変わり者の王太子妃
朝から目まぐるしく時間が流れた一日が、ようやく終わろうとしていた。
王太子夫妻の婚儀に続く夜会も無事に終わり、
テオドール、フィリップス、ランドールの三名は控室でぐったりと疲れを癒していた。
「ってかさ……王太子妃、何なんだよ。もはや本の虫の面影ゼロだろ?」
テオドールがフィリップスへ視線を送ると、
フィリップスはあっさりと言った。
「本の虫は“見せかけ”だよ。むしろ大嫌いらしい」
サラッと投げられた事実に、テオドールとランドールは一瞬思考停止し、
次の瞬間、同時にフィリップスへ視線を戻す。
フィリップスは深くため息を吐き、
クラリスから聞いた話――“三ヶ国の王子比較”をそのまま二人へ伝えた。
「……ハズレ、って……」
「……ペラッペラって……」
呆けた声が控室にふたつ響く。
しばらく呆然としたのち、テオドールが口を開いた。
「で? 本の虫の正体は、実はワガママ王女でした~ってオチか?」
悪態まじりの言葉に、フィリップスは真顔で首を振る。
「じゃあ……よくある脳内花畑系?」
ランドールの推測にも、フィリップスはまた首を振る。
「……」
「だぁー、めんどくせぇ。じゃあ何だ? 頭空っぽ? 傲慢? お人形タイプ?」
テオドールは長い足を投げ出し、完全に投げやりモード。
しかしフィリップスは含み笑いをしながら、またしても否定の首振り。
その様子を見たランドールが、何かを読み取るように頷くと、
フィリップスは小さく笑って説明した。
「妃殿下は仕事ができるし、本の虫じゃなくても学はある。
元王女だから品位も備えているし、かといって冷たくもない。
それにユーモアまである」
しばらく黙っていたテオドールは固まったまま言葉を失い──
「……それって、完璧じゃねぇか」
ランドールも腕を組みながら感心したように言う。
「なるほど。俺たちが侍らせてた令嬢とは、そもそもの格が違うわけだ」
フィリップスは満足げに頷き、
「後は――フリード殿下次第だな」
テオドールは側近として思考を巡らせ、
やがてニヤリと笑った。
「今夜は初夜だしな。あのフリードなら……まあ、大丈夫だろ」
三人はそれぞれ思いを馳せながら、静かにグラスを傾けた。




