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目覚めたら美少女でした!?  作者: 二度と離れぬ毛布
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8 今まで通り。

「んー……」


 寝返りを打ったとき、数日は感じていた髪の感覚がない。もしかして戻ったかも。確かめるため鏡を見にふらふらと洗面台へ。寝惚けなまこで自分の姿を確認する。


「あー。戻ってる…戻ってる!!」


 顔を思い切り鏡に近づけ、何度も自分を確認する。やっぱり男の自分だ。素直に喜ぶ千夏だが、課題は残されている。学校には行けない、転校したということになっているからだ。


 喜んでいる場合ではないと気づいた千夏は母に相談に行く。学校は恐らく休むことになるだろう。そうなって欲しい。


「母さん、母さん、起きて」

「…………」


 千夏が起きたのは早朝5時。母は普段六時頃に起きているので今の時間は寝ている。揺さぶって起こそうと、しばらく頑張ってみた。数分は揺らした気がする。起きる気配がして、声をかける。


「母さん、大変なんだ。母さん」

「………? あぁ千夏。どうしたのって、あら戻ってるじゃない」

「そうなんだよ、それでさ」

「その話はリビングでしましょう」


 確かに寝室でする話でもないか。大人しく母さんについて行く。母さんは凄く朝が弱く、体のあちこちをぶつけている。見ているこっちが痛くなるくらいに。朝早くにごめんなさい。心の中で謝っておく。


「それでさ、今日学校行けなくない? この体じゃあ」

「転校ってことになっているから、うーん、今日はちょっと休みましょうか。手続きをしっかりしてくるから、家のことしといてね」

「はい」


心の中でガッツポーズ。家のことをやるのはめんどくさいが、まあいいか。母は学校に連絡をいれ、父を起こしに行った。千夏は朝食を作りにキッチンへ。今日は和食のようだ。


 朝食を作り終わった千夏は机に料理を並べ、家族揃って食べた。

皿を洗い終えて、家の隅々まで掃除して、片付けて。その様子は主夫のようだった。


一通り終えた千夏はゲームをする。定位置に座り、コントローラーを握り、画面に集中する。


「…………はっ! まずい、夕食の準備が!」


 昼食は父は職場で、母は親友とランチに行ったので用意してない。時間を忘れ、ゲームをしていた千夏は急いで近くのスーパーで買い物をしに行った。


 今日のメニューは何にしようか…。食品のコーナーを回りながら考える千夏。和食にするか、洋食か。


 野菜の値段を見て唸っていると「うわっ!」と迷惑なほどうるさい声が耳に届く。


「あれ千夏!? おまっ戻ってたのか」

「光樹。裕貴さんに戻してもらったんだ。全く、迷惑な話だったよ」

「俺のいない間にあっさりと解決してんのかよ。てかそういうことは伝えてくれって。いきなり学校休みで心配したんだぞ」

「すまん。だけどこれからどうすんのかわからないんだよね。学校行けないし」

「まあ、お前の母さんが何とかすんだろ。謎に顔広いし」

「そうだな、じゃ、また」


よし、今日は和食にしよう。パパット終わらせ家に作りに戻る。

あれ? 自転車で足がつかない。来たときはついてたんだけど。気のせいか。


□ □ □


「やっぱりなんか色々小さい……?」


背が小さい。手も小さい。何で。裕貴に苦情を言いに行こうとした千夏だがもう空は暗く、外に出歩くには遅い時間だ。明日言うしかないか。


適当に用事を済まし、寝る。戻すならちゃんと戻してくれよと裕貴さんへ苦情を枕に込めて。


□□□


朝起きて その目に写る 丘二つ

強い既視感 酷く絶望


 何故、何故こうなった。


 鏡で確認した千夏は膝からくずおれる。戻ってやがる。薬を飲んだはずなのに、何故。家族に事情を話し、裕貴さんへ直接苦情を言いに行こうとしたが、早朝だったため、止めざるをえなかった。


「何でまたこうなったんだ。二度と見ないと思っていたのに」


 髪を一つに束ねながら文句を垂れる千夏。メールで京花と光樹に知らせつつ、学校へ行く準備をする。裕貴への怨みはあとで告げることとした。


 いつもより長い時間をかけて朝の支度を全て済ました千夏は玄関で、爪先をトントンとし、扉を開け学校へ。


 普段通りの景色。しかし、ちらちらと見られているような気がしないでもないような。自意識過剰か。そこら辺の店で時間を確認した千夏はペースを変え、全力疾走した。遅れる!!!


「はぁ、はぁ、はぁ。間に合った」

「知世ちゃん大丈夫?」

「だい、じょうぶ。ありがとうあこちゃん。遅れそうになったからちょっとね」


何とか間に合った千夏だが、久しぶりの全力疾走で息が上がっているところをあこちゃんに心配され、大丈夫と微笑みかける。五分十分走っただけなのにこんなに疲れるとは。


頬を紅潮させ、髪を耳にかけたり、友人に微笑みかけたりする姿は、誰かの心に刺さったり刺さらなかったり。


午前中の授業が終わり、お昼休みの時間。性転換しても頭脳は同じの千夏は、ライフがもう残っていない。嫌いな教科ばっかりとか嫌がらせですか。


「大丈夫知世?」

「大丈夫じゃない。助けて京花…全然わからん」

「教科書読めば大体わかるわよ。一緒にお昼食べましょ」

「了解。あ、そういえばさあ、今日裕貴さん家に居る?」

「ええ、特に予定はないみたいだから」

「ありがとう。さて、弁当食べますか」

「ええ――あら、どうしたの?」


クラスの女子四人組が弁当を持ってやって来た。まさかこれって一緒に食べるイベントか。ぼろが出そうで怖い。あこちゃんたちの時は何とか行けたんだが、どうだろうか。


「知世ちゃんと一緒に食べたくて…いい?」

「は、はい。どうぞ」

「ありがとう!!」


 この後はもう、想像がつくだろう。緊張でガチガチになる俺をクスっと京花が笑う。仕方ないだろう。何とかおかしくないレベルで終わらせ、午後の授業へ臨んだ。


「千夏、午前と違って目が輝いていたわよ」

「好きな教科だったからな。当たり前だろう」


 帰り道。辺りに人がいないので、普段通りに話す千夏たち。裕貴に事情を説明してもらうため、行き先は京花の家。裕貴さんに一発殴るくらいは許されるか…?


 裕貴さんの部屋をノックし、返事が帰ってきたところで部屋殴りこむ。

 俺の姿をみた瞬間固まり、信じられないような目でこちらを見る。


「戻らなかったのか?」

「ああ、どういうことですか」

「俺だって聞きたいよ。まさか薬が効いてない?」

「いや、一日は戻りました、色々小さかったですけど」

「色々小さい? そんなはずは…。ごめん千夏君、しばらくはその状態でいてもらう。俺だって分かっていないから」

「え。裕貴さんは戻れたんですよね?」

「そうなんだけどな。すまん。少し調べる」

「お願いしますよ」


しばらくは戻れそうにない。残酷な事実を突きつけられ、この体で楽しめることを探そうと逆にポジティブになる千夏であった。

今回も読んでいただきありがとうございました。通学中の視線は決して自意識過剰なんかではない。

次回も読んでいただけると幸いです。

ブクマ等、ありがとうございます。こんなにいただけるとは思っていませんでした。

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