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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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攻撃の精度

康太が発動したのは新しい魔術だった。


魔術名は動作拡大。文字通り現在行っている動作を拡大する形で念動力を発動する、再現や遠隔動作と似た系統の魔術である。


例えば拳の動作を拡大すれば、巨大化した拳を発現することができる。


拡大の倍率とその使用時間に応じて魔力を消費するため、消費魔力に気を遣わなければいけない康太からすればあまり多用できる魔術ではないが、近距離、あるいは中距離における攻撃の層を厚くすることができる。


遠距離に関しては相変わらずいまだ再現と蓄積の魔術の応用だけなのだが、徐々にではあるが使用できる魔術が増えたことで相手を翻弄することもでき始めている。


勢いよく襲い掛かった巨大化させた拳は三人を弾き飛ばす。Dの慟哭によって視界が制限されているため索敵に頼りきりになっている状態で、ただでさえ感知しにくい念動力系の攻撃を受けていることでより一層正確な索敵をしなければいけないと彼らの頭の中には刷り込まれているだろう。


だが相手ももちろんただ一方的にやられているだけではない。康太めがけていくつもの攻撃が飛んできている。だが至近距離での肉弾戦に慣れた康太にとって中距離での射撃戦で使われる魔術など回避できないはずがなかった。


さらに康太の姿を模したウィルが状況をかき乱していく。その体を変質させ槍を模した刃で徹底的に三人に接近戦を挑んでいる。クダはウィルの攻撃を防ぐのにかかりきりになってしまっている。


ヤカセは索敵をしながら二人に指示を出している、そして激しく動くことができないために康太が近づいてきた時、あるいはウィルが急接近してきた時に牽制をするくらいしかできていない。


となると康太への攻撃が可能なのは今のところヤヤしかいないのだ。康太は誰を攻めるべきなのか理解したところでDの慟哭の本領を発揮させる。


対象はヤカセだ。彼があの三人の中での司令塔的な役割を担っているのは間違いない。


最初に彼を狙った康太の勘はあながち間違いではなかったのである。


彼の中に黒い瘴気をしみ込ませてその体から魔力を奪い取っていくと、ヤカセは露骨に動揺し始める。


急に指示が途切れたことでその動揺はヤヤとクダにも波及した。ウィルの攻撃の方角がわからなくなったことで防ぎきることができず、ヤヤへ攻撃を通してしまう。


そしてウィルから攻撃を受けたことでヤヤは自らが発動しかけていた魔術を半ば暴発させてしまった。


総崩れになってきたところで康太はさらに追撃を仕掛けるべく手元からお手玉を取り出し上空めがけて放り投げる。


遠隔動作の魔術も使ってさらに上へ上へと投げていくその動作を三人の中でヤカセだけが確認していただろうが確認したところでもう遅い。


康太が攻撃態勢に入ったことを把握したヤカセはクダに防御の指示を送る。それと同時に康太はお手玉に収められた鉄球すべてに込められた力を解放する。


花火のように三百六十度すべてに放射された鉄球は康太の収束の魔術によって三人の魔術師たちめがけて一斉に襲い掛かる。


その攻撃に合わせる形で康太は二つの魔術を発動していた。


一つは再現の魔術。これによって槍の投擲を再現し、側面からの攻撃をすることにより十字砲火の形をとり、三人のかたまっている場所のほぼ中心に小さくドーム状の炸裂障壁の魔術を発動していた。


三人は上部からの攻撃に集中していた。索敵を続けていたヤカセがギリギリのところで側面からも攻撃が来ていることに気付き側面部に氷の壁を張るがすでに遅い。鉄球と槍の投擲が三人めがけて襲い掛かる中、三人に命中しなかった鉄球は炸裂障壁の魔術へと吸い込まれていく。


その結果、障壁は砕け散り、砕け散った障壁が刃となって三人めがけて襲い掛かった。


外側からの攻撃だけに集中していた三人は、内側からの攻撃に全く反応できずにその体を切り刻まれていく。十字砲火に加え、内側からの斬撃、三か所からの同時ないし連続攻撃に全く反応できなかったのは無理もない。


連鎖的に攻撃が続くというのは相手にとっても対応が難しいのだ。いくら三人が連携に長けているといっても一塊になっていては対応できるものも対応できなくなってしまう。


怪我したものをかばうためにかたまるというのはわかるのだが、魔術師としてはその対応は下策だ。


康太は三人が皆一様に負傷したところでさらに畳みかけるべく、ウィルと同時に三人めがけて近接戦を挑んでいた。


康太の攻撃を見事に受けきってしまった三人は完全に怯んでしまっている。康太とウィルの同時の攻撃に反応しきれていなかった。


唯一盾役として動いているクダだけは、それでも二人を守ろうと二人の前に立ちふさがるが、それでも康太とウィルの同時攻撃を防ぎきれるはずもない。


そして康太がウィルを動かしたのは攻撃をするためではなかった。


康太はウィルをクダのもとに向かわせ全力で攻撃させる。その槍がクダの肩口を切り裂くと、彼は切り裂かれながらウィルの体をつかんでその動きを封じに来た。


なるほど、盾役としては申し分ない胆力の持ち主だと康太は感心した。だがそれこそ康太の思惑通りだと彼は気づいていない。


クダが体をつかむと同時に、ウィルはその体を半液体状へと変質させて彼の体を覆っていく。


鎧のように硬質化し、その動きを阻害するための拘束具へと姿形を変えていく。


盾役であり、今のところ唯一まともに動けていたクダを抑えたことで戦況は康太有利に大きく傾いていた。


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