11 勢いって怖い。
やってしまった。やってしまいました。
目のハイライトが消えた柏木さんから一日でも離れたかったために、元に戻る薬を勢いで飲んでしまいました。大変反省しております、申し訳ございませんでした。後悔しているし反省もしております。
自分がやってしまったことに罪悪感を、かなり抱き自分に言い訳をしていく千夏。千夏氏は―柏木さんが怖かったから、ついやってしまいました。―と容疑を認めており――。と言い訳しているうちにふざけられるまで回復した。
両親はもう、次の日に性別が変わっている息子に慣れたのか、特別驚くこともなく流れるように学校へ休みの連絡をしている。薬を試すのは休日の時と決めていたのだが、昨日は気が動転していて、つい使ってしまった。
まあ後悔していては前に進めないので、忘れることにする。さて今日は何をしようか。よく勉強して、たまにゲームして、後は…柏木さんに連絡でもしておくか。
そんな予定を守れるはずもなく、ゲーム八割勉強二割。俺に真面目という言葉は通用しない!! なんつって。だが、勉強をサボるのは良くないぞ。赤点をとって夏休みが潰れた俺の話でも聞きたいか?(遠い目)
QUESTCLEAR
と赤い文字で書かれた画面を横目みながら、スマホを見る。開かれているのは柏木のトーク画面。千夏は何かを書いては消し、また書いては消しと、恋する乙女のようなことをしているが、千夏の抱く感情はそんなものではない。
(あの事件が起きた後に会うのは気まずくてしょうがないし、何より相手に″自分に関わらないで下さい″なんて豆腐メンタルの俺に言えるわけないじゃん。何だ、俺に死ねと言うのか。会うたびに気まずくなって精神がごりごり削られていく想像が俺にはハッキリと見える。あー!分かんねー!!)
心の中で叫びに叫ぶ千夏。そのせいか新しいクエストは失敗していた。千夏が柏木にメッセージを送るまで、あと一時間はかかりそう。
……おや、千夏の様子が?
どうやら無事送れた様子。そして、キッパリと、「今後好きになる可能性は無いのでもう今までのような行動はやめて欲しい」
と送った。そして既読のついたまま時間が経つ。その時間は遥かに短かったが千夏にはとても長く感じた。
返ってきた返事は『分かった、好きになってもらえないのは悔しいけど、諦めるとするよ。今までありがとう』と。予想よりもあっさりと身を引いたので少し驚愕しつつも。
『こちらこそ、今までありがとう。楽しい時間を過ごせました』と返した。
翌日、彼は本当に来なかった。毎日来ていた彼を見ていた友人たちは「もしかして別れた?」とひっきりなしに聞いてきた。最初っから付き合ってないっての。
千夏に毎日訪れていた柏木がいなくなったことで、俺たちにもチャンスがあるかもしれないと、ここ一ヶ月止んでいた手紙の山が下駄箱に復活するのはまた別の話。




