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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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対策対応

康太と文が二人そろって学校の校門を飛び越えると、校舎に至るまでの道に見たことのある魔術師の仮面を身に着けた人物を見つけることができた。


今日相手をする二年生の二人だ。すでにこちらを待ち構えていたのだろう、片方は道のど真ん中に。もう一人は玄関にある雨よけの屋根の上に座ってこちらを待っているようだった。


「集合時間にはまだ時間があったと思うけど・・・少し待たせたかな?」


「そうみたいね。早いところ済ませましょうか」


康太は槍を、文はすぐに魔術を発動できるように身構えながらゆっくりと近づいていく。


二人も康太と文がやってきたことに気付いたのか、こちらの方を向きながら敵意を向けてくる。


二人ともすでに魔術を発動できる状態にはなっているのか、何か合図でもあればすぐにでも戦いが始まりそうな空気だった。


初手はどうするか。康太がそんなことを考えている間にその結論を出したのは隣にいた文だった。


自身の体から電撃を発生させると二人の魔術師めがけて同時に攻撃を仕掛けていた。


当然のように二人はその攻撃を防いだ。片方は一般的な防御魔術である障壁を、もう一人は水の盾を作り出して電撃を地面に逃がしていた。


気の早いことだと、康太は槍を構えた状態で文から離れる。もしこれから文が正面戦闘をしようとするならば自分は近くにいるだけじゃまだ。うまく離れながら相手の隙をつかなければ何も仕事がないまま終わってしまうかもしれない。


とはいえ相手も文の攻撃に何の問題もなく反応したのだ、それなり以上の実力を有しているとみて間違いないだろう。


康太が自分から離れたことを確認すると、文は体にまとっていた電撃をさらに強力なものにしていく。

当然その体の周りにある電撃から発せられる光も相当強くなっており、文が攻撃を仕掛けるたびにそれは閃光となって周囲にいきわたっていた。


だが今までの経験から、康太はすでに文が自分のフォローに徹しているのだと気づいていた。


文の電撃は確かに強力になればなるほどに発光も強くなるが、ここまで強くなるものではないのだ。


少なくとも目がくらむ、あるいは目くらまし代わりになるようなものではない。


今文は普段の電撃の攻撃に加えて、光属性の魔術を併用することで電撃そのものが目くらましになっているかのように偽装しているのだ。


これの効果は二つ。相手が康太を見失いやすくなること。もう一つはこれから発動しようとしている電撃の威力が高いと誤認させやすくなることである。


先ほどの電撃が防がれたから次は高威力で放とうとしているのだと勘違いさせることができるわけである。

その効果はすでに出ているらしく、文の放つ光を見て二人の魔術師は康太の姿を索敵の魔術で確認しながら文から距離を取ろうとしていた。


直撃するのはまずいと判断したのだろう。ある程度距離を取って文の出方を見るつもりなのだろうが、康太がそれを許すはずがない。


康太は上空に炸裂鉄球の収められたお手玉を投げると、蓄積の魔術を解放しさらに収束の魔術によって、周囲に無差別に飛ぼうとしていた鉄球を操って相手の移動しようとした先に降り注がせる。


康太の攻撃が来ることは相手も把握していたのだろう。先ほど文の攻撃に対してそうしたのと同じように障壁と水の盾を作り出して防いでいた。


障壁の方には若干ひびが入り、水の盾は鉄球の威力を減衰させたものの完全に防ぐことはできなかったのか、何発かその体に直撃していた。


といってもほとんど殺傷能力はない状態での直撃だったためにダメージはほとんどないといっていいだろう。


だが一瞬とはいえ相手の足を止めることができた。その隙を文が見逃すはずがない。


康太が意識を逸らせたために準備はできた。文は康太の位置を確認してから魔術を発動する。


文の体を中心に、周囲に電撃がほとばしる。そしてその電撃は方向を変えて二人の魔術師に一斉に襲い掛かっていた。


まるで康太の炸裂鉄球の軌道を電撃に置き換えたかのようである。


文が操作しなければおそらく無差別に周囲の者に対して電撃を放つだろうその動き、ひょっとしてまねたのだろうかと康太が訝しむ中、その電撃を前に二人の魔術師は一度互いの距離をゼロにして全力で防御態勢に入っていた。


ドーム状に展開されたその障壁は一見すると水の塊のようにも見えた。


内側には障壁、外側には水の膜を張ることで電撃を地面に逃がそうとしているのだろう。万が一康太からの攻撃があっても水による減衰に加え、障壁もあれば防ぎきることができると考えているようだった。


その考えが非常に甘いものであるということを文はよく知っている。


康太は自らの盾の中に含まれている三種類の鉄球の内、対生物用の中口径の鉄球を放つと同時に、小口径の対人用の鉄球も追従するような形で放った。


対生物用の鉄球は相手の水の膜を貫き、さらに内部にあった障壁をも突き破った。


とはいえその威力のほとんどは減衰してしまい、中にいた二人にダメージを与えることはできなかった。

だが攻撃はそれだけでは終わっていない。


収束の魔術によって中口径の鉄球を追従するように操られた小口径の鉄球は、中口径の鉄球があけた穴をすり抜けるようにドーム状の防壁内部に侵入していた。


ほとんどは水の膜や障壁の一部に阻まれたが、数発は威力をそのままに、二人にめがけて襲い掛かっていた。


自分たちへの攻撃がまだ生きているとわかったところで反応できるはずもなく、それぞれ腕と肩部分に被弾するも、ほとんどといっていいほどに戦闘行動に支障はない場所だ。


足に当たってくれれば康太としてはありがたかったのだがそううまくはいかないということだろう。


文の扱う現象系の攻撃魔術、そして康太が使う物理系の攻撃魔術。二人がそれぞれ分担して違うタイプの攻撃をしてくることが二人にとっては脅威に感じられたのだろう。


先ほどまでの防御を解き、それぞれ攻撃魔術を放ってくる。


片方は地面にある砂を操って文を捕まえようと襲い掛からせ、片方は康太と文両方を一度に攻撃しようと炎の塊を放ってきた。


砂はまるで生き物のように一定の形を作り出し動き出し、炎は無数の球体となって康太と文のもとへと降り注ぐ。


どちらがどちらの攻撃を使っているのかはわからないが、少なくとも現時点で相手もそれなりにこちらへの警戒度を上げたのは事実だ。


先ほどの康太と文の攻撃、確かに防御していたのにもかかわらず突き抜けてきた。これは相手に強い威圧感を与えたのだ。


だが康太と文からすれば、あの攻撃に対してあの防御の仕方では不備があったとしか言いようがないのである。基本的に現象系と物質系では防ぎ方が全く異なるのだから。


電撃などであれば最悪魔術を使わずとも物理的な干渉をしてしまえば防ぐことは容易だ。場合によっては相性などもあるためにその現象そのものを把握してから防御の方法を最適化していく必要があるだろう。


そうすれば効率よく防御することができ、消耗もかなり減らすことができる。


だが物理系の攻撃となると防ぎ方はかなり狭まってくるのだ。同じように物理的に干渉する以外に止める手立てはほとんどないのだ。


現象系の防御魔術で止められるものももちろんあるがそれにも限界がある。だからこそそれぞれの防御の仕方をある程度想定して行動しなければ痛い目を見るのだ。


今回は文と康太がそれぞれ別の攻撃をしたために反応が遅れ最適な防御をすることができなかったのが原因である。


とはいえ相手はすでに最適な防御手段を有しているのだ。対応を間違えただけであってその方針としては間違っていない。


水の魔術。康太と文が戦うにあたってこの魔術は基本的に二人の天敵となりえるものなのである。


水は電気を良く通す。純粋ではない不純物の混じった水に限るが、その性質は文も利用している程度には強い。


それは防御にも使えるし補助にも使える。文が主力として扱っている電撃に対して、水属性の魔術を扱えるというのはかなりのアドバンテージになりえるのだ。


そして康太が使う物理的な攻撃にもこれは当てはまる。水の抵抗力というのは案外ばかにならないのである。


空気中の抵抗を一とした場合、水の抵抗は約一万。通常の空気抵抗ですら数十メートルの有効射程もない炸裂鉄球では数センチそれなりの速度で進めばいい方なのだ。


逆に言えば数センチ以上の水の盾を作り出せば康太の使う鉄球系の攻撃はほぼ封殺できるといっていいだろう。


だが康太はすでに一度水属性の専門家と戦っている。


倉敷という精霊術師との戦いで、康太は自分の魔術における水属性との相性の悪さに気付いていた。


魔術における防御というカテゴリーの中で水の防御というものは現象的な干渉力も持っているうえに物理的な抵抗も有している。


しかも岩や鉄といった固体ではなく流体であるために、物理的に破壊するということが難しいのだ。


これがただの障壁であったのなら、攻撃を一点に集中して破ればいいだけの話だ。だが水である場合攻撃を集中してもあまり意味がない。


もっとも効果的な攻撃は水を一気に弾き飛ばすほど強力な一撃を加えるか、水そのものを消滅、あるいは変化させるかの二択だ。


康太は現状どちらもほぼできないに等しい。だがすでにそういった防御に対する対策をすでに康太は有していた。


それは遠隔動作の魔術だ。術者と攻撃の間に展開される盾状の防御法を使ってくる相手にはたいていこの魔術が効果的なのである。


定点的に自身が今行っている行動を念動力によって疑似的に発動できるのだから、盾で防いだところで意味がない。


康太は炎をよけながら自身の攻撃のタイミングを見計らっていた。もし遠隔動作を使うのであればそれはここぞというときだ。相手にどこでも攻撃できるような手段があると知られるのはこちらとしてもデメリットが大きい。


そのためここで勝負が決まるというタイミングで使ったほうが効果的だ。そうでないと無駄に警戒され、仕掛けがうまく決まらない可能性もある。


康太がいつまでたっても本格的に攻撃しないことで、文も康太が様子を見ながらも機会をうかがっているのだと察した文は小さくため息をついて目の前に迫る砂と炎に対処しようと魔術を発動した。


発動したのは風の魔術だった。こちらに向かってくる砂に対して強い風を巻き起こして強引に砂を外側から吹き飛ばしていく。


吹き飛ばされた砂は相手の制御から離れたのか、風によって運ばれながら地面に散らばっていく。


そして文が起こした風によって炎はより一層大きくなりながら文に向けて直進していた。


相手からすれば文が対応ミスをしたと思っただろう。だが文は何も問題なさそうに腕を思いきり横に振りぬいた。


評価者270人突破したので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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