できていたコネ
一時期魔女狩りなどによって魔術の存在そのものが危険視された外国と違い、日本における陰陽道とは良くも悪くも象徴的なものだった。
政など、時の権力者などには信頼され、排斥とは逆の道をたどっていたのだ。
無論科学の発展などによってそれらが徐々に廃れていったとしても、現代に至るまでに今の魔術に限りなく近いほどに発展を遂げているということは一族、あるいはその分家などが研究を重ねて今の形に至ったと考えるのが自然だ。
ならばどこかにそういった記録が残っていても不思議ではない。
「よし、いいこと聞いたぞ。ベル、俺は四法都連盟に連絡とってみる。話が聞けるようになったら報告するよ」
「わかったわ。私はどうしようかしら・・・今のところ取れる手段なんてあんまりないし・・・じゃあ支部長、その話にあった魔術の歴史書っていう報告書を読ませていただいてもいいですか?何かしら別の手がかりがあるかもしれませんし」
「構わないよ。奥の書庫にしまってあるから確認してみてくれ・・・それとブライトビー、一応言っておくけど、四法都連盟にあんまり迷惑はかけないでくれよ?」
いくら康太と四法都連盟が個人的な、師弟関係などに連なる取引の相手だとしても一応康太は魔術協会の人間だ。
もし康太が何か面倒を起こそうものならば当然そのしわ寄せは協会そのものに、引いては支部長に襲い掛かってくる。
「わかってますよ。礼儀正しく、問題は起こさないように話だけを聞きに行くつもりですから」
「・・・それならいいんだけれどね・・・」
いくら康太が話の通じるタイプの相手だからと言って油断はできない。何せ康太は良くも悪くも小百合の弟子なのだ。
小百合の恐ろしさと面倒くささは嫌というほどに知っている支部長からすればその弟子の康太も少しだけではあるが危険視するべき存在なのだ。
無論康太が小百合のような傍若無人な人間ではないことは理解しているのだが万が一ということもある。
くれぐれも頼むよと言い含めながら、支部長は不安そうにため息をついていた。
康太は一度支部長の部屋から出ると携帯で連絡を取っていた。相手は土御門晴、かつて京都に行った時に知り合った土御門の天才双子の片割れである。
『はいもしもし、康太さんですか?』
普通に話しているつもりでも出てしまう若干のなまりに康太は少しだけうれしくなりながらも話を先に進めることにした。
今は関西弁を楽しんでいる場合ではないのだ。
「あぁ、久しぶりだな。今電話平気か?」
『えぇ平気ですよ。どうしたんですか?急に電話なんて。何かありましたか?』
「うん、実はちょっと聞きたいことがあってな。魔術に関してのことなんだけど・・・」
康太はひとまず自分の今の状況を説明し、魔術の原点でもある現象から発動するタイプの魔術についての技術について何か知らないかと話を切り出した。
千年以上続く陰陽師の家系ならば何か知っているのではないか、何か伝承が残っているのではないかと期待を混ぜてそう聞いたが、電話の向こう側にいる晴は難しそうな声を出している。
『んー・・・俺はそういうのは聞いたことないですわ・・・うちの親とか・・・あるいは爺様とかに聞いてみれば何かわかるかもしれんです』
「そうか・・・電話でそれを聞くのもあれだからちょっとそっちに行ってみてもいいか?」
『え!?今からですか!?』
「いや今からはさすがに・・・そっちの都合のいい時でいいよ。話を聞きに行くってのにそっちの都合を無視するのは嫌だからさ。だからそっちの・・・土御門のお偉いさん?にそういう話を聞けそうな人がいたらちょっと話を通しておいてほしいんだよ」
少々いきなりすぎたかと康太は申し訳なくなりながらも晴からの返答を待つと、帰ってきたのは康太が思っているよりもずっと良い返事だった。
『構いませんよ、前にうちの騒動に巻き込んでしまった恩を返すいい機会です。うちの上の人間に話は通しておきますわ。都合がよくなったらこっちから連絡入れればいいですか?』
「あぁ、頼む。ごめんな、いきなりこんなこと頼んで」
『気にせんでください。あ、ひょっとしてまたお師匠さんや兄弟子さんと一緒に来られるんですか?』
「いや、今回は俺の同盟相手と一緒に行こうと思ってる。俺の同級生、前にあったことあるだろ?」
以前康太たちの高校の文化祭の時に京都の双子は文と遭遇している。そういう意味では説明が楽でありがたい限りだった。
晴も文のことを思い出しているのだろう、あぁあの人ですかとつぶやきながら納得した様子だった。
『了解です。それじゃあ話してきますわ。それとお願いなんですけど、今度こっちにいらした時また稽古つけてもらっていいですか?』
「あぁ、構わないぞ。せっかくだから俺の新装備も持ってくよ。まだ練習中だけどな」
『そら楽しみですわ!では伝えてきますんで、失礼します』
「あぁ、よろしくお願いします」
康太はしっかりと頼み込んで通話を切る。晴と会うのは実に久しぶりだなと思いながらも、康太は京都に行くのが少々楽しみになっていた。
ついでに誰かも連れて行こうかなと考えながらも、誰かを連れていくとその分問題が起きそうだなと頭を悩ませていた。
真理を連れていくのは問題なさそうだが、彼女にもいろいろと都合がある。年度の変わり目は特に忙しいはずだと悩んでしまっていた。




