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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十七話「そしてその夜を越えて」
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遊園地を堪能

「さぁ着いた!遊ぶぞ!思い切り!」


康太たちは車を運転し首都高などを経由して遊園地にたどり着いていた。開園前だというのにすでに長蛇の列ができている。年末だからか家族連れも目立つ中、康太たちの一団も当然のようにその列に加わっていた。


「さぁみんなの分のフリーパスだ。これで中に入ったら遊び放題だよ」


「ありがとうございます。っていうか康太あんた大丈夫?ずっとバイクの運転してたみたいだけど」


「問題ないって。むしろここからが問題だ・・・これから俺は一番忙しくなる」


「忙しくって・・・なんで?」


「康太君、僕も微力ながら手伝うよ。体力には自信があるからね。手分けしていけばそれなりに負担は軽減されるはずさ。というわけで女性陣はまず中央を目指してもらおうかな。その道すがら朝食でも済ませてくるといい」


「いやあの・・・どういうことですか?」


康太と幸彦が妙に張り切っている中、文はその理由を理解できずにいた。遊園地についたのだから遊ぶために張り切るかと思っていたが、どうやらそういう張り切り方ではないようだった。


妙に準備運動をしていることから走る準備をしているようにも見受けられる。


「文さん、お二人はファストパスを狙っているんですよ。有名なアトラクションはそれだけですごい人気ですからね」


「あぁ・・・そういうことですか・・・確かに人も多いですから大変でしょうけど・・・」


「そこはほら、俺たちの専売特許の肉体強化よ。全力で肉体強化かければそれなりに早くアトラクションを回れると思うぞ?」


「二手に分かれればそれだけ早く済む。手っ取り早くアトラクションを楽しみたいからね、遊ぶために必要な苦労はいくらでも買って出るさ」


良くも悪くも康太と幸彦は接近戦を得意とする肉体派の魔術師だ。幸彦は言うまでもなく、康太も肉体強化の魔術もそれなりに扱える。


しかも康太はもともと陸上部、肉体強化を扱った状態で全力疾走すればおそらく人間の速力の限界を超えることくらい簡単だろう。


遊園地になんでそこまで本気になるのかと思ってしまうが、文は自分と手をつないでいる神加を見てその理由を理解する。


遊園地についたとたん、彼女の目は先ほど以上に輝きを増しているのだ。これからたくさん遊べるという事実に期待に胸が膨らんでいるのか、いつも以上の笑顔をその場の全員に見せてくれている。


この笑顔を前にすれば少し頑張りすぎてしまうのも無理のない話だなと文は納得してしまう。


「それはいいけど、あんまり露骨に急ぎすぎないでよね?それか一つのアトラクションに私たちも並んでおく?有名な奴」


「あぁ、ではギャラクシーマウンテンにでも並んでおきましょうか。そこでお二人をお待ちしていますよ。途中で何か食べ物も買っておきます」


「そうですか。お願いします。神加、姉さんたちから離れちゃだめだぞ?しっかり手を握ってるんだぞ?」


「うん、握ってる」


神加は康太の言うことに素直に従って真理と文の手をしっかりと握る。ほほえましい光景だなと思いながらも康太は文に一瞬耳打ちした。


「神加を頼むぞ。ちょっとだけ気を付けてやってくれ」


「わかってるわよ。素直に楽しめるようにしてあげるわ」


「アリス、万が一神加がはぐれたりしたら頼む。索敵範囲はこの中じゃお前が一番広いだろうからな」


「迷子の捜索とは・・・まぁいいだろう。任せておけ。ファストパスは任せたぞ。その間に私はいろいろと物色していよう。軍資金は山ほど持ってきたからな」


そういってアリスは満面の笑みを浮かべる。どうやら楽しみにしていたのは神加だけではないようだった。


思えばアリスが来てから遊園地などには来ていなかったなと思い返し、開園時間になると同時に康太は深呼吸していた。


「それじゃ幸彦さん、俺は時計回りで行きます。幸彦さんは反時計回りでお願いします。反対側で合流しましょう」


「了解したよ。どっちのほうが多くファストパスをゲットできるか勝負と行こうか」


「ふふふ・・・パワーならまだしもスピードでは負けられませんね。陸上部の足の速さ見せてあげますよ」


「それは楽しみだ。僕も易々と負けるつもりはないよ」


そんな会話をしている二人に、どうして男は勝負をしたがるのかと文はあきれてしまっていたが、それでもこの言葉を言わざるを得なかった。


「頑張りなさい康太。勝ったらなんかご褒美上げるから」


「お、文さんまじですか。こりゃ頑張らなきゃな」


「えー・・・文ちゃん、僕にはないのかい?」


「ないです。真理さんは何かありますか?」


「そうですね・・・では勝ったほうに神加さんの隣でアトラクションを楽しめる権利を差し上げましょう」


その言葉に康太と幸彦はさらにやる気を出したのか、念入りに手首と足首の運動を始めていた。


自分たちの入場の番となった瞬間、康太と幸彦は入場し即座に駆け出す。


本当はマナー的に良くないのだが、止めるよりも先に目にもとまらぬ速さで二人は人の群れをかいくぐりながら先に進んでいった。


身体能力の無駄遣いだなとアリスはあきれていたが、今この場においてはあの行動はありがたかった。


「よっしゃ・・・!よっしゃ・・・!勝った・・・!」


「くそぅ・・・一つ足りなかったか・・・!」


その三十分後、康太と幸彦は文たちが並んでいるギャラクシーマウンテンの列に合流していた。


康太と幸彦のファストパス回収レースは、結果的に言えば康太の勝利だった。


速力では康太のほうが上だったのか、それともただ単に巡ったアトラクションが楽に手に入るものが多かったのか、それとも幸彦が手を抜いていたのか、そのどれかはわからないが結果的には康太の勝利という形でこの勝負は決着した。


「よっしゃこれで神加の隣は俺のものだ。文もなんかご褒美用意しておけよ」


「はいはいおめでとう。ったく・・・なんでそんなにむきになるのよ。まぁファストパス入手してきたのはありがたいけど」


これだけ混んでいる中でアトラクションにスムーズに乗ろうとしたら必然的にファストパスは必須になる。


そういう意味では康太たちの行動は最適ともいえるのだが、あそこまで必死になって勝負をする意味に関しては理解しかねていた。


そのあたりは男の意地とでもいうべきだろうか。女には分らない世界がそこにあるとしか言いようがないのである。


「まぁともかく、これでちゃっちゃと乗れるぞ。まずはギャラクシーマウンテンを楽しもうぜ」


「ちなみに全部でどれくらいのファストパスが集まったの?」


「えっと・・・ビックファイアマウンテン、スプラトゥーンマウンテン、モンスターズインプ、ボスレフトアイのアストロブラスター、ムーンツアーズ・・・ボーンテックアパート・・・そんなものかな?」


「ファストパス対象のアトラクション自体がこんなものだからな、数で勝負しようと思ったらそんなもんだろ」


「あとは並ぶしかないってことね・・・あれ?アマゾンクルーズってファストパスないの?あったような気がしたんだけど・・・」


「あれ?あったっけ・・・?取り損ねたか・・・?」


「いや、あそこはファストパス対象から外されてた気がしたよ?最近なのかどうかは知らないけど」


最近こういった遊園地にやってくることが少なかったためにどのアトラクションがファストパス対象なのかすっかり忘れてしまっている。


走り回っていた康太たちも完全に把握しきれてはいないようだった。


これだけの混雑だ、並ぶにしても早めに並ばないと目当ての乗り物には乗ることは難しいだろう。


「何なら私の魔術で全員どかしてやろうか?腹痛を起こさせれば楽なものだろう」


「やめなさい。集団感染かと疑われるじゃないの・・・今度はトイレが大混雑よ。そんな地獄絵図見たくないわ」


せっかく遊びに来てるんだからと文はため息をつく。実際アリスならばそういった手段をとることは容易だろう。


だがだからといって何の関係もない一般人に手を出してまで早くアトラクションを回ろうとは思わない。


せっかく遊びに来ているのだから殺伐とした空気ではなく純粋に気を緩めて遊んでいたいと思うのは仕方のない話だろう。


「こうして並んでる間の暇つぶしを考えておくべきだったの・・・ゲームの類でも持ってきていれば違ったのだが・・・携帯でゲームをやるくらいしか暇つぶしがない」


「なんとも現代に染まったわねあんた・・・携帯画面を操る動作がすごく似合ってるんだけど・・・」


「ふふん・・・そう褒めるな・・・私とていつも暇を持て余しているわけではないのだぞ?これでも日々鍛錬しているのだ」


「その鍛錬必要かしら・・・?そういえば携帯で思い出したけど、神加ちゃんにも携帯買ってあげるべきかしら?それともまだ早い?」


文の言葉に康太と真理は悩み始める。主に神加の教育担当はこの二人だ。まだ小学生にもなっていない神加に携帯を持たせるのが果たしていいことなのかどうか悩んでいるようである。


「正直微妙なところだな。通う小学校はもう見つけてあるんだよ。師匠の店からそれほど遠くない学校なんだけどさ・・・」


「へぇ・・・書類関係とかは?」


「それはもう私たちで終わらせました。あとは来年小学校に入学するだけなのですが・・・その距離的に神加さん一人で行かせることになるのですけれど・・・携帯は・・・」


最近は子供用携帯などもあるために何も持たせることが問題とは言わない。むしろ昨今の犯罪の傾向から見ても持たせておいていいと思うのだ。


問題なのは携帯を持たせることによって勉学などに集中できないのではないかという点である。


無論子供用携帯は余計な遊ぶための機能を省いた携帯電話だ。そういう意味では連絡するためだけの適切な、というか本来の形の携帯電話といえるかもしれない


あとは康太たちが持たせるべきか否か結論を出すだけなのだがこれがなかなか難しい。


他の同世代の子供を見る機会などがあればまだ判断材料となったのだろうが、子育てなどやったことがない康太や真理からすればこういったことへの判断材料が少なすぎるのである。


子育てとはなかなか難しいものなのだなと、自分の手を握ったままの神加を見ながら文は複雑そうな笑みを浮かべる。いつか自分もこういう風に悩むことになるのだろうかと少しだけ不安を抱きながらも。


康太と幸彦のファストパス回収作戦のおかげで、康太たちは比較的順調にアトラクションをめぐることができていた。


並ぶ時間も三十分程度で済んでおり、主要アトラクションをすべてめぐり終えてもまだ十五時程度という十分に時間を余らせて遊園地を満喫できていた。


もちろんまだまだアトラクションは山ほどある。行こうと思えば夜までだって遊んでいられるだろう。

それまで神加の体力が持つかは微妙なところではあるが。


「さてと・・・大まかなアトラクションはすべて回ったかな・・・?あとはどこに行こうか、ミュージアム系はまだ回っていなかったと思うけど」


「そうだなぁ・・・神加はどこに行きたい?どこか行きたいところあるか?」


「んと・・・あそこ」


神加が指さしたのはこの遊園地のある意味象徴的な建物となっている大きな城だ。この遊園地を運営している会社の系列作品で登場した城で、神加などのような小さな子供でも知っている有名な城である。


一時期はあの城も一種のアトラクションとして活用されていたのだが、現在はすでにアトラクションとしては運営されていない。


一定の時間で劇を行っているらしいが、その劇を見ることができるのは夜なうえに抽選になってしまう。

とにかくあの城の中に入るのはまず無理なのである。


「あれかぁ・・・俺がもっと小さなころはなんか竜を倒すアトラクションやってたんだけどなぁ・・・」


「あぁ知ってる知ってる。確か原作のままストーリーを楽しむんだっけ?でももうやってないわよね?」


「うん・・・あそこに入るのは難しそうだなぁ・・・まぁ一応行ってみようか。もしかしたら中に入るだけならできるかもしれない」


もうすでにアトラクション自体はやっていないが、内部を見学することは可能かもしれない。


もしダメだったのならばそれはそれであきらめる理由にはなる。康太たちは神加の要望通り大きな城へと足を運んでいく。


城へと続く階段は関係者以外立ち入り禁止のロープによって区切られていた。どうやら劇などをやる関係でやはり関係者以外が入ることはできないようだった。


当然といえば当然かもしれない。この城そのものを劇として利用するのだから仕掛けを作動させるために準備が必要なのも理解できる。


中に入って一般人が勝手なことをしてもし仕掛けに問題が発生したら劇そのものも中止になりかねない。

これ以上はいるのは難しいなと康太は城を携帯で撮影しながら神加のほうを見る。


神加は少し残念そうにしている。やはり中に入ってみたかったのだろう。中に入りたかったのか、城の上からの景色を見たかったのかはわからないが、その表情はあまり良いものとは言えなかった。


そこで康太は少しだけ思案してアリスに話しかける。


「アリス、ちょっと頼んでいいか?」


「なんだ?また兄として気を遣うつもりか?」


「そういうこと。ほんのちょっとでいいから」


「・・・仕方ないの・・・周りへの工作は任せろ」


「ありがと。悪いな」


康太の意図を察したのか、アリスは魔術を発動する。すると周囲の人間の意識が城から別のものへと一斉に変化する。一時的に自分たちをだれも見ていないという奇妙な現象が起きると、アリスは自分と康太、そして神加に魔術をかける。


周囲の監視カメラのことも注意してその場にとどまっているように残影を残しながら、自分たちの姿を透明化させると宙に浮かせる。


「文、ちょっと行ってくる。留守番任せた」


「あんたね・・・見つかって出禁になるようなことしないでよ?」


「わかってるって。アリスの腕なら大丈夫だよ」


康太と神加とアリスは宙に浮きながら城の頂上まで一気に飛翔する。神加は自分が空を飛んでいるという事実に驚きながらも、城の一角に着地するとそこから見える風景に感動しているようだった。


「どうだ神加、お城からの景色だ」


「わぁ・・・綺麗・・・」


年末ということもあって日が傾くのも早い。すでに遊園地全体が夕焼けに染まりつつある中、城からの景色は遊園地そのものが輝いているように見えていた。


「アリスにお礼を言うんだぞ?こいつがいなかったらここに来ることはできなかったんだからな」


「・・・うん・・・アリス、ありがと」


「ふむ・・・まぁ気にするでない。この程度のこと朝飯前だ」


神加から感謝されることはアリスからしても悪い気はしないのか、少し笑みを浮かべ得意そうにしている。


例によって三人とも透明化しているためにその表情を見ることはできないが、アリスの今浮かべている表情を康太は容易に想像することができた。


「それじゃ下に戻るぞ。いつまでもカメラをだましておくこともできないだろ?」


「私をなめるなよ?その気になればキロ単位で離れていても騙せるぞ?」


「張り合うなって。下手にばれて魔術の存在が露見するよりずっといいだろ?さっさと戻るぞ」


城の中に不法侵入しているとなればばれれば出禁では済まされない可能性もある。康太たちは早々に文たちの元に戻ると再び園内を歩き始めた。












「さすがに疲れて寝ちゃったか・・・」


「朝早かったですからね、仕方のない話ですよ」


遊園地内の半分近いアトラクションを楽しみ、夕食を園内で済ませた後、そろそろパレードが始まるのではないかという時間帯で神加は体力が尽きたのかスイッチが切れたかのように眠り始めてしまった。


今は康太に背負われ幸せそうに寝息を立てている。


「パレードはどうする?俺らは見て行ってもいいと思うけど」


「せっかくだから見ていこうか?といってもこの人だかりじゃ見れるか怪しいよ?」


「そこなんですよね・・・アトラクションで遊ぶのに精いっぱいで場所取りとか全然していませんでしたし・・・」


この遊園地のパレードは人気が高く、一日に何度か行われるのだが特に夜のパレードはその中でも一番の人気を誇る。


そういうこともあってかなり早い段階からパレードを見るための場所を確保する人が絶たないのだ。今回康太たちはアトラクションで遊ぶことを優先してしまったために場所の確保ができなかったのである。


「神加さんも寝てしまいましたし・・・今日はここで帰りましょうか?あまりうるさくしていると起こしてしまいそうですから」


「それじゃお土産買って帰ろうか。康太君と文ちゃんはこの後泊まっていくんだっけ?」


「はい、近くのホテルで一泊して明日も遊んでいく予定です」


康太の言葉に文は今更ながらこれから康太と一泊するのだという認識を強めてしまっていた。


無論今まで同じ部屋に泊まったことがないわけではない。魔術師として活動しているときに同じ部屋に泊まったこともあるし、そもそも文は康太の体の隅から隅まですでに見ているのだ。


いまさら何を恥ずかしがることがあるのかと自分に言い聞かせるが、そうはいっても恥ずかしいものは恥ずかしいのだと文は暗闇の中で顔を赤くしていた。


「では私と幸彦さんでお土産を買ってきます。少しの間近くのベンチで待っていていただけますか?」


「了解です。アリスはどうする?せっかくの土産物屋だぞ?」


「ふむ・・・では私も行くとするかの。フミよ、コータとミカの世話を任せたぞ」


「わかってるわよ。さっさと行ってきなさい」


土産物屋の中に寝ている神加を連れていくわけにもいかず、康太と文は神加をベンチにおろすと眠りやすい体勢にしてやると三人の帰りを待つことにした。


ここでウィルを連れてきていたら自動で眠りやすい形になってくれたのだろうが、今ウィルは留守番中だ。


最近は神加の専用クッションのようになっているウィルだが、やはりこういう場に連れてくるのは難しい。


申し訳なくも思うが、一人残った小百合の世話をしていると考えるとまだましだろうかと思えてしまう。


「ちなみに康太、奏さんがとってくれたホテルってここからどれくらい?」


「近くの駅から一駅のところだ。この遊園地の系列ホテルではないけど、近くのホテルとしてそれなりに有名なところだぞ」


この遊園地はかなり大きく、系列のホテルも経営している。ホテルから直接バスで園内にはいることができたり、ホテルの中の装飾にもキャラクターなどが隠れていたりとなかなか面白い部分が多いと聞く。


ただ当然だがその分高い。しかも有名なだけあって予約でいっぱいになってしまっていることが多々ある。


そのため予約を取るのも一苦労なのだ。特別なタイミングでもない限りこういった時期に予約を取るのは難しいだろう。


「奏さんのおかげとはいえ・・・この借りは大きいわね・・・いったい何をさせられるのやら・・・」


「まぁそのあたりは実際に頼まれてから聞こうぜ。今はのんびりしていようや・・・こういうところにくるのは本当に久しぶりだからなぁ・・・」


康太は目を細めながら笑っている。康太の足を枕にして眠っている神加に視線を向けながらこの空間は悪くないなと文もつられて笑ってしまっていた。


「あ、そういえば文、幸彦さんとの勝負に勝ったご褒美、何くれるんだ?」


「え?・・・あー・・・そんなことも言ったわね・・・」


自分で言いだしておきながら文はすっかり忘れてしまっていた。康太が幸彦に勝つということも予想外だったが、康太がこんなどうでもいいことを覚えていたことも予想外だったのである。


てっきり忘れるとばかり思っていただけに文は動揺してしまっていた。


「逆に聞くけど何がいいわけ?褒美って言っても特にこれといってあげられるものもないわよ?」


「なんだよ・・・もうちょっとテンションあがるようなものをプレゼントしてくれよ。こう・・・なんていうか・・・男心をくすぐるというか・・・」


「そんな無茶な・・・具体的に言ってよ具体的に・・・」


具体的に言えと言われても康太自身も何がいいかわからない状態なのだ。褒美といわれたからにはうれしいものなのだろうが具体的なものが思い浮かばないのである。


「そうね・・・なら明日帰るまでには考えておくわ。楽しみにしてなさい」


「おう、楽しみにしてる。なるべく早めに頼むぞ?」


「せかさないでよ。まぁ考えるだけ考えておくわ」


文と康太がそんな話をしていると土産を抱えた幸彦たちが康太たちの元へと戻ってくる。


遊園地の楽しい時間はこれで終わりだ。康太は神加を抱えて幸彦たちと駐車場へと向かっていた。


誤字報告を15件分受けたので四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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