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「なんとも師匠らしい・・・でも今回はその方法は使えませんね」
「そうだな。奏姉さんの持ち物ということで傷をつけるのもはばかられる。あとはお前の裁量次第だ。一カ月の間いなくなるということはお前の親にも伝えたか?」
「一応それらしく伝えてはおきましたよ。とはいっても暗示がなかったら絶対納得してないでしょうけど」
まぁそうだろうなと小百合は自分が聞いておいて興味なさそうに適当な返事をする。
未成年が外泊するだけでもいろいろと理由が必要な状態だというのに、一カ月も家を空けるなどと正気の沙汰ではない。
康太もだいぶ一般人に対しての暗示がうまくなったとはいえ、やはりどうしてもこういう形での半ば強引な発動になってしまう。
仕方がないといえばそこまでなのだが、やはりもう少しうまく暗示をかけられるようになりたいと考えていた。
「まぁ奏姉さんのことだ。最低限の手は回すだろう・・・問題なのは同棲のほうよりも幽霊?のほうだな」
まだ幽霊とは確定していないとはいえ、一応何件か報告が上がる程度には高い頻度で発生している心霊現象なだけに解決できるかが正直不安であった。
何せ魔術にかかわってきたことはあってもそういった心霊現象にかかわったことは一度もないのである。
テレビなどで心霊現象特集などがよくやっているが、魔術を覚えてからは本格的に信じることができなくなっていた。
実際に悪霊もどきに憑りつかれている身としてはテレビなどで放映されているあの光景がうそっぽく思えてしょうがないのである。
「師匠はそういう心霊現象の原因ってわかりますか?かかわってきたんですよね?」
「かかわったからと言ってそれらの原因を知っているわけではないぞ。そういうのは私よりもずっと聞くべき相手がいるだろう」
「アリスですか?あいつに幽霊のこと聞くのもなぁ・・・真っ向から否定しそうですよ」
「どうだろうな。案外怖がるかもしれないぞ?」
幽霊を怖がるアリスというのも見てみたいところではあるが、魔術的な観点から見る幽霊の存在の有無について一度アリスと語ってみるのもいいかもしれない。
少なくとも今回の件についてそれなりに有力な証言になることは間違いないのだ。
「ところで、仮に初日にその心霊現象の原因を解決したとして、二人とも家にすぐに帰ってくるのか?」
「いいえ、一応観察期間っていうか用心して一カ月は住む予定です。逆に言えば何があっても一カ月は出られません」
「そうかそうか、せいぜい呪い殺されないように気をつけろ」
現在進行形で呪われているようなものなのだが、康太としては非常に複雑な気分になってしまう。
実際に幽霊がいて、呪いや祟りなどの超常現象を起こしたらいったいどうなるのだろうか。
そういった疑問が康太の中にある。
康太自身が幽霊の存在を信じていないからなのだろうが、どうしてもイメージができなかったのだ。
金縛りも一度も体験したことがないし、見えない何かに手足を掴まれるということも遠隔動作などの魔術以外では一度もない。
仮に今回のことで何かにつかまれたとしても、何者かから攻撃を受けているのではないかと勘ぐってしまいそうである。
「一応お祓いとかの道具を持っていくか?お札などであれば一応用意してあるぞ?」
「え?そういう道具この店にあったんですか?」
まさか小百合の店に霊媒用の道具があるとは思わなかったために康太はどの道具だろうかと地下においてある道具を思い出しながら少しワクワクしていると、小百合は地上の、表部分にある店の一角から一つの箱を持ってくる。
何かの木で作られた箱のようで、その中には酸化してしまい変色した紙切れがいくつも入っていた。
その紙には何やら文字のようなものが書かれているのだがそれを読み解くことは康太にはできなかった。
「ほれ、たぶんお祓い用のお札だ。とっておいてよかった」
「ってそれ明らかに表の店の物でしょ。そんなザ・パチモンみたいなお札いりませんよ。捨ててください」
「失礼な奴だな、これも立派な商品だというのに。まぁ役に立たないという意味では間違いないのだろうが」
小百合の店の地上部分にある店に置いてあるものはほとんどが魔術にも何も関係していないただのガラクタだ。
あくまで外見上それっぽいものが多いために、一種のオカルトショップ、あるいは悪趣味なインテリアショップととれなくもない。
そんなところにおいてある商品が本物のはずがない。確か一つか二つ、魔導書の類があったような気がしたが少なくともあの札は本当にただのガラクタ、あるいはそれ以下のごみのようにしか見ることはできなかった。
ごみを売る店という言い方は非常に失礼かもしれないが、物の価値というのは総じて人によって変化するものだ。
もしかしたらここにあるごみの中からなんでも鑑定してくれる件の番組で掘り出し物が見つかるかもわからない。
もっとも十中八九見つからないだろうが。




