少女と運転手~王子の巻き~
「王子……。何故まだ、こんな街にいるんですか?というかそこに居る女性…いや…。女の子…かな?は、誰ですか?」
「あ、この子は…。僕を、ここから少し離れた、下町の住人から、助けてくれた大事な子だよ。変なこと、しないでよ?」
王子は、少し警戒気味に男に言った。
何で王子なのに、家臣のような人に、お願いをするんだよ(笑)
「ふうん。でもその顔、どっかで見たことあるような気がするんだが……。あ!!
王子が、可愛い子がいるって言って、追いかけられた子!?」
その男は、吃驚仰天しながら、こちらを興味津々に見てきた。
っチッ!
感じ悪い奴だなぁ?あ?こんな場所で、人が多くなかったら、魔法で吹き飛ばすぞ!?
っと、イケナイいけない。男になりかけてた。テヘペロン(←気持ち悪っ)
にしても、“シュン”って名前、おばあちゃんから聞いた事あるようなないような…。
う~ん…。誰だろうなぁ。
その時、「魔法使い」「魔術師」「超能力者」「魔女」という四つの単語が閃いた。
あ…!!!!!
「あ…!思い出した!“シュン”って、世界に一人しかいない、すごく特別な人で、超能力が使えるんだよね~?」
私は、隣に立っている王子に、笑顔で訊ねる。
しかし、王子は顔が苦味虫を噛み潰したような、引き攣ったような、色々な感情が混ざり合った顔をしていた。
「そう、だよ……。“何で知ってるの”って、聞き返しても良い?」
「“そんな愚問は、私に問うな”って、返して良い??」
満遍の笑顔で、私は王子を見つめ返した。
「ふふふっ。仲がよろしい事で…。
自己紹介が遅れていましたね、お嬢さん。私の名前は、シュンと申します。貴女様の言った通り、世界で一人の超能力者です。
で、貴女様は、一体どこのどなた様でしょうか?」
私は、彼の正体を当てると、彼は「女の子→お嬢さん」と言い方が変わり、敬語になった。これは、“敵”の可能性があるとみなされた、と考えて良いだろう。
そして彼は、ニヤリと笑った。その口は、耳元まで届きそうなぐらい、“裂けて”いるように見えた。
「ああ。勿論、このような街中は嫌でしたら、テレポートしましょうか?」
そう彼がギラギラの目で言うと、ヒュンヒュンっと、周りの景色が変わり、森の風景になり収まった。
呼吸をしてみるとスウっと、新鮮な綺麗な空気が肺に入ってきた。どうやら、本当にテレポートしたらしい。
「ここは何処だ?」
王子は、腰を抜かしそうになりながら、シュンを睨んで聞く。
「見てわかんないかなぁ?森だよ、森。
やっぱリィ、お馬鹿ちゃんハァ、置いて来れば良かったかナァ?
うーん、ま、良いカァ。さて、お嬢ちゃん~?
正体を明かしてヨォ。
下町の、“魔女”なんでショ!?」
それはそれは実に楽しそうに、シュンは私を見つめる。
はあ。どいつもこいつも、魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女!!!!!!!!
マホー使いナンデスケド~?あっれれぇぇ?
私は、くるりと隣を見る。
「ねえ、王子、こいつ、殺してもいい?」
「だだだだっ、ダメに決まってるじゃん。父上に、処罰されるよ!」
「私は、処罰されないから、絶対に。何をやっても、何をしても…」
私は、眉毛を八の字に下げハッと軽く笑った。
「な…で?な、んで…。なんで。何で!何で、君はいつも無茶ばかりしてるの!?ご飯だって、僕が起きたらちゃんとできてたし。君の親、一度も見たことないよ。きっと、いないんでしょ?顔も覚えてないくらい、長い時間会ってないんでしょ??」
精一杯の限り、彼は叫んだ。
何?無茶してる…?私、無茶したのは、おばあちゃんとの魔法の練習ぐらいなんだけど…。朝ご飯作るのが早いは、いつもあれぐらいに目が覚めるからと、王子が起きるの遅いからだと思うんですけドーォ…。
絶対、こいつ、何か勘違いしてる(途方に暮れる)
「無茶してないし。うるさいし、黙ってくれない?」
「ひっ。わ、分かりました!向こうの方に、行ってます!」
潤んだ目を、ゴシゴシと袖で拭き、ダッシュで彼は森の奥へと消えた。
「シュンちゃんって、言ってもいい?
マジでウゼェんだけど。
一回死ねば?あの世にお散歩しに行けば?
私が誰だって?
知りたきゃ、今からきっちり教えてやるよー!?!」
ぐわんと、狂気の獣と化したシュンの足元に、虹色の菱形の魔方陣を、展開させた。
魔方陣は、徐々に大きくなっていった。この“菱形の魔方陣”は、“神”と言われる位の者のみ使えるものだ。この菱形の中のみ、天災を呼び起こす事ができる。
「さてと。シュンちゃん。君の実力、見せてもらうよ」
ニコリと首を傾げて、可愛く私は笑った。
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この特別な菱形を彼方から見ていた二人の魔法使いが居た。
一人は、高い城の頂上から…。
もう一人は、空の上から……。
さあさあさあさあ!
神の御遊戯、
ご覧あれ!!