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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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近い世代

「なるほど・・・なかなか厄介なことになっているようだの」


「そうでもないよ。少なくとも戦う日と相手が決まってる時点でだいぶましだ。それに相手もそこまで厄介そうなタイプじゃないしな」


「ほう?私とどちらが厄介だの?」


「あはは、比較すらできないな」


康太は小百合の店の地下で戦いの準備を進めていた。結局金曜日の夜、そして土曜日の夜と戦いは日をまたぐことになった。


連戦ではなくなったとはいえ、康太の装備はそう簡単に用意できるものではない。日常的に用意していた装備に加え、予備の装備も総動員して戦いに挑む必要があるためこうしてアリスと話しながら武器や装備の準備をしているのである。


「でもさ、戦いっていうとちょっと身構えちゃうけど、正直少しだけ楽しみでもあるんだよな」


「楽しみ・・・ほうほう・・・コータがそこまで戦いそのものを楽しみにするというのは珍しいの」


康太は別に戦闘狂というわけでもなければ戦うことが大好きなバトルマニアというわけでもない。


むしろ戦いを避けられるのであればそうしたいという考えの持ち主だ。付き合いの短いアリスもそのくらいはわかっている。


戦いを選ぶということはそれだけ自分の身を危険にさらすということだ。普段の訓練でその危うさを十分以上に知っている康太からすれば、戦いは自ら挑むものではなく可能なら避け、相手から挑まれたら仕方なく行うものなのだ。


そんな康太が戦いを楽しみにしているという事実に、アリスはほんの少しだけだが驚いていた。


「して、なぜ楽しみなのだ?別段特別な戦いというわけでもないのだろう?何かを賭けているわけでも、勝てば何かあるわけでもないのだろう?」


「そうなんだけどさ・・・ほら、俺って今まで近い世代で戦ったことってほとんどないんだよ・・・」


近い世代というのがどういう意味を持つのか、アリスは少しだけ時間がかかっていた。何せアリスにとって十年程度の違いはないに等しいのだ。


人類皆年下状態のアリスにとって、たった数年の違いで何がそんなに違うのかと問いただしたくなるほどだ。


だが康太の言いたいこともわからないでもない。悩んだ末に康太が言いたいことを少しではあるが把握したのか、アリスは難しそうな顔をしながらうなっている。


「つまり、同学年、いや一つ上の魔術師と戦えることが珍しいから楽しみだと・・・そういうことかの?」


「まぁそういうこと。実際俺の周りって年上ばっかりだからさ」


「ふむ、私も一応年上としてカウントしておるのかの?」


「むしろお前が筆頭だよ。一番年上じゃんか」


康太の周りにいる魔術師は確かに歳上ばかりだ。唯一同世代の魔術師は文だけ。真理もある程度近いとはいえすでに彼女は大学生、同じ高校生ではないためにどうしても年上としてみてしまう。


一応精霊術師としてでよければ倉敷がいるが、やはり魔術師として行動を共にしたり悩みを共有するとなると精霊術師とでは考えが違うということが最近わかってきた。


そこまで気にすることではないと思うのだが、倉敷の方から何か壁を作っているように感じるのだ。


そのあたりは魔術師としての感性を持ち合わせていない康太ならではの感じ方なのかもしれないが、どちらにせよ康太の周りの同世代の魔術師というのは極端に少ないことに変わりはない。


実際に戦ったことがある中でも同世代、あるいは近い世代でも文と倉敷だけ。それ以外の魔術師はほとんど、というかほぼ全員が完全に年上だった。


今年の二月から魔術師になって、いろいろと事件に巻き込まれたりもしてきたが戦ってきたのも会ってきたのもほとんどが年上の魔術師ばかり。


年下の魔術師で土御門の双子とあったが、実際にほとんど戦っていないために今回のような独特の高揚感はなかった。


きっと本気で部活をやっていたら、こういう高揚感を得られたりするのかもしれない。


自分と近い世代の人間と競い合う。そういった独特の緊張感と負けたくないという気持ちの表れ。


魔術師になってから一層スポーツというものに対しての関心が薄くなっていた康太にとって、こういう感覚は実に久しぶりだった。


一つ上の先輩魔術師。彼らがどのように成長しているのか、どれほどの実力なのか。近い世代と手合わせをすることで自分が今どのあたりにいるのか、どれほどの実力を持っているのかを客観的に知ることもできる。


周りに高い実力を持っている魔術師が多すぎるために、どうしても過小評価しがちになってしまうが、そろそろ自分でも自他ともに認めるような実力の評価の仕方をしたいと思っていたのである。


魔術師にとって高校時代というのは個人差もあるが修業の終盤に差し掛かる時期だ。一人の魔術師としての活動を始める時期であり、ほとんどの魔術師が一人の魔術師として活動してもおかしくない、あるいは問題ない実力に高められている。


自分自身が魔術師としてだいぶ出遅れている部類になるために、実際どれくらいの戦闘能力を有しているのかだけ把握しておきたいところである。


文に言わせるとなかなか高いものを持っているということだが、同世代に比べてどれほどなのかという疑問を解消する意味では今回の戦いはいい機会なのかもわからなかった。


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