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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十六話「本の中に収められた闇」
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図書館の出入り口

「ヘイランズさん、この図書館の出入り口は何か所ありますか?」


「お二人が入ってきた一か所だけです。それ以外にこの建物・・・特にこの地下への道はありません。必要とあらば確認していただいても・・・」


「・・・そうですね」


そういって文は索敵の魔術を発動する。索敵の範囲を絞ってこの図書館と地上までの空洞や建物の状況などを詳しく確認し始める。


ヘイランズの言うように確かに人が通れるような道はない。それは間違いない。通気口としていくつか細い管が通っているが、その道もすべて通気口として機能させるための送風機が取り付けられている。いやそもそも人が通れるような幅の通気口ではない。


ではどこから出入りするか。そうなると当然文たちも入ってきた出入口しかない。


外部からの侵入の方法は一か所。だがその場所に二人程度の魔術師が配置され監視している。今はまだ日が高いからこそ正式な配置はされていないが、夜になれば正式に配置されることになるだろう。


今回は事件のこともあり誰も入ることができないようにするためそもそも配置しないかもしれないがその配置を確認しておきたいところだった。


「入り口部分の配置はどのようになっていますか?二人の時と三人の時でそれぞれ教えてください」


「二人の時は地上部分に一人、そしてこの図書館の入り口に一人です。三人の場合は地上に一人、入り口に続く階段部分に一人、そして図書館の入り口に一人となっています。地上部分に誰かが来た場合は合図をしてそれぞれ索敵を発動する手はずになっています」


一つの場所に固めるのではなく、複数個所に配置するということで通り抜けの際の漏れをなくそうとしているのだろう。


これならば地上部分に一人が気づいた時点で他二名もしっかりとやってくる人物を認識することができる。


だが逆に言えば地上に配置された一人が気づくことができなければ素通りさせてしまうことになる。


とはいえ、仮に一人だけだとしてもあの狭さ、廊下の一角にある地下への扉を開けたりすることを考えると早々見逃すということはありえないように思える。


仮に監視体制が万全であったのであれば、正面から認識されずに侵入するのはほぼ不可能である。


相手が何かしらの手段で意識をそらしたりしたのなら話は別だが、そんなことを言い出したらどんな場所だって侵入できることになる。


このことに関しては監視していた本人たちに話を聞くことにして、文は現段階で確認したいことがまだあった。


これだけ広い空間に、いくつも取り付けられた換気口。だがそれだけではないことを確信していた。

これだけの大きさの本棚、これをどのように運び入れたのか。


もちろん部品一つ一つに分解して運び入れたということもあり得る。だがそれにしたって大きすぎるものもある。


道具をどこから運んだのか、それが気がかりだった。


「ここの道具とかはいったいどこから運んだんですか?少なくとも入ってきた場所からは運び込めないように思いますけど・・・」


「搬入路が一応作られています。万が一、ここが火事になったときなどはそこから魔導書を運び出すような手はずになっています」


「そこはどこですか?ぱっと索敵してみても地上までの道とか入り口はないように見えましたけど」


「えぇ、ここからさらに地下に延びています。水道管や電線などを干渉しないようにかなり深くに作られていますから見つけるのは難しいと思われますが」


地上から地下に埋められている下水道や電線など、それらを干渉しないように地下に道を作るとなると地下三十メートルほどはないと難しい。


そもそもこの図書館の空間そのものが地下三十メートルを余裕で使用していると思われるが、底よりもさらに深くに作っているのだ。


「その搬入路はいったいどこにつながっているんですか?」


「少し離れた場所の廃屋に。そこが出入り口になっています」


「普段その場所は封鎖してあるんですよね?」


「もちろんです、こちら側からしか開けられないようになっています」


「それは物理的にですか?それとも魔術的に?」


「物理的にですね。地上側には開けるための取っ手などもなく、内側から開けられないように閂を入れているんです」


閂とは取っ手のような部分に一つ棒を差し込むことで扉を開けなくする工夫の一つだ。物理的な閉鎖ではあるが魔術を使えば解除できなくはない。


「物理的な封鎖では魔術によって解除できるのでは?やり方次第では問題なく開けられるように思いますが」


「もちろんやろうと思えば開けられるでしょう。ただその代わりこの場所に通じているのは本棚の真下なんです。いわば隠し通路ですね」


ちょうどあそこですよと指さす先にある本棚。文はその下を調べると確かに大きめの出入り口、さらにそこから延びる通路があるのが確認できる。


なるほど、あそこから出入りするにはそもそもあの本棚を動かさなければいけないのだなと納得しながら、あれだけの本棚を動かすのはさすがに派手すぎるなと眉を顰める。


正規の出入り口からの持ち出しは難しく、裏側に延びた搬入路からの持ち出しも難しい。


これはどうしたものだろうかと文は頭を悩ませていた。


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