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ブシドーブレード (後編)

「着きました、ここです」


 千歳達が通う学校は、元は山を崩して出来たゴルフ場だった場所に建てられた学校なため、やや複雑かつ広大な地形になっている。

 どれだけ複雑かと言えば、学校で管理するには大きすぎる池なんてあれば、登山部が活発に練習に使う小さな山が真ん中にどーんと鎮座しており、ゴルフコースも一つ残っているためあまりにもてんこ盛りで、大きすぎるゆえに校内を移動する用の路面電車なんてあるくらいだ。

 奥まった所はほぼ未開拓地域と言っても過言ではない。

 電車部が管理する路面電車を使って移動する事約十五分、そこにポツンと佇む二階建ての部室棟へ詩織に案内されるがまま付いてきた。

 奥まったゆえに誰も使う者のいない……というわけでもなく、一階部分は路面電車の整備用資材置場と電車部の部室になっており、二階部分はチョコバット部とダンボール同好会の部屋があるらしい。

 詩織がここと言った部屋は二階の一番奥だった。

 ネームプレートを見上げれば。


「電脳遊戯部……ゲーム部ってこと?」

「数年前まで活動していたらしいですけど、部員の減少と共に自然消滅した部活らしいですわ。こんな場所に部室があるから片付けられる事もなくそのままになっているんです……ささ、こちらこちら」


 中へ入れば意外と広い、まさか給湯室があるとは。


「トイレと洗面所は入って左手ですわ」

「お、おお……こんな所が数年放置されてたのバグでしょ、え? 全部屋こんなアパートみたいな作りなの?」


 後日チョコバット部の部屋を見せてもらったら同じ作りだった。


「アパートてどんなのか知らないんですけど、まあ津雲君が言うならそうなんだと思います」


 土間に式台がある事から靴を脱いで上がるらしい。

 スリッパラックから拝借して中へ入れば八畳間の部屋、ソファとテーブルとTVがある。


「すっご、入学初日でよくこんな部屋使わせてもらえたね」

「事前にお爺様に頼んで用意してもらいましたから!」

「お爺様?」

「私のお爺様はここの理事長ですわ」

「まじか」


 こんなイカレた広さの学校の理事長を務めるなんて、なんか納得した。この祖父あってこの孫あり。

 詩織は早速カバンからPS1を取り出してテーブルに置き、慣れた手つきで三色端子とアダプタをセットしていく。

 ――いやまってそれ持ち歩いてたの??


「さ、やりますわよ」


 ブシドーブレードのディスクをセットしてスイッチを入れる。PS1独特の重たいBGMが流れ、そしてブシドーブレードのOPが流れる。

 ブシドーブレードとは、まだエニックスと合併する前のスクエアから発売された対戦アクションゲームだ。あの伝説的名作ファイナルファンタジーⅦから二ヶ月経たずして発売された意欲作、いや意欲すぎる作品。


「発売日が三月一四日のホワイトデーなので、きっと当時の男子達はバレンタインデーのお返しにブシドーブレードを送ったんだと思います」

「ねーよ、送ってたとしても絶対フラれただろ」

「今年のホワイトデーはブシドーブレードでお願いしますね」

「今年のホワイトデーもう終わってるよ」


 OPが終わりタイトル画面へ、ブシドーブレード自体は知ってるがプレイした事がなかったのでとりあえず特訓モードをプレイさせてもらう。

 キャラクターは六人か。


「隠しキャラクターもいるんですが、最初はこの6人です」

「ふむふむ」


 六人の顔アイコンが並んでおり、その下にはゲージのようなのがある。ゲージの左端には「速」の文字が、右端には「力」の文字が。


「えっと、左にいけばいくほど速くて、右が攻撃力があるってことかな」

「ええ! そうですわ、流石察しがいいですわね。これはそのまま武器の相性に繋がりまして」


 試しに主人公ぽい顔つきの辰美というキャラクターを選んでみる。

 キャラクターを選ぶと今度は武器を選ぶらしい、刀に西洋の剣、大剣に槍、金槌まである。そしてそれらには重さが設定されていた。


「なるほど、速いキャラは速さの代わりに重い武器が使えないんだな」

「さ、流石です! 飲み込みが早い!」


 取説を見る。格ゲーみたいにキャラクターにアクションコマンドがあるわけではなく、武器にコマンドがあり、キャラの身体能力で威力や速さが変わるらしい。


「辰美でやるなら、このセイヨーツルギかな」

「おお、一目で辰美さんの相性抜群の武器を見破るとは、ブシドーの才能ありますよ!」


 左から二番目に速いキャラらしいから、二番目に軽い武器を選んだだけなのだが、当たりだったらしい。

 特訓モードの始まりである、取説を見ながらコマンドを確認する、よく見たらキャラ紹介の所に専用技もあるな、えーと。

 とコマンドを確認していたら画面から「えいや!」という掛け声と共にザシュッという効果音が聞こえてきた。慌てて画面に目を向けたらなんと自身が斬り殺されているではないか。


「なんか特訓モードなのにCPUが殺しに来てるんだけど!!」

「特訓であっても本気で挑まなければならない、これぞブシドー」

「ねぇ! さっきからブシドーつけたら何でもいいて思ってる!?」


 気を取り直して特訓再開、今度は油断せず間合いを測りながら通常攻撃を練習する。武器には構えがあり、それぞれを切り替えながら技を繰り出すのである。

 そしてこのゲーム、体力ゲージがない。一撃で全てが決まるのである。


「く、一撃で終わるから緊張感がすごい」


 今はストーリーモードをプレイしている、特訓モードと違って直ぐに全快してコンティニューにならないので緊張感が違う。


「しまった、足をやられた」


 手を切られれば攻撃力が下がり、足を切られれば機動力が下がる。それらはコンティニューしてもそのままなのでどうしても緊張感がでる。


「あ、終わった?」


 風閂かんぬきというキャラを倒したところで画面が真っ暗になって俳句がでてくる。生命を大事に出来ない奴は武士道にあらずらしい。


「ダメージを負いすぎてゲームオーバーですね」

「じゃあ次は」


 やってて気付いたのだが、対戦開始時に対戦相手が口上を上げる、その時自由に動けるのでそこで攻撃すれば……。


「ちなみに口上中に攻撃すると外道とみなされてゲームオーバーです、背中から斬っても同様ですよ」


 ブシドーて難しい。

 二回目はまず間合いをとって相手の攻撃を誘発してからカウンター、フリーランの辻斬り等で勝利をもぎとりつつ前回そこで終わってしまった風閂戦まで来た。


「辰美のセイヨーツルギって発生が早いから、口上が終わった瞬間に切れば」


 口上を終えて構えた時にカチャと音がするので、その瞬間に上段から切りつける。案の定相手はガードすらできず一撃に瀕した。


「必勝法わかったかも!」

「おお」


 続く相手はカッツェという暗殺者、使用武器は。


「銃!? いやこいつもさっきの必勝法で!」


 ガードされた、そして撃ち殺された。


「あの……武士道とは」

「これもブシドーですよ津雲君」

「ブシドー付けたらなんでもいいわけじゃないからね!」


 コンティニューして再開、今度はフリーランでフィールドを駆け回りながら射線から外れるよう動く、案の定こうしていれば銃撃は当たらないようだが、これでは攻撃にも転ぜられない、迂闊に近付けば撃ち殺されるだろうし。

 と思っていたらチャンスがきた、カッツェがリロードを始めたのだ。そりゃ銃だから弾切れはあるか。この隙を逃さず接近して切る!

 リロードは上の方でやってるから下段から切りつけてみたが、浅い! 足を負傷させる事はできたがこれでは足りない。


「てあれ?」


 フリーランに入ろうかと思っていたら突然カッツェが降参したのだ。


「この人何故か足を切ると降参するんですよね、これもまたブシドーですかねぇ」


 もうツッコまない。

 その後も対戦が続きいよいよラスボスと思しきおじいちゃんと相対する。ラスボスだけあって技の繰り出しも早く強い、二回やり直して先の必勝法で倒す事が出来た。

 エンディングを迎えて「ほう」と息を吐いた。

 この辰美はどうやら人斬りに目覚めてしまったらしく、つまり闇堕ちして社会に出てしまうエンディングというなんとも後味の悪いものだった。

 他のキャラでは切腹だったり謎を残したりでそういうものなのだろう。

 

 

「あっという間に全キャラの通常ENDを見ちゃいましたね」

「いうて結構時間経ってるけどね」


 外はすっかり真っ暗だ。


「ちょっと待って通常END?」

「はい! これには真ENDがありまして」


 ちなみに真ENDの条件は長い追いかけっこをしてから五人をノーダメで倒したら現れる隠しボスを倒すこととの事、やってみたらめちゃくちゃキツかった。

 真ENDでも辰美は闇堕ちみたいになってた。


「さ、さすがに二人目以降は時間を空けて」

「そうですわね、もう真っ暗ですから最後に私と一戦勝負してから帰りましょう!」


 そういえばまだ詩織はまだコントローラーを握っていない、持ち主でありブシドーブレードに詳しいからきっとかなりの手練に違いない。

 己の中のブシドーが火を付けているのを実感していく。感化されすぎたかもしれない。


「私はこの方を選びます」


 選ばれたのは空蝉というキャラで、使用武器は野太刀だった。

 こちらは一番使い慣れた辰美でいく。


「この空蝉さん、なんとあの円月殺法が使えまして」

「円月殺法てなに?」

「眠狂四郎という時代劇の主人公の技ですわ」


 調べたら一九五六年の時代小説で、一九六三年からの市川雷蔵主演の映画で有名になったとか。多分今の若い子達には全く伝わらないと思います。


「ではお覚悟してください! 必殺! 円月殺法……もとい朧……あれコマンドどうだっけ」


 ザシュッ!


「ブシドォォォォ!! なんで! なんでコマンド打ち終わるまで待ってくれないんですか!?」

「いや知らんがな」


 暗くなってきたので帰ろう。

 詩織を残して電脳遊戯部の部室を後にした。帰り際チョコバット部の部員とすれ違う。


「君新入生でしょ? チョコバット部に入らない? 一緒に全国大会を目指そう!」

「いえやめときます。お誘いありがとうございました」


 チョコバット部てなんだ?


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