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俺たち異世界大発見伝  作者: カネシロ 
第1章   『冒険者』編
9/33

第9話   『異世界での1週間』

 初めての戦闘と勝利の後、オリジナへ戻り、本部で依頼報酬を受け取ることにした。

 


 どうやら討伐の証拠品などは必要なく、依頼を受けた時に冒険者のステータスプレートを特殊な魔法装置で登録しているので、またそこにステータスプレートを入れれば討伐状況が確認出来るようだ。



 また、戦闘で手に入れた戦利品の所有権は討伐冒険者に帰属するので、俺たちはゴブリンの野営地跡から探して見つけた鉄硬貨22枚、銅硬貨4枚を手に入れた。


 綺麗に分けるのも面倒なので、俺たちのパーティーの共有財産として、俺が管理することにした。

 早速、夕飯の時に祝勝記念として、その共有財産を使うことにしよう。



 そして、職員さんからパーティー登録を勧められた。


 どうも冒険者をパーティー登録して、パーティーでの戦績を上げると、パーティー宛に直接依頼が舞い込んだりするらしい。

 名声を上げれば上げるほど依頼や活躍の幅も広がるわけだ。



 早速登録することにしたが、パーティーの名前が決まらない。

 何せそういう時はみんな好き勝手に提案し合うものだから、方向性がバラバラだ。



「これは『仲良し6人ズ』だよ!晴花たちの仲良しは無限大!」

「いや、それダサすぎだろ・・・。ここはあれだな、『マスター・オビリオン』だな!」

「リキのネーミングセンスも中々ひどいわね。ここは『3女神と3執事』にするわよ。」

「光ちゃんは色々酷いよ・・・。」

「私は、『異界6聖人』、がいい。」

「カッコいいけど、恥ずかしいよ・・・。」



 幹夫以外は案はあっても内容が壊滅的だ。

 

 どうしようもなく酷過ぎる。

 

 かと言って俺には案がないし、幹夫も特に考えてはいないらしい。



 するとどこからともなく現れたミシャさんが提案してきた。

 ホントにどこにいたんだこの人。



「皆さんは火炎系の魔法を好んで使ってらっしゃるようですから『フレイムズ』でどうでしょう?」



「フレイムズ」・・・。

 

 これもみんなと同じくらいのネーミングだな・・・、と思いきや急に俺以外の5人が賛成の声を上げ始めた。



「・・・ほほう!いいじゃんいいじゃん『フレイムズ』!リーダーのノブも戦闘中はあっつくて仕方なかったし、似合ってるわよ私たちに!」

「だな!俺の剣も炎が一番似合ってるわ!」



 といった感じで決定してしまった。


 「フレイムズ」。


 まぁなんとなくしっくりくるしいいか。

 

 しかし、あれだな。

 何でミシャさんは俺たちが火炎系の魔法をよく使ってたことを知ってるんだ?

 幹夫に相談したら、きっとステータスプレートからの読み込み情報を見たんじゃないかな?とのことだった。

 


 うん、確かにそうだな。

 アテンダの活動と権力の幅は広いらしいし、頷ける。


 俺たちは本部をでて祝勝パーティーとして晩飯を盛大に食べ宿に戻った。



 宿に帰るとドッと疲れがたまってくる。

 生まれて初めての命のやり取りだ。

 疲れない方が無理がある。

 見れば幹夫も疲れ果ててベッドにうつ伏せになって休んでいる。


 

 ちなみに力雅は晴花とともに「街の探検!」に行った。


 普段、力雅は晴花のツッコミ役だっただけに忘れていたが、力雅も元々はこういう探検とかが大好きだったのだ。

 あの2人のパワーは底なしか。



 しかし、この世界、居心地はとてもいい。


 刺激的で、活き活き出来る。


 最低でも夏休みの間はずっとこの世界で遊んでいたい。

 そして、まだまだこの世界は広く、訪れていない場所も多い。

 未知なる生き物が、土地が、待っているのだ。


 ベッドに仰向けになりながらそんなことを考え、溢れて来る楽しみと、訪れた睡魔に身を任せ、俺は夢の世界へと落ちていった。





・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・





そこは白い花の咲き誇る丘。




見渡す景色一面は花だけで、空は白く、淡く輝いている。




足は止まることを知らずに動き続ける。




意識に意味はない。




認識することが大切なことではない。




{君は、どの道を取る?}




空の輝きが揺れ、声が反響する。




{この世界は回る。回り回って最後には戻る。}




意識が鈍り、声が遠ざかる。




{訪問者、君の取る道は、どれだ。}




・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・





 朝、目が覚めると軽い頭痛がした。


 きっと水も取らずに寝てしまったからだろう。


 ふと、横を見ると幹夫と力雅はまだベッドで眠っているみたいだ。

 日の光もまだ薄く、どうやら想像以上に早起きしてしまったらしい。



 しかし、何か変な夢を見ていた気がする。

 俺はそこで何をしていた・・・?

 ・・・思い出せない。


 まぁありがちなことで、こういう夢は大抵が忘れてしまうものだ。


 俺はまたベッドに潜り、朝の音が聞こえて来るまで浅い眠りを繰り返した。



 迎える異世界での生活3日目。

 3日目にして俺たちはすんなりと溶け込んでしまった。

 

 言葉も通じるし、大体の状況もミシャさんの説明で理解してしまい、ヒト種以外の種族もそこらじゅうで見るため、すぐに見慣れた。



 そしてこの1週間、俺たちはオリジナで冒険者、そして異世界の世界を満喫した。


 

 朝、宿で朝食をとった後はすぐ本部に行き、依頼書を探す。

 本部は24時間ずっと稼働しているので、逐次依頼が入ってくる。


 取りあえず、この1週間は初級モンスターを討伐することに全力だった。


 討伐した初級モンスターは「ゴブリン」「フレイムリザード(火吹きトカゲ)」「ジャイアントラット(巨大ネズミ)」「土人間」などなど、特徴的な奴らばかりだ。

 


 俺のイメージだと初級モンスターの代表格と言えばスライムだったが、スライムはいないんですか、と職員に聞くと顔を青ざめながら否定された。


 どうやらこの世界のスライムはサイズが異常にデカいものばかりで、その特性から高レベル冒険者にのみ討伐依頼が出されるらしい。

 なんと・・・・。



 初級モンスターも日替わりで違うモンスターを討伐していたため毎日がひやひやの連続だった。


 一応「冒険者支援協会図書」という建物に様々なモンスターの性質や弱点、他にも地域の説明など多くあったおかげで、最低限の情報を林が仕入れていたが、「土人間」などは初発見モンスターで、倒しても倒しても新しい土人間が出てきて非常に苦労した。


 どうも毎日のようにポコポコ新種モンスターが誕生するらしく、図書だけをあてには出来なかったようだ。



 スキルは新しいものを覚えず、最初に覚えたものを研鑽することに専念した。


 すると晴花の雷撃魔法「びりびりサンダー(晴花の勝手な呼称)」は2つに分かれるようになり、1度の攻撃で2体の敵を攻撃できるようになったりと、それぞれ目覚ましい成長をしていった。



 採取関係の依頼もあったが俺たちは何より活動的に冒険者をやりたかった、というだけでモンスター討伐依頼を探しては受け、探しては受け、の繰り返しだ。

 

 もちろん、1日に何個も討伐依頼を受けようとした。


 ただ、オリジナの街自体が大きく、郊外の討伐モンスターの所まで距離があり、オリジナ内で魔法運輸を使っても時間がかかる。

 それに駆け出し冒険者な以上、金銭的な余裕がないため、移動に金はかけられない。


 結局徒歩による移動で依頼の場所まで行くので、1日に受けれる依頼は1つになる。

 1日1つの依頼だと時間は微妙に余ってしまうのだが、これはどうしようもない。



 なので、基本は朝からおやつの時間帯くらいにかけて依頼をこなし、残りは自由時間。

 夕飯で集まる時間まで各々好きなように過ごすことにした。


 といっても大体2人~6人で街を散策する。

 この世界どころか、街1つ良く知らない現状だと1人だとやはり危ないかもしれない、ということでだ。

 それに知り合いがいないのはやはり心細い。



 この自由時間でオリジナの街を散策した。

 

 先ほど述べた魔法運輸でオリジナの端から端に移動したりして、中を見て回る。


 魔法運輸とは空を走る電車みたいなものであり、「魔動石」によって空を浮くトロッコのようなものが連結して指定の場所を走る。


 街おきに設置されているらしいが、街の間では開通していない。

 一度、実験的に魔法運輸を街間で通したところ、モンスターに襲われる、襲われる。

 自然発生するモンスターにまで狙われる始末で、どうにもならないため、安全が確保された街の中のみ通っている。



 この1週間、自由時間に6人全員で行動しない時は俺と光、幹夫と林、力雅と晴花という3つのグループ分けで行動することが多かった。

 何でも「女の子を守るのは男の子の役目!なんだよ!」だそうだ。

 晴花がそれを言うんだから正直参ってしまうもんだが。


 光と歩いているとよく光の入りたい店に連れまわされ、その度に物をおごらされた。


 財布の中身がドンドン減っていく代わりに、光は上機嫌だ。

 これ、傍目から見れば単なるデートだろう。


 店員にもカップル割引とか言われて、困ったものだ。

 光とは付き合っているわけじゃないし、光も特別そんなことは意識していないだろう。

 なんだか俺だけ気にしているみたいで恥ずかしくなり、その度に恥ずかしさを 誤魔化すために光におごってしまう自分が情けない。



 幹夫も俺と同じく林に引きずり回されたようだ。


 そこは流石、双子の姉妹と言った所か。

 ただ、光とは違って2人でお金を折半しあってたようで、そこが羨ましい。


 幹夫は最初、どうも晴花と行動したがってたようだが、晴花が「力くん!行くよー!」と力雅と共にどっかにいってしまうため、諦めて林と行動したようだ。

 だが、途中から幹夫も林と一緒に楽しそうにしてるのを見て、そこは安心し

た。



 晴花と力雅は恐るべきことに、オリジナを全て回りつくしたようだ。


 前、光とカフェのようなところで休んでいたら、晴花と力雅を見つけたが、これがなんとも恐ろしい。


 晴花がいつもの如く突っ走りのボケ、そして力雅がツッコむという漫才をここでも披露していたのだ。


 周りの温かな、子供を見守る視線に気付かずに2人は楽しそうに歩いている。

 あの2人組を見つけた時、光と俺は苦笑いをしながら全力で知らないフリをしたものだ。

 あれは、この異世界でも異端なのではないだろうか・・・。



 こうして1週間はあっという間に過ぎた。


 戦いで怪我を負っても林や光の回復魔法により痕を残さず完治出来るし、大怪我も負うことは無かった。


 そして、4日目の討伐モンスター「土人間」の討伐報酬のおかげで、飯も毎日三食満足にありつけた。


 

 変わったのは心と体、だろうか。


 元の世界にいた時よりも大分成長できた気がする。

 親や大人の庇護のない世界で自活する、成長するのも納得だ。



 俺たちはこの世界に入った日より1週間経った今、一回元の世界に戻ることにしていた。


 昼に荷物をまとめ宿の主人に礼を言い、宿を出る。

 恰好は入ってきた時のハイキング用の格好に着替え、オリジナの街を出る。


 ミシャさんに引き止められたが、また帰ってくることを告げ、神殿を向く木製の門を開いてもらう。



 一応、装備一式は「冒険者支援協会預処」にお金を払って預かってもらったが、それぞれ武器だけは手にする。


 神殿までの道のりで襲われるかもしれないので念のため、だ。


 しかし、行きと同じく襲われることは無く、神殿への道は開かれたままだ。


 森の木々には俺たちが最初に歩いた時に目印として付けた赤い布が何枚か、まだ巻いてあった。


 ふと懐かしさを覚える。

 1週間、早かったんだな。



 1時間ほど歩いたところで神殿に辿り着き、この異世界を、オリジナを眺める。

 思えば結構近いところにあったのか。

 細かく観察すれば、見えてくるものもまた違ってくるのだろう。



「また帰ってくるからねーーー!!!」



 晴花がそう叫び、俺たちは一抹の寂しさを抱えながらも、俺たちの世界へと戻っていった。




「ふぅ・・・、無事に戻ってきたな。」



 安心感を身がつつむ。

 うん、やはりわが身知ったる世界だな。

 日が傾き、空の色は橙から黒に変わりつつあった。



 早く帰らなければ親も心配するだろう。


 何せ1週間も子供と会ってないのだ。

 今か今かと待ち望んでいるに違いない。



 また、明日の朝、すぐにこの洞窟前で集まることにした。

 しかし、毎日通っては帰り、通っては帰りだと手間がかかるので、旅行に行くとか適当なことを言って今回みたいにまとめて時間を取れるようにしたい。

 

 俺たちは異世界の話題で盛り上がりながら小山を下り、途中で別れ、家に帰って行った。



 洞窟を出た時の腕時計の針は、1週間前と変わっていなかった。



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