ハズレ王子と変わらぬ王女
ご機嫌ななめなご様子ですね?
王太子妃付きとなった側近の一人、フィリップスがクラリスへ声をかけた。
「別に悪くはないわよ?」
クラリスは大きな瞳をさらに大きく見開き、フィリップスを鋭く睨みつける。
……相当お怒りだな、これは(苦笑)
「昔のまま、まっっったく成長してないのよ、あの王子は!」
「クラリス様は、随分とお変わりになられましたが?」
再び睨まれ、フィリップスは肩をすくめる。
「そう言えばあなたも変わらないわね? いつも殿下と一緒に、令嬢を侍らせて楽しそうにしてたでしょう?」
「クラリス様、人聞きの悪い言い方はおやめください。侍らせていたのではなく、向こうが寄ってきたのです。仕方ないでしょう(笑)」
クラリスは、大げさなほど深いため息を吐いた。
「……とんだハズレ王子だわ」
「ハ、ハズレ?」
フィリップスが首を傾げると、クラリスは淡々と語り出した。
「私は幼い頃から、どこかの国に嫁ぐことが決まっていたの。
候補は三つ。どことは言わないけど、全部留学して確かめたわ」
クラリスは目を閉じ、思い返すように続ける。
「一つ目は、冷たさすら感じるほどクールな王子。遠い存在そのものだったわ。
そして二つ目は、絵本から飛び出したみたいに優しい笑顔の“白馬の王子様”。」
……白馬? そんな奴、見たことないけど?
「そして三つ目。薄っぺらい笑顔を撒き散らし、品位の欠片もない令嬢を侍らせて練り歩く能なし王子」
……それ、つまり“ハズレ王子”確定ってことか?
フィリップスは乾いた笑いを浮かべ、何とかクラリスの機嫌を取ろうとする。
「クラリス様……図書館にでもご案内しましょうか?」
クラリスの瞳が細くなる。
「浅はかね。私、本なんて好きでもないし、むしろ大っ嫌いよ!」
……え? まじで? あれほど本にかじりついてたじゃないか!?
困惑するフィリップスへ、クラリスは手をひらりと振った。
「お気遣いは無用。――で、婚儀までに私がしなければならないことは?」
すっと表情を王女のものへと切り替えると、フィリップスもまた側近の顔に戻り、
二人はそのまま打ち合わせへと入っていった。




