・・・・・・・・・・・・さっきの話、俺が知りえる事の出来なかった「空白」を得る事が出来き

  俺はこの事件・・・いや、この物語の本当の歪みを知った。

    

  

  この物語を終わらすには、この「歪みとなった友人」をあちら側からもとの現実に引き戻さなければならない、


  祐人を、祐人を取り巻く多くの世界を拒絶する塗り壁を壊して、現実へと引き戻さなければならない。


  

  そして、今それが出来るのは俺だけだ


  全ての空白を埋め、彼についた誤解と虚偽、彼自身と彼の周り人々の思いを知る事の出来た俺だけ




  

 「この子が来て、何度も訪れて・・・・私は少しでも祐君の世界を守る事が幸せだと思って・・・

  もうこれ以上祐君に罪を重ねて欲しくなくて、誰も死んで欲しくなくて・・・」


 「さされた俺をこうやって看病している・・・・・・・・・・・・・・」



  井上宮は俺が起きて聞いているとはまったく思っていなかったようだ、文字どうり目が点になって驚いている。



 「・・・・・・・・・・・・いつから、いつからきいていたの?」



 「初めから・・・・・・・・」



 「そう・・・・・・聴かれちゃったのね・・・全て・・・・じゃあ・・・・」


 

 そう言うと俺の首元に井上宮の指が伸びる、その腕はプルプルと小刻みに震えている、まるで、それが始めての・・・・



 「私が・・・・私がアナタを殺せば・・・・もう罪は祐君には行かない、私の責任になる・・・・だから・・・」


 首元にまで行き、ゆっくりと力がはいる・・・・・・・・・・・・だが、こんな力では人はおろか虫一匹殺せない

 


 「いつまでその偽りの罪と責任を背負うつもりだ」


 「違う・・偽りなんかじゃない、私は父を母を彼女を・・・・・・・・・・」


 「殺してなんかいない」


 「違う」


 「違わない」


  そう、先ほどの懺悔を聞いた今、井上宮が言う自らが犯人と言う嘘は俺には意味を成さない

  祐人が誰も殺しておらず、全ては私の責任であり全ての罪は私にあるなんていう嘘の事実は俺には通じない



  その嘘を述べる顔は心底つらそうで・・・・今にもその偽りの責任に押しつぶされえしまいそうに見える


  だから、俺は・・・・・井上宮の偽りの責任を取り除き、祐人の真実をひたすら隠してきた井上宮と言う最外の塗り壁を

  今ここで壊す。



  「全ては私の責任、和君の事も、父や母の事も、彼女の事も、祐君の事も、あの偶然も・・・・・・」



  

  「全ては・・・・・・・・・あんたの責任だと?・・・・・・・・・・・傲慢だな」



   傲慢・・・・そう言われて、井上宮の表情がなぜ?と言う様に曇る


   

  「傲慢?どういう事?」


  「責任なんて者はその行動を行った者が負うもので、それ以外の他の人や偶然起こった事にまで責任は負えない

   そして、あんたは自分以外の全ての起こった事にまで責任は自分にあると思っている」

 


   何も言わず井上宮は俺の話を聞いている


  「確かに、そのきっかけはあの雨の日の偶然なすれ違いだ、だが、それは偶然が生み出した者でそれに責任を負う事は

   誰にも出来ない、それどころか、偶然や確立、自分が行っていない事まで責任を負おうなんて考えてるならそいつは

   ただの傲慢さ」


  あの日、彼の、彼女の母親がいった言葉を俺の言葉で井上宮に伝える。

  

  だから、あの日のきっかけは偶然であり、あんたが負うべき責任では無いと言う事を・・・


 

  「でも、例えあの日のきっかけが偶然で誰にも責任がなかったとしても・・・和君の時は私の責任、

   祐君の事ばかり考えて私がもっと和君の事にも気を配っていれば、あんな事にはならなかった

   あの時は私の行動、だから私の責任、それにあのカウンセラーも言っていた私に責任がある、

   これからは、全て責任があると思って行動しろと、そうすればミスはなくなると・・・・」






  「何度も言うようだが・・・・・・・・・それが傲慢なんだよ、そのカウンセラーが言う事が正しければ、自分が 

   責任を負って、自分ひとりがどうにかすれば、世界は変わる、と言いたいようだが、所詮人一人の力ではどうにもならない

   事だってある、特に偶然や他人の行動なんて物はね・・・・だから、その行動や偶然まで自分が責任を負って支配しような考え

   が傲慢なんだと言っているだ!!」


  もう既に井上宮の指は俺の首にかかっていなかった。

  その腕と指は俺の両肩の上につき、自らの今までの行動を振り返っている

 


  「例え、どんなに責任を負っていても、あの時どんなに注意していても、和君は救えなかったと言う事?

   でも、それでも私は、あの時どんな些細な事でもいいから自分が悪いと思いたかった、責任を負いたかった・・・」



  悲痛な叫び、何が何でも自分の責任にしたいと思い込む、悲しい言葉・・・だがこの女性はその本当に意味する所

  を知らない、なぜ井上和也を失った時、自分に責任があると思い込みたかったのか・・・



  「なぜそう思いたかったか分かるか?」


  「救えなかったから・・・私がどうにかすれば救えたかもしれないのに救えなかったから」


  「違う・・それは後付けに過ぎない、和也さんを失った後に作り出した偽りの責任、あんたの性格ならいつだって

   祐人や和也さんの事を考えていたはずだ、だからどちらか片方しか思っていなかったから救えなかったなんて

   のは偽りの記憶・・・・・・・そう、あんたがなぜ責任を負いたかったのかの本当の理由、それは・・・・」


   それは二つある

  

   この女性の中にある全ての責任を自分の物だと思い込んでしまうきっかけを作った本当の理由


   

   

  「一つは宮さんあなた自身が「責任が無い」と言われ、自分と関係の無い所で大切な弟が消えて行き、関係が薄れて行く

   事が怖かったんだ、だからなんでも自分の責任と言い、自らと兄弟の関係を深めようとした

   そして、二つ目は自らの責任と思い込む事で、どうしようもないやり場の無い怒りと悲しみ、自らの罪を

   すべて自分に押し込める事によって心の安定を保とうとした。

   自らをギセイにすることによって、煮え切らない心の矛盾とつじつまを自分の責任と言い合わせたんだ」   

  

  

   壊れる


   井上宮の中にあった偽り責任の理由


   ただ、自分のやりきれなさと、失った者の悲しみの行き場を自分自身に持って行きたかっただけだったと言う事を




  「そっか・・・・そうだったんだ、気づかなかった・・・・」


   


  「始めは・・・だだのつじつまあわせ、心の行き場の為に責任をかぶった・・・・・だけど、それは時間と共に

   負う責任の数と共に・・・いや、あのカウンセラーの言葉でその責任を負う意味を変えられてしまった」


 


   ―― 祐人の罪と責任を隠すだけのただの「塗り壁」に ――



   


  「自分の責任だ、祐人が行った事も自分の責任だと思い込む傲慢によってあんたは祐人が救えると思うようになった

   罪をかぶる事によって、祐人は罪を負わなくていいと思い込んだ、だが、本当にそれで祐人は救えたか?

   本当に祐人に罪が無いよう見えたか?あんたが見た壊れた祐人は幸せに見えたか?」



  「・・・・・・・・・・・・・・・でも、私が見えなくても、祐君がそう思うなら」




 「祐人は関係ない、今はあなたがどう思っているかを聴いているんだ・・・・・あなたはどう思った?」

 


  井上宮が最後に感じ見た祐人の姿は、我々には見る事も聴く事も叶わない狂気の世界へと足を踏み入れてしまった

  壊れた姿・・・・・・・・そう彼女自身の言葉から発していた。

 

  そう感じた祐途の姿が・・・・幸せに見えるはずなんて無い




  井上宮はもうなにもいわず、首を横に振った。


  「それに・・・・・・・・・あなたはさっき自分で言っていたじゃないか、たとえ私が全ての罪をかぶったとしても

   祐人が犯人だとわかるのは時間の問題だ・・・と、だからどんだけ、証拠をカモフラージュして分からないようにしても

   厳密な捜査、物証、事実が変わらず犯人を祐人と特定するように、どんだけあなたが心の中で祐人の罪や責任をかぶったところで、

   祐人自身に罪があり責任がある事はかわらないんだ」   

   

   そう、どんだけあなたが祐人の罪をかぶったところで、彼自身が起こした責任や罪は消える事が無いのだ。








   だから・・・・この井上宮という女性が行っていた事は祐人を救い幸せにしていたのではなく

          祐人が背負うべき責任を彼女自身が肩代わりし、世間や祐人自身から隠す事によって

          彼自身を孤立させ、責任を負わない自分自身の都合の良い事だけを肯定する壁で塗り固められた

          世界を構築させ壊れさせてしまったのだ。






   「私は・・・祐君の為と思ってやってきた・・・・・だけど・・・・それが本当は間違いだったのね

    全ては私の責任、私がどうにかすれば救えた・・・その傲慢が、祐君を壊し・・・・今の状況を作り上げた・・・」



   この女性はやっと気づいた、本当の自らが負わなければいけない責任に・・・・・

   多くの偽りの責任の中、本来あるべき責任に行き着いた。


   祐人自身が行った責任を彼に負わせず、隠してしまった事・・・・・・それがこの女性の責任

   井上宮が行った本当の・・・・罪



   今までの行動に後悔し、戻らない原状、修正出来ないこの世界に後悔し涙する。

   俺の顔の上で長い髪を頬に揺らしながら、しょっぱい水滴をぼろぼろと落とす。



   「もう懺悔はいいのかい?」


   「・・・・・・・・?」


   「俺を看病していた時あんたは今までに起こった全ての事を話していた、そしてその後はこの現状を

    じゃあ、その後の話はいいのかい?無いんなら俺が話す」



   「何を・・・・言って」



   「俺は・・・・・・これから、祐人の閉ざされた壁を壊す」



   「えっ?・・・・・・・・・・・・でも、あなた・・順君、その怪我、それに今回の事はあなたには関係無い・・・

    あなたじゃ祐君の世界を作る壁は・・・・壊せない」


  

   「関係が無い・・・そんな事は無い、俺はあの雨の日、祐人とあんたがすれ違うきっかけを作ってしまった・・・

    だけど、俺はあんたみたいにその偶然を俺の責任だなんて思わなかった・・・・なぜなら、宮さん、あなたの母親

    が俺に言ってくれたからだ「それはただの偶然、誰にも責任が無い」と」



   もしも・・・もしもその言葉があの時、俺にかけられなければ・・もしかしたら、俺も井上宮の様になっていたかもしれない


   

  

   「だが、偶然にしろなんにしろ祐人が今のあちら側に向かうきっかけを作ってしまったのは事実、

    ならば今度は俺が、祐人が彼自身が作り出す世界から現実のこの世界に戻ってくる為のきっかけを作らなきゃならない

    これは、責任を感じてなんかじゃない・・・・・・俺が祐人を救いたいから、やるんだ・・・・・・・・

    それに・・・・・あなたの母親に、祐人の事をよろしくって言われたしな」





    俺はゆっくりと立ち上がる、この物語を終わらせる為に

    祐人が作り出したいくえもの塗り壁を壊す。



    「でもどうやって?」



   俺は腹を押さえながらゆっくりと茶の間の方向へと歩く

 

   「俺は口下手だからな」  

 

   いまだにガラスが床に散らばっている。

   立てかけてあった両口の大型のハンマーを持つ


   力がはいると傷が痛む


   

    「これで」



    俺はハンマーを見せる。

  


   「それで・・・・何を壊すの?」


   

  ――  「祐人が作り出す・・・・・・・・全ての塗り壁を」   ―――




  そう一言だけ述べると、俺はゆっくりと階段へと向かう

  腹が痛い・・・・・すぐに病院に行かなければ、生死にかかわるかもしれない

  今すぐ倒れてしまいたい・・・・・・・・・・・・だが、ダメだ

  

  階段を一段ずつ上る


  倒れるな

  俺はきっかけを作ってしまった、もしかしたら今回の物語の全ての始まりのきっかけを

  だが、それを後悔しない


  

  それはあくまできっかけにすぎないのだから、その後どう動くのかは当人しだい


  だから、それが間違った方向へ行ってしまったのならそれもまた一つの人生、

  それを俺が後悔する事は出来ない


  だが、その間違ってしまった道を今、現在これから修正する事ならできる。


  だから・・・俺は・・・・今この場で、今度は彼がこちら側に戻る為のきっかけを与える。

  

  二階、祐人の部屋の前に着く



  当然鍵は閉まってはいない・・・・なるほど、あの時も閉じていなかったのは

  宮さん自身が心の奥底で必要ないと思い込んでいたのかもしれないな・・・

 

 

  深呼吸する、刺された場所がいたい。


  俺はゆっくりと扉を開いた  


  俺が作り出したきっかけを、俺が作り出したきっかけで終わらせる。

  


       


                  ●



「よう、祐人」


  そいつは・・・・・・・・・・・「あいつ」に刺されて死んでいるはずだった。


  扉の前に立ったそいつは全てを悟り、俺を見透かすような顔をしている。


  「壊しに来てやったぜ・・・・・・・・・・・・お前の壁を」



  何を言っている・・・・?

 

  俺の壁?


  「この傷・・・・覚えているか?・・・・・祐人、お前が刺したこの傷を」


  違う、俺じゃない


  あれは姉が・・・・刺したんだ俺じゃない


  「・・・・その記憶すら、塗り替えたか・・・・・・・・・・新しい壁に・・・・」



  何を言っている・・・・・・・?


  「いいさ、どちらにしろ今からぶっ壊してやる」



  そう言うとそいつは、もって背中に隠していた大きなハンマーを振り上げて・・・



 「うぉおおおおおおおおおお」



 ガツン・・・・・・・・・・


 俺たちの部屋をへだつ壁にハンマーをたたきつける・・・・・・・・・・・

 

 

 だが、そんな事でこの壁が壊れる事は無い

 そう、俺と彼女をつなぐ壁が、あいつが作り出した俺を守る壁が



 こんな事で壊れるはずが無い


 

  

 「いってえ・・・・・・・・・・だが、まだだ・・・うりゃあああ」



 ガツン・・・・・・・・・・・




 壊れない・・・・壊れるはずが無い、


 

 俺はその無意味な行動を、その背中を見る



 (馬鹿な奴・・・・・・・・・・そんな事をしても無駄なのに)



 その通りだ、どんな事をしてもこの壁は壊れない、何がやりたいんだコイツは


 俺を外に出したいわけでも、俺を警察に突き出したいわけでもなさそうだ・・・

 


 壁を壊す?


 なぜそんな事をする必要がある?


 

 「やっぱし、かてえな・・・」


 「何をやりたいんだ?そんな物でこの壁が壊れるわけ無いだろう」



 「そうかな・・・・・?じゃあこれならどうだ・・・」




 振り上げるカナズチ、壁に当たるその時に



 ―――  「お前は、何人殺した」 ――――――



 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「うっ」


 壁にハンマーが当たる、

 

 壁に衝撃が当たるのと同時に俺の頭・・・心にまで地響きが響く



 「俺は・・・・・・・・・・殺していない」



 「ふぅ・・・・・まだだ・・・・・・・・・」 

  

振り上げる、同じ場所を何度もたたく


―――  「お前は、どれだけ嘘をついた」  ―――

   

 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・

 

   


 壁に打たれているはずのハンマーが俺の心に打ちつけられる




 「嘘なんて・・・・・ついていない」



 「いんや、それ自身が嘘だ・・・・思い出せ、その嘘で塗り固めたその壁の向こうを」



 また振り上げる・・・・・・・・・・もうやめてくれ、もう言うな、それ以上聴きたくない、

 それ以上、俺を守っている「その壁」を壊されたくない  



 「お前は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  





 ―――  「両親を殺した」 ―――― 



 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ひびが入る、あの厚くて硬い、あの壁に俺を守るあの壁に・・・・・・・・ひびが入る




 「違う、違う違う、俺はやってない、殺ったのは・・・・あいつだ・・・姉さんだ」



 「うぉおおおおお」


 ヒビノはいりかけたこの壁に再度ハンマーを打ち付ける


 ―――  「隣人である彼女を殺した」  ―――



 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・パラパラ


 

 ひびと共に粉が舞う、もうやめろ、もう言うな



 (まずいわ・・・・・・・・・・・あいつを・・止めて、これ以上聴いちゃだめ)


 「ああああああああああああああああ」


 俺は、再度打ちにはいろうとしているそいつに飛び掛る


 そいつは、まるで子供を扱うように俺を片手で振り飛ばした・・・・


 なぜだ?何でかなわない・・・・こんな、けが人ごときに・・・・・・



 

 自分の腕や足を見る、この部屋に引きこもったまま運動もせず過ごした為か

 筋肉が弱り、細くなっている事に始めて気づく。





 「うおおおおおおおおおおおおお」




 振りかぶる



  (早く止めて!!!!!、早くしないとあなたの世界が、あなただけの理想の世界が・・・・・・・私が・・・・)


 



                   壊される




 飛び掛る、なんとしても止めなければいけない

 俺にだけ優しくしてくれる彼女も

 俺を肯定するこの世界も


 すべて



                   壊される


  「止めろおおおおおおおおおお」


 飛び掛る

 そいつの腕を持ち、行動を阻害する


 「祐人、お前はあの雨の日、姉に裏切られた、姉は兄を選んだと思ったかもしれないが・・・・・

  それはお前の勘違いだ、誰も、お前のことをないがしろになんてしていない、お前を比較なんてしていない」



 「嘘だ、姉は、母さんも父さんも・・・・兄貴ばかり見ていた・・・・だから俺は」



 俺は誰も俺を見ないんだったら、俺もおれ自身のことしか見ない、周りなんて見ない


 そして、姉が周りが俺ではなく兄を見て、俺を劣ってると思うんだったら俺はその蔑みを避ける為、

 周りの目線を遮断し、自分にとって都合の良い世界だけを作って生きていこうと思った。



 「だから、家族や周りの人がお前を見なくなったから、壁を作って周りを見なくなった?

  違うな・・・・・・・・・・・間違っている・・・・・・」



 俺の手を振りほどき突き飛ばす



 振り上げて



 振り下ろす


 

 「家族はお前を見ていたんだ、父も母も姉も・・・・だがお前が・・・些細な勘違い、すれ違いから

  自分を見ていない、自分よりも兄貴ばかりをみていると勝手に思い込んだんだ、そしてお前は

  自らの壁を作って、周りを見なくなった・・・・・・・・・見なくなったから、周りが家族が

  井上宮と言う大切な姉が、お前のことを見ている事に気づかなかったんだ・・・・・・・・・・・」




 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひびが大きくなる



 「そんな・・・・・ばかな・・・・そんなこと」



 (きいちゃだめ、早くそいつをとめて)



 「周りを見なくなったお前は、徐々に自分の世界にこもるようになった、だから見えなくなった

  そしてお前ははじめ、お前に起こる事だけを自分の都合の良いように解釈していた・・・・

  だが、徐々に自分自身の行動すら、自分の都合の良いように解釈し、その行動すら




  ――――― 嘘で塗り固める様になったんだ ―――――

  


  自分に負担がかからないように、自分に都合の良いように、全ての責任を他人におしつけて

  何一つ自分で背負わずに」




 ふりあげる、俺は何も出来ない・・・・


 (早く止めなさい、あなたが終わってもいいの?私が消えてもいいの)


 俺に語りかける声・・・・・・・・



 ―――― 「全ての行動を自分の都合の良い嘘で塗り固められた壁で守るようになった」 ―――





 「俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前のその壁を・・・・・・・・嘘の塗り壁を壊す!!!!!!!」


 (やめてやめてやめて)

 


 「思い出せ、両親を殺した日の事を」



 ガツン


 あの日・・俺は・・・・母親に否定され

 

 (違う、あなたは殺していない・・・・・・・・それに否定した母親が悪いのよ、あなたは悪くない)


 「そうだ、俺は悪くない悪いのは母さんだ、俺を見ず、兄ばかり見て、それでもって、兄の代わりなんていない

  お前じゃ、兄にはなれないなんて拒絶するから・・・・」



 そうだ、俺が悪いんじゃない・・・俺が・・・・



 「お前の母親は本当にそういったのか?」


 「そうだ、「代わりなんて・・・・いないのよ」はっきりとそういった」


 


 「馬鹿だよ・・・・・・・・お前は、やはり、お前は勘違いしている、その代わりが無いと言うのは」 






 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





  ――――「大切なあなたに代わる存在などいない」―――


 「そう言いたかったんじゃないか?」



 だから、自分が死んでいればよかったなんて言わないで、自分を否定しないで・・・と



 「うあああああああああああああああああああああ」



 崩壊する、俺の中の壁が、嘘の壁が壊される


 パリン


 何も考えられなくなった俺は、怒りの限り母親を殴り、そしてそれを止めようとする父をアイスピックで刺した・・・



 塗り固められた嘘の壁が初めて一枚壊される。



 「まだだ、思い出せ、お前が突き落として殺した大切な人を!!」



 ―― ビュン ――



 先程よりも早く強い一撃が俺の・・・壁に当たる



 ガツン・・・・・・・・・・・・・・・・・



 俺は・・・あの時、俺の世界を守る為に・・・・大切な人に手を伸ばし・・・・




 (だまされないで、私はここに生きているわ、聞こえるでしょこの声が)



 「そうだ、俺は殺していない、なぜなら俺は聞こえるからだ壁の向こうの声が、彼女の、俺が愛した壁の中の少女の声が」



 そう殺していない、俺は殺していない、今も話しているじゃないか。


 「そうか・・・今もお前はその声が聞こえているのか・・・・」



 「ああ、そうだ、俺には聞こえている、俺の大切な人の声が」



 「じゃあ、この壁を壊して確かめてみよう、この向こうに誰もいないことを、お前の聴いているその声自体が

  すでにお前の作り出した嘘であり、自身にとって都合の良い事しか言わない世界の歪みの元凶である事を

  この壁を、このお前が作り出した嘘で塗り固めらめられた「塗り壁」を壊して、お前に彼女が死んでいる事を

  お前が殺したという事実を!!お前が行った全ての責任を!!」




 (いやあああああああああああああああああああああああ)



 「止めろおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」



 


 ――― この世界を作り守る全ての物理的な塗り固められた壁を壊して ――  


 ――― この世界と現実とを隔てるおれ自身の壁をこわして ――


 ――― 俺が何枚も塗り重ね、真実を隠してきた、嘘の「塗り壁」を壊して  ―― 




 ――  ズドン ――




 バラバラバラ






 硬く閉ざされたその壁は・・・・・・何度も同じ場所を叩き、傷つける事により

 その壁に一つの穴を開けた。


 そして・・・そこから見える風景には隣の部屋の内部を指し示しており。





 そこには・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女の姿は無く



 ただ、灰色の世界のみが広がっていた。




 俺は・・・・・・・俺の全ての責任を負うことになる。




        ○


 

 


 ひざをついて砕かれた壁の向こうを見続ける少年

 いくえも嘘で塗り固められた壁はもう無い。


 「俺は・・・殺していたんだな」


 「ああ」


 誰もいないその部屋はただただ、空虚に存在しているだけ


 気がつけば、俺たち二人以外の人物がその部屋の入り口に立っていた。

 

 「壊したのね・・・祐君の壁を」


 「ああ」


 「最後に一言だけ言わせてもらうわ、祐君の壁を壊してもとの祐君に戻してくれて・・・ありがとう」


 物理的な壁と共に祐人が作っていた世界の壁も同時に壊した


 「宮姉・・・・ずっと俺の事を見てくれていたのか・・・・?」



 「うん・・・・」



 井上宮は静かに祐人のポケットを指差す


 「これは・・・」



 それは一通の通帳だった、その表紙には井上祐人と名前が刻み込まれている。



 「俺の名前・・・・」



 その中には相当額の資金が入っている様に見えた。



 「祐君は家族の通帳だと思っていたようだけど、その通帳はあなた専用の物なの・・・・

  お父さんとお母さんが祐君の将来を思って少しずつ貯めて来たお金・・・・」



 その金額を集めるにはどれだけの時間と苦労を必要とするのか・・・学生である俺には見当はつかない

 だが、それでも、祐人の両親が祐人の事を思って見ていたと言う事だけは確かである



 祐人もそれに気づいたのか・・・・その場に座り込み立とうとはしなかった。



 もう言葉は必要なかった。


 祐人にきっかけは与えた・・・・あとは祐人が自らの責任をどう償って生きて行くかだ





 これでこの物語は終結する




 そう、



 ―― 全ての責任を自分の物と決め付け、嘘の「塗り壁」で弟と真実を隠した姉と

 

    全ての責任を放棄し、嘘の「塗り壁」で自身の都合の良い世界を作り出した少年の物語 ――

















 「宮姉・・・話があるんだ」



 「何かしら?」



 「俺を見てくれていてありがとう、そして俺の責任をかぶろうとしてくれてありがとう・・・

  だけど、今度はおれ自身が責任を背負うよ・・・・・・」 

 

 

 

 どうやら、俺の与えたきっかけは、祐人自身を変えたようだ・・・・

 これで、彼の世界は元に・・・・










 「だから・・・・・・・・・・・宮姉、俺を殺してくれ」









 待て、何を言っている?

 どうしてそうなる、俺は与えただろう、きっかけを、元の生活に戻るきっかけを、

 だから、祐人お前は・・・償わなければならないんだ、これからの人生をそれなのに・・・



 「俺は罪を犯しすぎたんだ、俺を大切にしてくれた両親、俺を気に入ってくれた大切な人・・・

  その人たちを俺は・・・自分の都合だけで殺してしまった・・・だからその責任を取って俺は死ぬよ」



 違う違う違う・・・・・間違っている、俺はそんな責任を与える為にきっかけを作ったわけじゃない。



 「分かったわ・・・・・祐君あなたが責任を負うというのならば、私も本当の意味の責任を負わなければならない」



 何をわかったんだ・・・・?そうじゃないだろ、くそ


 ゆっくりと井上宮は、祐人のそばへと歩いていく

 そして祐人の頭をなでながら抱擁する。


 「待て、ふざけるな、俺はそんな責任を負わせる為に宮さんから責任を取り除き、

  祐人の壁をこわしたわけじゃない、あんたたちに償って欲しくて・・・」



 ぞっとする、二人の目はじっと俺の方向を見て、





 ―― だから・・・死を持って償うの ―――


 と言っているようだ。



 

 「だめだ・・・そんなの許さない、俺がこの場にいる以上・・そんな事は・・待て・・・」




  そういった瞬間、井上宮は祐人に何か薬を飲ませた。


 



  祐人の意識が無くなっていく・・・・・・・・・・


  そして井上祐人は・・・・・・・・・・・・・・・




















 「大丈夫よ、ただの睡眠薬だから」



  祐人は眠りについた





  冷や汗が一気に流れ落ちる。

  


 「驚かせるなよ・・・・本当に死んで責任を負うなんて言い出すのかと思ったぞ」


 


 「まさか・・・・私が祐君を殺すはずが無いでしょ・・・・大切な・・・だれよりも大切な弟なんだから

  それと、ありがとう、祐君を救ってくれて、そして、ごめんなさい、最後も・・・・も巻き込んでしまってごめんなさい」


 

   

 そう言うと祐人を布団の上に乗せ寝かせる。


 

 

 「じゃあ、俺は先にこの部屋から出させてもらうぞ、腹の痛みが限界だ、救急車を呼んでもすぐには来ないだろうし

  早い事に越した事は無い・・・・・・」

 








 


  ピーポーピーポー

  繰り返される耳に響く音響

  なぜか呼んでもいないサイレンが鳴っている

 

 「どういう事だ、サイレンが聞こえる・・・・なんで救急車が来ているんだ?」



 「あれは救急車じゃないわ、あれは警察よ・・・・あと消防車も着たかもしれないわね」





  ・・・・・・・・・・・・・どういう事だ?




 「私が呼んだの警察の方をね、でも、消防車は呼んでないわ、あれは近所の人が呼んだのかもしれないわね

  ちょっと予想より早いわね・・・」



 ・・・・・・・・・・・・・・意味がわからない?


 「なんで・・・・警察を呼んだんだ?自首でもしようとしていたのか?」


 俺は外の様子を見よう井上宮に背をむけ外に行こうとする。















 「違うわ、だって、今外ではアナタがこの事件の犯人ってことになってるんだから」








 なんだと・・・・今なんて、俺はその真相を聞こうとして・・・振り返った瞬間



 バチン


 井上宮の右手に持ったスタンガンで俺は体の自由を完全に奪われる事となる。










             


                ◎





















  ―― 今回の事件では、四人の死体が焼失死体として発見されており、そのうちの二人は

     父、井上義三さん、母、井上百合さん、また容疑者の幼馴染で同学校の篠原陽子さん

     そして、現在人気絶頂中だった歌手の「岸鈴那さん」の四名、

     亡くなった岸鈴那さんは数週間前からストーカー被害にあっており

     保護の為、彼女のマネージャーの井上宮宅で過ごしていたとの話です。

     事件当日、犯人は亡くなった四名を殺した後、井上家長女と次男を人質に取り立てこもりましたが、

     長女と次男は自らの力で脱出、犯人は家に火を放ち、その後逃走したとの話です ―――




    かち、かち



    チャンネルを変える



 ――  いやーでも、おかしな話なんですわ、脱出した井上家の長女と次男なんですけど、

     彼ら、その二日後に行方不明になってるんですわ、もしかしたら逃走した犯人に監禁されたか

     何らかの事件に巻き込まれた可能性がありますなぁ ―



    カチカチ


    チャンネルを変える



 ――  いやーあの日の火事はひどかったよ、もう一階はすごい火だったもの、そこから飛び出してきた二人の

     姉弟をみたときはそりゃーびっくりしたわ、でも、意外と早く警察と消防車が来たよなぁなんでだろう ――


    カチ  


 ――  でもこの事件なかなかに不思議なんですよ、両親が亡くなったのはあの事件の日なのに、それ以前から

     休暇届けをだしているんですよ   ――



    カチ

 

 ――  いやね、数日前から井上さん家をじーっとみはってる変な人物がいたのよ、それで、怪しいなとはおもっていたの

     よね ―

 

 

    カチ


 ――  なんと犯人は熱狂的な岸鈴那のファンで未成年だとか、いやー若い者はナ二をおこすかわかならいねえ ―



    プツン




 俺はテレビの電源を落とす・・・・・・名前は伏せられているがどこのチャンネルもこのニュースばかりやっている

 どうやら俺は完全に巷を揺るがす犯罪者扱いだ、それどころか俺は祐人に殺された岸鈴那の熱狂的なファンだとか・・・・

 ・・・・・わるいがCDの一枚も持ってないぞ



 俺は狭い個室のベットの上で包帯を巻かれて横になっていた。



 ったく・・・なんでこんなことになったんだか。




 ゆっくりと目を瞑る、あの日の光景が俺のまぶたの中で蘇る。





 記憶を戻す事、丸まる二日前の事である。


 俺は唐突にスタンガンで体の自由を奪われ冷たいコンクリートの上に横にされた


 その俺を見下す井上宮


 意識だけはあった、だが体は言う事を聴かない


 

 

「どういう・・・・ことだ・・・」




 井上宮は笑っている



「あら、まさか、スタンガンをあてて意識を保っているなんて、驚きだわ」



 驚き?逆に今の状況が驚きだ


 

 

「さすが男の子ね、強いわ、でも、残念これでさよならなのよ」



 だから、どういう事なんだ、それよりも


「俺が外では犯人ってのはどういった了見だ?」


「うふ、聴きたい?、あなた・・・・この数日間、この家を監視してたでしょ、気づかないとでも思ってた?

 滑稽ね、私が家を出ないか監視していたようだけど、その時少しでも自分の姿が周りの・・・特にご近所

 さんにどう、うつっていた考えた事ある?無いでしょ?」


 だから、何がいいたいんだ。



「順君・・・・あなた・・・完全にストーカーか何かの不審者に見えたわよ」



 だからなんだ

 だからといって俺がこの事件の犯人にされる言われは無いはずだ。


「それを見てね、確信したの私の思いつきはうまく行った、どうすれば祐君を犯人にせず責任を私に押し付けれるかというを・・・

 っと言うのも私を犯人として決め付けてくれる第三者の岸鈴那は死んじゃったでしょ、だから、もう無理だとおもってたのね

 だから私は少しでも祐君の幸せな時間を守ろうとしたのこの家の中で、祐君の罪や責任を私が全て受けて祐君を

 犯人にしまいとしてたんだけど・・・ちょうどあなたたちが来ちゃったのよ、そこまでは話したわよね」



 ああ、あんたの独り言でちゃんと聞いた



「その時は邪魔だなー、これ以上荒らさないでくれないかなーって思ってたのよ、でも陽ちゃんを監禁して、状況が

 代わっちゃったの・・とうぜん祐君も変わっちゃったのも困った事なんだけど、それよりも陽ちゃん捕まえたら、

 陽ちゃんと一緒にうちに訪れた順君あなたがうちに疑問を持つでしょ、それだととても困るのよ、ばれる可能性が

 でてきちゃうから」




 そして、井上宮は自分自身のした行動を誰かに褒めてもらいたいがようにニコニコ笑って


「で、案の定あなたが疑問に思って訪れてしまった・・・うふ、ここからの話はしてなかったわよね、当然言わないようにしてたもの」


 そういえばあの独り言の中に、俺が来た時の話は含まれなかった、くそ、あれは独り言は無意識じゃなくてわざとか・・・



「あなたが来た時、捕らえてしまおうかなともおもったの、でも止めたわ、だってあなたが誰かに行き先つたえてたらアウトだもの

 それに、ちょっといいこと思いついたのよ、だからアナタをわざと返した、当然ちょっと意味ありげにね」



 ああ、そうだった、あんたは俺に包丁を向けたり、落としたり、あらゆる方法で挑発してきたっけな




「そしたら私の予想通り、アナタはこの家に興味を持ってくれた、そして普通でははいれないからって、思惑通り監視までしてくれたの」



 完全に読まれていたって事か・・・・・・・・・コイツ予想以上に厄介だ



「ウフフ、そしてその時点で私が考え付いたちょっといい事、はほとんど成功していたのよ、さてここで質問ターイム

 私が考え付いたいいこととは何でしょう?・・・チチチ・・・・ブー時間切れ、さて答えだけど・・・聞きたい?聞きたい?

 ヒントはあなたがアナタが家を監視している姿よ・・ご近所さんも関係してるし」

 


 なるほど、やっと井上宮の言いたい事がわかってきた。



 すなわち



「第三者・・・・この場合ご近所さんね、にアナタが不審者で私の家を狙っていると言う情報を植えつけたかったの」



 そうそれは、岸鈴那に変わる祐人意外の犯人を決定付ける証拠を近所の住人をつかって作り上げたと言うわけか。

 そして、俺を犯人にしたてあげようとした。

 


「ということはあんたが、あの日出て行ったのもわざとか?」



 「当然」



 ふ、完全に手のひらで遊ばれていたってわけだ


 「そして俺がこの家に押し入った、それをあんたは確認した後、入ってきて捕獲しようとしたわけだ、俺をこの時点で

  家に押し入った強盗か何かとして全ての罪を押し付ける為に・・・・だが、はっきり言ってそれじゃあ不十分だぞ

  祐人が殺した人たちの死亡時刻と大きくかけ離れるし、おれは陽子や岸鈴那まで殺したことになる、それに俺はまだ生きているんだから

  おれが全てを話せば・・・・・・・・・・・」



 馬鹿か俺は、俺の今の状態をみろ、体が動かないんだ、当然口封じに殺されるに違いない



 「ちっ、だが、俺を殺しても、詳しく調べれば犯人が誰だか分かる、それに殺した時点で何らかの証拠が・・・」




 扉の外が煙たい・・・・煙?そういえば消防車って・・・・




 「お前・・・・・この家自体燃やすつもりか?」


 「そのとおり、気づくの遅いわ、ついでだから教えてあげる、あなたはストーカーでここにいる事になってるの、

  岸鈴那のね、あの子はストーカーに困ってて、それでマネージャーである私の家で保護している事にしといたわ」


 だから・・・岸鈴那が殺されていても、なんら不思議ではないということか


 「そして、アナタが私の留守中に家に入り込んで岸鈴那を襲い、私の両親と岸鈴那を殺害、たまたま幼馴染のストーカー犯罪に悩んでいて

  相談に来た祐人の友人、あ、これ陽ちゃんね、とその相談をうけた祐人を人質に取ったところで私が帰って来たって計画、

  ちなみに、もうすでに警察に連絡した時に全部つたえておいたから、後からナ二言ったって無駄よ」



 計画的だ・・・・・



 「そしてこれからの事なんだけど、あなたは私達3人を人質にとって篭城、勢いあまって家に火をつけちゃいましたー

  そこで、私と祐君は隙を見て脱出、しかし、逃げ切れなかった陽ちゃんと篭城を決め込んだ順君は焼かれしまうのでした。」


 ふざけた話だ・・・・だがまて、そうなると


 「陽子は生きているのか?」


 「うん、まだ生きているわよ、あの部屋・・・すなわち死体をまとめておいている部屋に監禁されているわ」


 なるほど、死体を置いている部屋に置いた・・・と聴いた時は殺してから入れたと思っていたが、監禁する場所が無く

 仕方が無く生きたまま、死臭ただようもっとも過酷な場所に監禁されたと言う事か。


 だったら、こんな所で寝ている暇は無い、今すぐ行って助けなければ



 俺の腕がぴくぴくと動く、くそ、もっと動け、動け


 「あらーまだ動けるんだ、すごい生命力、おなかだって血がでてるのに」


 だまれ、



 「そういえば血で思い出したんだけど、あなたが刺されたときはさすがに焦ったわ、

  あのタイミングでアナタが死んでしまったら、計画が台無しだもの、あなたと祐君が口論している外野の音声が

  必要だったのよ、警察に電話をかけている最中に臨場感をだすためにね、まあ内容ははっきりとは聞こえていなかったから

  中身がばれる可能性は無いし」



 畜生


 

  

 「あれー、なんでまだ動こうとしているの?」


 「なんで?決まっている、俺は陽子を救いに行く、まだ生きているんだろ?」



 井上宮はとても嫌そうな顔をする。


 「無駄だとおもうわ、だってあの部屋の扉は・・」


 「鍵がかかってるか?だったら俺がお前から奪ってやればいいだけの話」


 そういった瞬間井上宮はポケットから鍵をだして、プラン、プランと揺らし始めた。


 「うううん、違うわ、あの部屋の扉は「壁で塗り固めてきた」から、この鍵があってももう開かないのよ」


 くそがああああああああああ


 この悪魔を殺してやりたい、


 さっきまで真実は祐人が元凶だと思っていた、狂ってしまったのは祐人だと・・・だが

 この悪魔は、祐人以上に狂っていた・・・しかも、それを隠せるほど冷静に、狡猾に・・・




 「それに、死体の証拠をなくす為にあの部屋の前に灯油をまいて火をつけてきたから、もう完全にあの部屋は

  アウトね、ご愁傷さま」



 そう言うと井上宮は祐人を背負って出口に向かう。


 「じゃあ、もうそろそろ行かないと私達姉弟もこの火の中出られなくなっちゃうから、もう行くわさようなら順君」



 「待てよ、今の話の中で解せない点がある・・・・・お前はさっき全ての罪を自身に背負う責任を負うって言っていたな

  だけどよ、今の状態だと俺が全ての罪を背負う事になっちゃうぜ、それだと話がちがうんじゃないか?」



 俺のその問いに、なにをいまさらといった形で井上宮は



 「何をいっているの?、ばかね、あなたも言っていたじゃない、罪や責任はそれを行った人物が背負う者で他人の

  物は背負えないって、だから私は、アナタに罪を被せた責任やこの事件の黒幕としての責任を負うわ、だからアナタは

  ただ利用されただけで、罪も責任も無いただそれだけの話じゃない・・・・まあ、世間的には犯人にされちゃうけど

  本当の罪があるわけじゃないからいいわよね」


 なるほど、そう言うことか、あんたは自分の罪を理解した上で、責任を背負っていくと決めた上で、俺を仮そめの犯人、

 世間的な犯人として、ただ俺を道具として「利用した」ってことか、だから、この罪は道具として利用された俺にではなく

 利用した、本当の犯人である井上宮に行く。


 

 理解できなくは無いが、根本的に何かが歪んだ考え方

 どうやら俺は祐人自身が持つ嘘の塗り壁は壊せても、井上宮が持つ、全ての責任を自身が背負い祐人を守ると言う

 井上宮という塗り壁はあの説得の中で壊せなかったと言うわけか。




 私が全ての責任を負う、私が全ての罪を背負って祐君を守る・・・・・・・・・・・・まるで何かの呪いか暗示のような執拗さ


 「じゃあいくね・・・まだ何か言いたい事・・・ある?」


 「ああ、陽子の事許さない、お前にはいつかその責任を負わしてやる」


  井上宮は最後に


 「大丈夫、ちゃんと陽ちゃんの責任もせおってあげるわ、もちろんあなたのもね」

 

 そう言うと井上宮は扉に鍵をかけ 

 


 ガチャ、カチ、カチ


 

 行っちまった、しかもご丁寧に、隣の扉の鍵まで閉めていきやがった。


 これじゃあ、体が動くようになっても開いた穴から隣の扉をつかって外には出られない・・・


 いや、それ以上にこの体が動くようになっても、火で下まで行ってもでられるかどうか・・・



 5分、6分7分、着々と時間が経過し部屋の中が暑くなっていく

 扉の隙間から煙がはいってくる。


 このままじゃ死ぬ

 このまま罪を被せられて

 陽子が殺されて

 俺も殺されて








 ふざけるな 






 右手に力を入れる・・・・動いた


 まさかと思い、体に力を入れる


 動く 



 そんなばかな・・・・


 動く、立てる


 動くぞ


 通常で考えればスタンガンを受けた数分後に動けるなんてはずは無い・・・・

 だが動く・・・・これじゃまるで









 「火事場の馬鹿力」


 いや、まるでも何もまんまなのだが


 だが、これで終わったわけじゃない、腹も痛いし、そもそもこの壁の部屋を抜け出せない、鍵が無いのだから外に出れない

 例え扉から外に出ても、おそらくは煙でいっぱい火でいっぱいなのだろう、完全密封に近いこの部屋の構造がさいわして

 今のところ無事なだけの話だ。


 入り口はだめ、だとすると



 部屋の周りを見渡す、あるのは布団と、壁を壊すのに使ったハンマー、バケツ、のみ。

 

 ハンマーがる、これで壁を壊せば・・・・いや、無理だろう、さっき壊せたのは急造で仕切られた壁だったからだ、

 元々の家の壁にさらに塗り壁を作った「しきり」以外の壁は厚すぎて、どうやっても短時間で壊すのは不可能


 ならば・・・扉か・・・いや、壊したところで外は火の海、不可能だ

 外に面していて壁が薄いところ・・・・・・・・・・・・



 そんな都合の良い場所があるはずが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あった。




 今の原状だけ見れば然灰色の部屋だ、だが確か昔はこの一面、すなわち扉と対照の位置に大きな日差しの良い窓がついていたはずだ

 そして、外からはそれが取り外された様子は無かった、すなわち


 窓に面する壁は、たった一枚の薄い塗り壁ででいている。



 それならば・・・・・・・・・・・・壊せる、ここから抜け出せる



 俺は勢いよく昔窓が会った部屋にハンマーをぶつける。



 ぐしゃ



 予想以上に簡単に壁に穴が開いた。

 確かに素手では無理だがハンマーだと女性でも壊せるぐらいだ。


 穴が開いた壁の隙間から、ガラス片と外の日差しが漏れてくる


 俺はもう一度ハンマーをぶつけ出口を広げる。


 パリンパリンパリン


 よし


 人一人が出れるぐらいの出口を作り、ハンマーを捨て屋根の上に立つ、周りにはたくさんの人だかり、

 俺は出来るだけ人の少ない方向へと行き、隣の家の屋根をつたって、近所の策の中に降り立つ、


 「うう」


 限界だ、血が・・・・・・・・・・・・・・くっ、


「きゃあああああああああ」


 近所の家の住人が俺を見て声を上げる


「待て、俺は」


不審者じゃない・・・そう言おうとして井上宮の言葉を思い出す



 ―――  第三者・・・・この場合ご近所さんね、にアナタが不審者で私の家を狙っていると言う情報を植えつけたかったの ――


 そして、俺を犯人に仕立て上げるための布石、それがこんな所で二次災害を起こす


 くそ、この状況で不審者じゃないって行っても信じてもらえないか

 いっそのこと、このままつかまって、真実を述べれば・・・・



 ――― 、あ、もうすでに警察に連絡した時に全部つたえておいたから、後から何言ったって無駄よ ――


 くそくそくそ、あまりにも状況が悪すぎる。


 とにかく何らかの解決策を見つけてから手を打たないと・・・・警察は信用してくれない


 俺は、よろけながらその場を走り出す、人ごみを分けて、路地を抜けて、とにかく走る。

 

 

 走って走ってとにかく走って、




 気がつけば俺はここがどこかわからない程遠くにいて、


 腹いてえ、


 おれはその路地の一角で力尽きた。



 それが二日前に起こった事実


 俺は祐人を救えず、陽子を救えず、誰も救えず犯人に仕立てられた。


                

 

 俺は・・・俺の自由な日常と言う世界は

 井上宮の作り出した、偽りで塗り固められた嘘の壁によって

 塗り固められ全ての行動を犯罪者として封じられる事になった。







           ○  




 コンコン



 扉のノックの後、金髪の少年が部屋にはいってくる。

 まあ、少年といっても俺と同年代なのだが。




 「よう、順二ー、怪我の調子はどうだ」


 「良くない」



 そうかそうか、とその友人は俺に見舞いの品であるスポーツドリンクを置く

 

 「おい、俺はいつもポカリを買ってこいといっているじゃないか」


 「オレッチは、アクエリアスの方が好きなもんで」


 「俺はお前の意見は聞いていない」


 そうかそうか、と言って、俺のアクエリアスをコップについで飲む・・・・結局コイツがのみたいだけなわけだ。


  

 俺はあの後、この少年に救われた・・・・実際、コイツも井上邸で監禁され殺されていると思っていたのだから

 俺の前に出てきた時はそれはそれは驚いた。


 

 路地裏のゴミ捨て場に倒れている俺を見つけ


 「おー順二ーお久さー」


 とかのんきに声をかけてくる馬鹿


 俺は驚きと消え行きそうな意識の中、一言


 「お前がなぜ生きている」


 まるで敗北を目の前にした悪役


 「そりゃー、酸素吸って、メシくって、病気しないで、心臓動いてますから」


 と、ノンノンと述べる。


 とにかく今の状況を伝え、冤罪をかけられて追われているというと、コイツ


 「みなぎってきたー、そう言うスリルを待っていたんだよ」


 と、空気を読まない言葉・・・・まあ、後で陽子が死んで、宮が犯人と伝えたら相当落ち込んではいたのだが

 まあ、そんなわけで「それならオレッチ闇医者紹介してやるぜ」とか言うのでかくまってもらったわけだ。

 だが、闇医者を知ってるって、お前どんな友好関係してるんだと聴きたいが。


 どちらにしろ、偶然この旧知の友人であり俺たち幼馴染4人の最後の一人鈴木省吾に俺は命を救われたのだ。


 「それで省吾、何か新しい情報をつかんだか?」


 「いや、まったく、テレビで流れてるぐらいのニュースしかわからん」


 あまりにも無関心な態度に腹を立て、俺はケータイを取り出す


 「元をたどるとお前がこんな変な留守番電話を出すから心配したんだろう、まったく、あの後連絡もよこさずに・・・」


 そう、俺と陽子がこの事件に首を突っ込むきっかけになった留守番電話


 このメッセージが来なければ陽子はこの事件にかかわらずにすみ、死ぬ事も・・・



 「すまん・・」


 それに気づいてか、普段おちゃらけた省吾もしょんぼりと謝る。


 「あの日おれっちも見舞いに行こうと思ったんだけど、ちょっと用事が入ってさ、唐突にいけなくなっちゃったんだよ、

  しかもケータイなくしちゃうしさ」


 心底落ち込んだふいんきの省吾、だが、行かなくて正解だったのかもしれない、偶然にしろ、その用事があったおかげで

 省吾は行方不明にならずにすんだのだから・・・・ちなみに言えばそのメッセージもださないままにしておいてほしかったのだか


 「まあいいさ・・・・全ては終わった・・・・」


 終わった事


 そう言おうとして止める


 まだ終わってない

 

 井上宮は今は行方不明となっているが生きている。

 当然そのそばには祐人もいるだろう。


 祐人は俺が祐人の嘘で塗り固めた壁「ヌリカベ」を壊した時、元の正気の祐人に戻ったように思える

 だから、確かに自らの命を絶って償おうとしてはいたが、時間を掛けてゆっくりと彼と話せば、

 自らの罪を本当の意味で生きて償う事を行うだろう・・・・だが


 井上宮はまだ戻っていない・・・・・・今までも、そしてこれからも、弟の罪をひたすら隠す為に

 自分自身に責任を負ってまだまだ犯罪を犯す可能性がある。


 だから・・・・彼女を本当に止めるまでは、まだ終わっていない、俺にかかった偽りの罪も消えない

 それより何より、井上宮を捕まえ、止めないと、生きたまま焼かれた陽子が浮かばれない・・・・・



 

 「まだ、終わってない」

   


 「そうか・・・・でも順二、とりあえずしばらくの間はここにいた方がいいぜ、腹の傷も心配だが、

  今外はなかなかに大変な事になってるからな」


 どうやら、省吾は俺の事を心配しているらしい。



 「あ、あと金の事なら心配しなくていいから、こっちにはスポンサーがいるからな」


 「スポンサー?」


 「いや、ごめん、気にするな失言だ」


 何やら意味のわからない言葉を漏らす省吾、だが金のことを心配しなくていいのは実際うれしい



 プルルル、プルルル



 

 「すまん、電話だわ、ちょっと離れるわ」


 「おう・・・・・・・・・・・・・」



 ん?電話・・・・・・・・・・・無くしたんじゃなかったのか?


 ・・・・・・・・・・まあ、あれからかなり日もたつし新しいのを買ったのかもしれないな、特に気にする事も無い

 

 ガラガラ、扉が閉まる。


 少し寝よう、また忙しくなる。

 これはまだ終わりではないのだから。


 








 ■エピローグ    ヌリカベ









 ガラガラ


 金髪の少年は完全に扉が閉まったことを確認し、その病室からしばらく離れた待合室にまで歩く。

 そして、回りをみて誰もいない事を確認すると、携帯の通話ボタンを押した。


 

 「はい、俺です省吾です」



 「私だ、北里順二の様子はどうだ」



 「何の変わりもありません、しばらくの間は拘束を続けれそうです・・・どうしますか?

  処分しますか?」


 「お前に探し出させたのは、彼を殺す為じゃない、使い道があるからだ、必要がなくなるまでは

  省吾・・・おまえが監視し、管理しろ、追って連絡する」


 「了解しました」



 ピ



 電話が切れる、その電話の向こう井上邸が見えるマンションの屋上でその二人は立っていた。


 「で、あのガラクタ、なんて言ってた?」


 その少女は、黒い服で身を包み、ニコニコしながら隣にいる電話の主に尋ねた。


 「いや、たいした事は無い、しばらくの間、今回の事の全てを知ってしまった北里順二を

  拘束かつ監視を続ける事にしただけの話だ、それ以外の君が喜びそうな話題は無いよ」


 それの顔は影になって分からない、それが男か女かも知る事が出来ない


 「なんだーつまんないのー、北里・・・順二だっけ?あいつも死ねばよかったのに」


 そうする事が当然、そうじゃなきゃつまらないと子供が駄々をこねるように少女は手を振り上げる。


 「確かに・・・今回は誤算だった、井上宮に手を加え、井上祐人はほぼ完全にあちら側・・・「彼岸」に足を踏み入れ

  かけていたのだが・・・・より完璧を目指したのが悪かったのか、追加の要素として彼の友人を送り込んだのが間違いだったな」

  

 「そうよー、あそこで止めとけばよかったのよー、まあね、あの餌のおかげでかなりいいところまで彼は育ったけど

  最後の最後で、その餌に壊されちゃったら意味ないわよー」



 「うむ、自分の都合の良い世界を作り出し、自らの殺人をも自分の都合の良い考え方に変え、

  嘘で作り出し、塗り固めた壁「ヌリカベ」に篭る、そこまでは上出来だったのだがな・・・・

  その後、そのヌリカベの世界を邪魔する者を用意し、自らの世界を守ろうと「排除機能」を

  持たせようとしたのが失敗だな・・・・「彼岸」の深い領域に体ごとつかる前にその邪魔者に

  全て壊されてしまったんだから」



  さすがに12月の夕方の屋上である、寒くなったのか

  黒い少女はぶるぶると振るえ、その後興味がなくなったのか井上邸の方向を見なくなった。



 「もー、あいつ死ねばいいのに」


 「まあそう言うな、一石二鳥・・・とは行かなかったが、君にとって、もっとも排除したい人間の一人

  を消せたんだからとりあえず文句は無いだろう?」


 少女はうーんと叫びながら


 「それもそうね、岸鈴那をうまく殺せたし・・・あの女の死に際を見れなかったのは残念だけど・・・くく、

  首の骨折った上に燃やされたんだから、上出来よ」

  

 「邪魔者だった事は確かだな・・・・だが、いつも思っていたんだが、そんなに岸鈴那の事が嫌いなのか?」


  少女は腕を後ろに組み、階段へと向かう最中、一度だけ振り向き

 

 「当然よ・・・・・・・・・・・・だってあの女、あの憎たらしいアイツと同じフインキをもってるんだもの」




          ―――    何度だって殺してやりたいわ    ―――   





  

 少女は真っ直ぐに階段を下りていく

 それに続く様にソレも・・・・・・少女と同じ道を歩んでいった。







                                 彼岸花 第二部

                                             

                                 塗り壁 後編  終






 彼岸花第二部終了です、前回の後書きにも書きましたがこの物語は全四部設定の

物語となります。一応1~3部までは全て単品で楽しめる様になっていますので、もしよければ他の物語ものぞいて貰えるとうれしいです。ちなみに次の「病み鍋」

が最も長い部になる予定です。ではこれからもよろしくおねがいします。

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