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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十七話「そしてその夜を越えて」

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いざ遊園地へ

「というわけで遊園地に行くぞ!」


「おー」


「ハンカチ持ったか?ちり紙持ったか?」


「持った!」


十二月三十日早朝、康太たちは小百合の店に集まっていた。遊園地に行くだけなので荷物はかなり少ないが、行く途中で食べるお菓子などを車に詰め込んでそれぞれ席について和気あいあいとしている。


「すいません幸彦さん、車を出していただいて」


「いいっていいって。僕としては若い女の子に囲まれてうれしい限りだよ。っていうか康太君は本当にバイクで行くつもりなのかい?」


車の窓を開けてバイクの調子を確認している康太を見ながら幸彦は若干不安そうにしている。


康太のバイクはそれなりに出力の高いバイクだ、高速道路でも問題なくついていくことができるだろうが、問題は康太の運転技術である。


今年の夏に免許を取ってからそれなり程度しか運転する機会はなかった。無事にたどり着けるか怪しいところなのである。


「ふむ・・・ならば私がコータについていよう。万が一何かあれば私がフォローできる。帰り道の練習にもなるからの」


「あぁ、帰りは文ちゃんと二人乗りで帰るんだもんね。頼めるかい?」


「任せておけ。フミよ、すまんがコータの後ろに乗せてもらうぞ?」


「・・・別に私の許可をとる必要はないでしょ?好きにしなさい」


素直じゃない奴めとアリスは笑いながら車から降りて康太のもとへと向かう。康太のバイクの後ろに乗り込むとその姿を一瞬で消して見せた。


もはや康太の後ろに誰かがいると気付ける者はいないだろう。


「相変わらずすごい技術だね・・・師匠でもあれだけできるかどうか・・・」


「幸彦さんのお師匠様のことは康太から大まかに聞いてますけど、そんなにすごい人なんですか?」


「すごい・・・まぁそうだね、すごい人だよ。いろんな意味で」


幸彦は苦笑しながらすごいという単語を何度か反芻していた。言葉の意味としては決して間違ってはいないのだろう。


すごいことに変わりはないのだろうがそのすごいの意味がかなり特殊な意味を持っているように感じられた。


「一度文さんも会ってみるといいですよ。あの方は直接会って初めてそのすごさの意味を理解できます。といってもほんの少しですけど」


「そう・・・なんですか・・・機会があれば会ってみたいですね」


文は細かく聞いていないが、小百合が神加を弟子にした理由の一端を担っているのが小百合の師匠である智代なのだ。


智代のする目と神加の目がそっくりなのが神加が小百合の弟子になってしまった理由の一つである。


実際に智代に会った者ならば、神加の目が智代の目に似ているということをすぐに理解できるだろう。


「さ、さぁさぁ師匠のことはさておき。今日は遊園地だ。楽しもうじゃないか。もうフリーパスも買ってあるし、いくらでも遊べるぞ。つくまで少し時間かかるから今のうちに寝ておいたほうがいいんじゃ・・・ってそれは無理な話か・・・」


早朝ということもありまだ眠いかと思いきや、一番体力的に不安な神加は目を輝かせている。


全力ではしゃいでいるとはいいがたいが、眠れるようなテンションではないのは間違いないだろう。


楽しみすぎて眠れなかったということもないらしい。そのあたりはアリスが強制的に睡眠でもさせたのだろうと幸彦は何となく察していた。


「ちなみにさーちゃんは?やっぱり出てくるつもりはないの?せっかくだから会いたかったんだけどな」


「師匠ならまだ寝てますよ。昨日も『絶対そんな時間に起きてやらないからな』って釘を刺されましたから」


小百合の言い分も仕方のない話である。何せ開園時間に間に合わせるためにだいぶ早くに起きているのだ。


冬ということもあってまだ太陽も顔を出していない。こんな時間に行動するのは康太たちも実に久しぶりである。


夜の行動は多いのだが早朝の行動というのは旅行に行くときくらいのものだ。


「さぁじゃあ行こうか。康太君、僕が先行するからついてきてくれるかい?」


「了解です。安全運転でお願いしますよ!」


「わかってるさ。今日はお姫様をたくさん連れてるからね」


今日遊園地に行くメンバーは康太、文、真理、神加、アリス、幸彦の六名だ。小百合は行く気はないため車とバイクで運べば十分に事足りる。


女性四に対して男性二という割合だが、その中の二名が幼女だ。そしてそのうちの一名は全人類年下というレベルの超絶年上の魔術師である。


いろんな意味で安全運転をしないと危ない。康太がどんな形でバイクの運転をすることになるのか、アリスにかかっているといってもいい。


「アリス、万が一の時はフォロー頼むぞ。転びそうになったときとか特に」


「昨日も晴れていたし路面凍結もなさそうだ。問題はないと思うがの」


「そうは言うけどバイク事故はまさかって時にあり得るからな。頼むぜアリスさん。俺の命はお前に預けた」


「・・・私に預ける前に安全運転していれば問題はないと思うのだが・・・」


康太は幸彦の車が発進するのに合わせてバイクを動かしていく。その動きはなかなか様になっている。もうバイクの運転にはなれたといったところだろうか。



「そういえばコータよ、このバイク以前どこかに運んでから少し形が変わっているが、何か改造したのか?」


移動を始めて三十分ほどした時、後ろに乗っているアリスは康太のバイクの変化に気が付いたのかそのフレームを少し眺めながら眉をひそめていた。


もっとも彼女は今透明になっているため誰もその表情を見ることはできないのだが。


「あぁ、前に神加たちの武器を作りに行ったときについでにバイクの改造もお願いしてな。いくつか細部をいじってあるんだ」


まるでそれを聞かれるのを待ってましたと言わんばかりに楽しそうな声を出している康太にアリスはしまったなという表情をしていた。もちろんその表情は誰も見ることができないのだが。


「フレームの中にいくつか武器を収納できるようにしてあるんだ。んでもっていくつかのフレームは開いてその中に鉄球やら杭やらを入れられるようになってる。ここに俺の炸裂鉄球を入れれば戦闘も可能になるって寸法だ」


「・・・なるほどの。魔術師としての戦闘用に作り上げたバイクということか・・・なんとも物々しい・・・」


アリスはこのバイクの細部を解析することでその詳細を知ることができていた。本来バイクのフレームは余計なものなどは一切ない。最低限機構部分を囲うだけにしてあるのだが余計なフレームが増えておりそこにものを入れられるようになっているようだった。


この改造にいったいどれだけの意味があるのかアリスには理解できなかったが、康太が楽しそうにしているから今は良しとしようと思っていた。


「だが今は武器は入っていないようだが?空っぽなだけではないか」


「あぁ、今日は泊りがけってこともあって帰りの分の荷物を入れられるようにスペース空けてあるんだよ。こういう時にも使えて便利だろ?」


「要するに収納スペースを増やしたということか・・・なんとも地味な改造だの・・・やるなら変形するとかこだわったらどうだ?」


「そんなトランスフォーマー的な改造は無理だっての・・・現代の技術越えてるじゃんか・・・フレームをちょっといじるのが限界だよ」


「・・・ふむ・・・ならばせめて武器の収納方法は考えたほうがいいかもしれんな・・・収納スペースが増えるというのはいいことなのだが、いかんせんこれでは・・・」


増えた収納スペースはそれほど多くはない。最低限の武器を保管できる程度のものでしかないために本格的な武器保管とは言えない。


アリスのイメージとしてはこの収納スペースからミサイルが飛んでくる程度のものを想像しているのだが、そういったものを用意することそのものが難しいのだろう。


「コータよ、これを改造したチームはあれだろう?武器の取り扱いもしておるのだろう?」


「あぁそうだよ。たいていどんな武器も扱ってる」


「それならばお前が本来使わないような武器を載せるべきだ。あるいはバイクに乗っているときでないと使えないような武器を載せるのが良いだろう」


「それって・・・例えば?」


「んー・・・少なくともバイクで戦うということそのものが少ないのだ、捕縛用の網やら煙幕やら・・・いや、煙幕はデビットのあれがあるからいらんか・・・」


アリスも実際にバイクに積載する武器や道具で何がいいのか考えているが、実際に考えてみるとなかなか思いつかないものである。


具体的にどんなものが役に立つかわからないのだ。真理のバイクに乗ったときの戦いを見ていた康太だが、実際にやっていたのは魔術を使いながらバイクを操るというなかなか高度な戦い方だった。


急加速に急ブレーキ、体重操作により相手の攻撃を躱すという単純だがなかなかできそうにはない動きだ。


あれをやれと言われても今の康太にはできそうにない。何せ今こうして幸彦の運転する車についていくのに割と集中しているのだ。アリスと無駄な話をする程度の余裕はあるがこれ以上何かをしろと言われても無理の一言である。


「とりあえずせっかくのスペースだ、無駄なものを入れるくらいなら何か建設的な改造をしたらどうだ?ニトロを入れるとか」


「あぁいいなそれ。急加速できるから面白そうだ」


「あと個人的に入れてほしいものがある。ティッシュを入れておいてくれ。バイクだとどうしても風が直接当たって寒いから鼻水が出る」


「朝出る時ハンカチちり紙持った?って聞いただろうが。なんで持ってないんだよ」


「ふふん・・・悪いが私のカバンの中にはお菓子しか入っておらん。そんな余計なものを入れるスペースはないのだ」


「自慢げに言うセリフではないな。つーか今俺の体に両手で捕まってる状態だよな?どうやってお菓子食べるんだよ」


「そこはほれ、魔術を使ってちょくちょく食べておるぞ。欲しいか?今コアラのマーチを食べているところだが」


「・・・一つくれ」


康太が口を開けると透明になった状態のコアラのマーチが康太の口へゆっくりと滑り込んでいく。


フルフェイスのヘルメットを着けている状態なのにどうやって滑り込ませたのか気になるところだが、そんなことは後回しにするべきだろう。口の中の異物を噛むとチョコ独特の甘い味が広がっていく。間違いなくコアラのマーチだ。


「話を戻すがティッシュをくれ。出なければお前の背中で鼻をかむぞ」


「・・・俺のズボンの右ポケットに入ってるからそれとってかみなさい」


「すまんな。ちょっと風よけの魔術でも使うか」


そういうと康太の体に当たっていた風が急になくなり、体の周りの空気が暖かくなってくる。バイクなのに風よけに加え暖房付とは、相変わらず何でもできるなこいつと思いながら康太は暖かくなったことに少しだけ感謝していた。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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