変わった王女、揺れる王子
フリードリヒはランズ王国の第2王子である。
第1王子アルフレッドは、まさに“エリート”を絵に描いたような王子。
第3王子ヨハネスは、自由奔放で縛られることを嫌う性質だった。
誰がどう見ても、王太子となるべきはアルフレッド――それは周知の事実。
それなのに、立太子したのは第2王子であるフリードリヒだった。
理由はただひとつ。
フリードリヒだけが“正妃の産んだ”王子だからだ。
好きで正妃の子として生まれてきたわけではない。
幼い頃から、王宮に渦巻く三つの派閥争いを見せつけられ、
自分の意思とは関係なく事が進んでいく現実を、何度も思い知らされた。
反発したところで意味は無い――そんなことは理解していた。
それでもフリードリヒは、できる限りの反発を繰り返し、距離を取って生きてきた。
それでもなお、立太子したのは“正妃の息子”であるという一点によるものだった。
「――どうであった?」
私室の扉が乱暴に開き、なだれ込むようにテオドールが入ってきた。
フリードリヒが視線を向けると、テオドールは心底うんざりしたような顔をしている。
「どうもこうもないよ。言いたい事だけ言って、お前逃げただろ?」
「別に逃げてはいない。用が済んだから退室しただけだよ。で、王女は?」
テオドールは深いため息をつきながらソファへ沈み込む。
「納得……とまではいかないだろうが、婚儀までのスケジュールを丁寧に確認してたし、
王太子妃としての自覚は問題ないだろうな。……いやしかし驚いた。
あの“鉄パンツ”の本の虫が、えらく変貌していたじゃないか」
フリードリヒは興味なさげに肩をすくめた。
「まあね。見た目だけは、ね? 中身はどう見ても執念深そうだろう? やれやれだ」
そう言うと、フリードリヒはこれから始まる忙しい日々を思い、
憂いたように瞳を閉じた。




