教えてアリス先生
「教えて!アリスせんせー!」
「はーい、今週もアリス先生とこの世の不思議について学んでいこうね!・・・乗ってやったのはいいんだがいったい何だこれは?」
「いや何となく・・・というわけでアリス先生。今日は世の中にはびこる『心霊現象』について教えていただきたいと思います」
「教育番組なのか情報番組なのかはっきりしてほしいのだが・・・」
康太の雑なふりにもしっかり反応できるだけアリスも現代に染まってきたというのは康太にとって喜ぶべきことなのか、それとも嘆くべきなのか。
少なくともこのノリはアリスも嫌いではないのか地下においてある炬燵の中でぬくぬくと温まりながら康太に茶の入った湯呑を差し出してくる。
「えぇと・・・心霊現象だったか?また唐突だな。いや、そんなものを宿しておいていまさらというべきか?」
「まぁそれはごもっともなんだけどさ、実際のところどうなの?幽霊っているの?」
康太の事情はさておいて、まずは結論から話してもらうことにした。おそらく多くの人物が気になっているであろう幽霊の存在の有無。それがどのような結果でも康太はそうなのか以外の返答はできないのだがとりあえず気になることは間違いない。
長年生きてきたアリスならばその答えを持っていると信じ、康太は身を乗り出す。
「ふむ、そうだな・・・結論から言えば・・・いる」
「おおおお・・・そうなのか・・・でもそれって本当に幽霊なのか?人間の魂魄的なものが体から出てくる的な?」
「いいや、そういうものではない。魂だけが体から出てきた存在が幽霊というのであれば幽霊は存在しない」
「えぇ・・・?どっちなんだよ」
いると言ったりいないと言ったり、矛盾が生じているアリスの発言に康太は眉をひそめながら淹れてもらった茶をすすり始める。
実際に幽霊がいるのであればそれはそれで面白いし、いないのであればそれはそれで面白い。
どちらに転んでもいろいろと想像する余地が生まれるだけに考えが広がるのだ。
だがアリスの考え的には、定義によっては幽霊の存在を否定することにもなるらしい。そのあたりが気になるところだった。
「うむ、では説明していこう。まず心霊現象とは何か。曰く金縛りだったりポルターガイストだったりといろいろと物理的な影響力を持っているものであるということは多く知られているな。心霊写真然り、映像などにも入り込むことができるような描写もよく見られている」
中には眉唾なものもあるがなと言いながらアリスはフリップの代わりに空中に魔術で映像を作り出して漫画などでもよくみられるありきたりな幽霊を発生させる。
こんな雑な幽霊を見せられても最近の子供は全く驚かないのだろうなと思いながらそのまま説明を聞くことにする。
「さて、先ほど私が言ったように、魂という存在が人間にはあって、それらが体から飛び出したことによって生じるのが幽霊ではないか、康太はそう考えているのだな?」
「うん、それ以外ってなくね?霊魂だっけ?魂魄だっけ?どっちだったか忘れたけど普通に・・・こう、魂的なものがふわっと出てくるもんだとばかり」
「うむ・・・まぁ一般的な考えはそうであるらしいな。ではまず答えから発表していこうか。お前たちが霊魂だと思っている存在、それは精霊の一種だ」
「・・・おぉ・・・?そうなのか?」
康太の微妙な反応にアリスは少しだけ残念そうにしていたが、とりあえず説明を先にしたほうがいいなと思いながら大まかにではあるがこの世界を表現した映像を作り出す。
陸があり、海があり、雲があり、人々が住んでいる場所がある。本当に大雑把なこの世界の構成図だ。
「精霊というのはこの世界に存在している自然エネルギーの象徴だ。それらがマナの影響を受けて意志を持ち、ありとあらゆる場所に存在している。そのくらいはコータも知っているだろう?」
「・・・あー・・・なんかそんなことを言われたことがあるようなないような」
康太は精霊のことを大まかには知っていてもその詳細な情報は知らないのである。最近では魔力の供給やらを手伝ってくれる属性専門のお手伝いさん感覚でしかなかった。
しかも康太は精霊をその身に宿していないためにさらに精霊に疎い。
精霊の正式な出自だとかそういったものも知らないのだ。むしろ今初めてまともにそのことを聞いたような気さえしてしまっていた。
「まぁそういうものなのだと覚えておけ。さて、では幽霊の原因がなぜ精霊なのか、そのあたりから進めていこう。精霊というのは良くも悪くも好みが激しい。環境だけではなく人の感情や行動などにも強い関心を示すのだ」
アリスの説明に康太はうんうんとうなずいている。本当に理解しているかどうかはさておいて、とりあえず説明を進めるべくアリスは映し出していた映像の中に精霊と人間を作り出す。
するとその中にいた人間が急に苦しみだし、もがきだした。
「精霊の中には人間が苦しむところが好きだったりするものがいてな、そういった精霊がそういった感情を持っている人間に憑りつくことがある。何も知らない人間の中にいきなり精霊が入ってきたら、そりゃ寒気やらも覚えるだろう」
「・・・じゃあ幽霊イコール精霊ってことか?ポルターガイストとかその声とかも?」
「たいていはな。その時の感情や現象を再現することで精霊は楽しむことがある。あとは・・・まぁこれは少々特殊なので説明は省くか」
アリスが説明を終えようとするが、康太の目はそのまま説明してくれと言っている。アリスはため息をつきながら空中に映し出している映像を切り替えた。




