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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十九話「鐘子文奮闘記」

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康太の好奇心

翌日、バレンタイン明けの月曜日に康太はさっそく文に対してアタックを仕掛けようとしていた。


アタックといっても別に攻撃するわけでもなければ文に対してアプローチをかけるわけでもない。


「何というか、バレンタイン明けってこともあってちょっと変化があったみたいだわ。うちのクラスで何人かカップルできたみたいよ?」


「ほほう。青春してるねぇ・・・俺らもまぁ人のことは言えんかもしれんけど」


「・・・まぁそうね・・・そうかも」


康太と文はいつも通り一緒に昼食をとっているのだが、そんな中康太は不意に文の体を自分に引き寄せるとその首筋のにおいをかいでみた。


一瞬文は何をされたのかわからなかったようだが、康太が首筋に顔をうずめようとしているのを理解したのか、その顔を思いきり遠ざけようと手に力を籠める。


「ちょ!何するわけ!?」


「いや、においを嗅ごうかと思って・・・昨日アリスに相談したらさ、とりあえず匂い嗅いでみろって言われてさ」


アリスの差し金かと文は顔を真っ赤にしながらもかつて自分も同じようなことをやったことがあるだけに何も言うことができなかった。


意趣返し、というのとはまた違うかもしれないが、かつて自分が味わったものを康太が再現しているだけの話だ。


もっとも康太は純粋に興味や疑問、そして答えを出せない不可解な状態から抜け出そうとするためのきっかけとしてそれをしているだけだ。


悪意がない分に性質が悪かった。


「匂いってね・・・一応言っておくけど、そういうこと女の人にやると最悪セクハラ扱いされるってこと覚えておきなさい」


「申し訳ない。訴えないでくれ負けるから」


「訴えないわよ・・・それで・・・嗅ぐの?」


「嗅ぐ。嗅ぎたい。ダメか?」


匂いを嗅いでみたいとまさか真顔で正面から言われるとは思っていなかっただけに文は困惑し戸惑ってしまっていた。


真正面から頼まれると断りようがない、康太は答えを出そうとしてその一端としてこうして匂いを嗅ごうとしているのだ。


それにこの行動はアリスの差し金である。もし断ったら次はどんなことを要求されるか分かったものではない。


「・・・ちなみに確認するけど・・・どこのにおいをかぐつもり?」


「えっと・・・言われたのがまず首筋だな、特にうなじ。あとは脇とか腹とか?」


「・・・女の子はデリケートなのよ?そんなところ嗅がせると思う?」


「さすがに脇はあれだから首と腹だけでいいぞ?」


「・・・おなかもどうなのよ・・・ったくあいつは・・・」


さすがの康太も女子の脇のにおいをかぐということが明らかに常識から逸脱した行為だということは理解しているらしく、そこまで踏み込んではこないようだった。


だがそれでも首筋のにおいに腹のにおいは嗅ぐつもりでいるらしい。そもそも腹のにおいをかぐなんて聞いたことがないぞと思いながら文は唸る。


「・・・あー・・・わかったわよ・・・嗅ぎなさい、ほら」


文は自分の髪を手でもって首筋を露出させる。きめ細やかな黒い髪が文の手によってかき上げられているのを見て康太は一瞬目を見開いてから首筋に顔を近づける。


康太の息遣いが首の皮膚にダイレクトに伝わってくる。これはいったい何の罰ゲームだろうかと文は顔を真っ赤にしながらその状態に耐えていた。


康太が首のにおいをかぐたびに、その肌に康太の息が吹き付けられる。そこまで敏感ではない文でもこの吐息の感覚にはなれていないためわずかに身をよじってしまう。


「・・・どうよ・・・お気に召した?」


「・・・うん、やっぱいい匂いだな。俺好みのにおい」


「・・・前にも言ってたけど・・・どんな匂いなわけ?」


「文のにおい。それ以外に言いようがないな」


以前にも似たようなことを言っていたなと文は思い返しながらため息をついて次に匂いをかがれるであろう腹部へと視線を映していた。


「それで・・・おなかも嗅ぐの?」


「嗅ぐ。どうせだから深呼吸してやる」


「やめなさい。あんたそっちの趣味あったわけ?」


「いやたぶんないと思うけど・・・なんかこう・・・あれだ、文の反応がちょっと面白かった」


康太の言葉で先ほどまで匂いをかがせていた時の自分の反応を康太はしっかりと確認していたということを知って文は顔を真っ赤にしてしまっていた。


康太の息が肌に触れるたびに身をよじっていたあの反応をしっかり確かめながら息を吹きかけていたのだということを知って文は唇をかむ。


「あんたいい性格してるわね・・・ひょっとしてドエスの類?」


「いやそんなことはないと思うぞ?たぶんだけど・・・」


小百合の弟子ということもあって攻撃に特化している康太はそれだけ相手を観察する術にも長けている。

その技術がこんなところにまで発揮されるとは思っていなかっただけに文はため息をついてしまっていた。


そんなところばかり伸ばしてどうなるのかと思いながら、文はため息をついて康太に自分の腹を差し出す。


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