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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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血の契約と同盟の口約束

「ただいまっと・・・なんだか楽しそうだな」


アリスが笑っているところに康太と真理が通訳を引き連れて戻ってきた。ベックは別件があるからと少し顔を出してすぐに部屋から出ていってしまう。この場に残されたのは康太たちと通訳だけだった。


だが通訳もこれ以上康太たちの深い部分に関わりたくないのか、部屋の外で待機するようだった。賢明な判断だと言わざるを得ない。


「おかえり、収穫はあった?」


「おうよ、それなり以上の収穫だ。とりあえずいろいろ説明していくか」


康太は自分たちが聞いたことを含め、携帯で録音していた内容をすべて文たちに聞かせることにした。

追加で自分の考えを全員に伝えるとその場にいた全員が唸り始める。


「・・・確かにこの条件だとそうするのはいいかもしれないけどさ・・・でもなんか言われない?絶対後からいろいろ言われるわよ?」


「ぶっちゃけ依頼を完遂しても破棄してもあとからいろいろ言われるって。それならこの方がまだましじゃないか?ていうかこの方が俺への被害は少ない」


「まぁそうかもしれませんが・・・アリスさんはどうです?この考えは間違っていると思いますか?」


「・・・間違っているとは思わん。実際に向こうはその条件を飲んでいるのだからあながち的外れというわけでもない。やり方が極端であるのは認めるがの」


「このやり方だとすぐにでも達成できるんじゃないか?それこそ今すぐにでも」


倉敷の言葉にそう言えばそうだなと康太が頷きかけた時にそれを真理が否定する。


「これをやろうとなると事前準備が必要ですね・・・少なくとも一度日本に戻る必要があります・・・話をつけておく必要もありますから・・・これは私がやりましょう」


「お願いします姉さん。他に必要なことってあるかな?」


「今のところはないわね。あとは向こうが何を言い出してくるかってところじゃない?それによってこちらも用意するものが変わってくるわけだし・・・そしたらアリスの協力が不可欠よ?」


それもそうだなと康太はアリスの方を向き歩み寄る。


ここまで条件はそろえた。あとはアリスがどうするかだ。


今回の考えを実行に移すには文のいうようにアリスの協力が不可欠、ここでアリスが協力しないと言ったらこの作戦は実行不可能だ。


「どうだアリス、協力してくれるか?」


「・・・協力するのはいいが、私への見返りは何だ?力を貸すのだから何かしら報酬があってもよいだろう?」


「んぐ・・・痛いところ突くな・・・報酬か・・・報酬ねぇ・・・」


与えられるものがあるかというと康太はほとんどないに等しい。実際に魔術師として、いや一人の人間として康太がアリスに勝っていることなどほとんどないのだ。


強いてあげるとすれば身長くらいのものである。よもや協力の代価に身長を提供するなどということができるはずもない。


どうしたものかと悩んでいるとアリスは何か思いついたかのようにホテルにあったメモ帳を一枚とってそこに方陣術で何やら術式を書いていく。


「ではコータ、これにお前の血を一滴たらせ。私への報酬はそれでいい」


「なんだこれ?方陣術か?」


「ふむ、これからの人生でお前が私の敵にならないという契約書だ。未来永劫お前は私の敵になることはできない、それでもいいなら」


「あぁ別にいいぞ。ちょいまってな」


アリスの言葉を最後まで聞くことなく康太は自分のベルトに収められていた一つのナイフを取り出して指先を切る。そしてその紙に一滴たらして見せた。


「ちょ!康太君!魔術師同士の契約をそんなに簡単に!」


「え?だって敵にならないっていうなら別にいいんじゃ」


「ていうかその紙になんか別の術式書いてあったらどうするのよ!ちょっと貸して!」


そう言って文は康太が血を垂らした紙を取り上げどのような術式が込められているかを調べ始める。


数秒してからこの紙に何の攻撃、あるいは血を与えたものに対する悪意ある術式も込められていないということを知って安堵する。本当にただの契約書だったのだなと知って文は大きく肩を落とすがそれと同時に康太に食って掛かった。


「あのね康太!こういう契約書は何があるかわからないんだからもうちょっと警戒しなさい!何があるかわからないのよ!?」


「わ、わかったわかった、次からそうするよ・・・ていうかこいつが相手だとそんな警戒しても無意味じゃないか?こいつがその気になったら何でもできるんだし」


「それとこれとは話が違うの!あんた自分のやったことがどんだけ危ないことかわかってんの!?」


康太のいう事ももっともだが文のいう事もまた正論である。康太が何をしたかというと要するにどんな契約内容かもわかっていないのに実印でいきなり判子を押したくらいに無茶苦茶な行動なのだ。


向こう見ずと言われても仕方がない。怒られるのも至極当然というものである。


「あ、それならアリス一つ提案」


「なにかの?そちらも条件を出すのか?」


「いや条件っていうかさ、俺と同盟組まないか?」


「・・・は?」


「だって俺はお前の敵にはならないんだろ?それなら同盟組めばよくないかって思ったんだけど」


康太の言葉にその場の全員が目を丸くする。それは勿論その提案をされたアリスも同様だった。


康太がそんな提案をしたと同時に文は康太に足払いをかけてその場に強引に正座させる。


「康太、分かってないようだから言っておくけどね、同盟っていうのは対等な立場であって初めて成り立つのよ?あんたとアリスが対等になれるわけないでしょ!力も実力も経験も知識も何もかも違いすぎるっての!」


「そんな事言ったら俺とお前だって実力差ありすぎるじゃんか!でも今対等だろ?同盟組んでるだろ?何も問題ないだろこれ!」


「それは私があんたに一度負けたからよ!こんな見た目してるけどこの人あんたよりずっと格上なのよ!?」


「でも俺こいつの傘下とかには入りたくないぞ?アリスだって俺の傘下に入りたくないだろ?」


「無論だの。面白いやつではあるが従おうとは思わん」


「ほらな?そうなったら対等同盟しかないだろ?」


このバカは何故理解できないのかと文は頭を掻きむしる。実際康太と文が対等同盟を結んでいるのは文が康太を対等だと認めているからだ。魔術師としての実力、特に技量面では文は康太より何枚も上手である。だが実際戦闘をしてみれば康太が文を上回る点はいくつもある。


それは機転であり考え方であり胆力であり、康太がもつ多くの点において文より勝っているからでもある。


そこから多くを学べると思い、同盟を組んだ当初は対等同盟を結んだ。そして今では康太が信用に足る人間であるとわかっているからこそ対等同盟を結び続けている。


逆に言えば康太が信頼に足る人間でなければ対等同盟を破棄していても何ら不思議はないのだ。


「まぁまぁ文さん落ち着いて。これはあくまで康太君の提案なのですから、アリスさんが了承しない限りそれはあり得ないんですよ。ね?アリスさん」


「私としては同盟を組んでやっても構わんぞ?こいつは面白いし何より信用できそうだ」


「ほらね?そう簡単にこういう人が同盟を組んでくれるはず・・・ん?」


てっきりアリスは康太の提案を拒否するとばかり思っていたために真理は目を見開いて驚いてしまっている。


アリスの正体を理解して、そしてその技量を知ってなおそのような判断をするとは思っていなかったのである。


というか康太の提案を何の疑問もなく受け入れているというあたりが信じられなかった。


「あのアリスさん・・・康太君がどういう考えを持って同盟を組もうとしたとかそう言う考えはないんですか?」


「ん・・・まぁ私を同盟相手にすればいろいろと幅が利かせられるとか交渉を楽に進められるとか虎の威を借りる狐とかそう言う事を想像したが・・・たぶん現段階でこいつはそこまで考えていないだろう」


「失礼な!本部の人間が日本支部に手出ししにくくなるとか面白い魔術とかあったら教えてもらおうとかその程度は考えてたっての!」


「・・・まぁとにかくこういうことくらいしか考えていないようだし、何よりこいつは策略とかに向いているとは思えん・・・良い意味でも悪い意味でも素直すぎる」


「なめんなよ?俺がその気になれば手玉にとれるっての」


「あんたはちょっと黙ってなさい話が進まないから」


「・・・はいすいません・・・」


正座させられている状態で大きく出ても情けないだけである。康太はその場でしょぼくれながら小さくなっていく。


「・・・まぁとにかく・・・フミ、お前も分かっているのではないかの?コータは良くも悪くも誰かを裏切れるようなタイプではない」


「・・・まぁ・・・それは・・・」


実際に半年間同盟を組んできた文からすればそれは明白だ。康太は問題にぶち当たった時の頭の冴えは確かに目を見張るものがある。そしてその戦闘における閃きと対応能力もかなりのものだ。


徐々にではあるが魔術師としての実力もつけ、その能力を高めていく。


だがその反面、康太は何かを企むという事を非常に苦手としている。


普通に問題を解決するための手段であるのなら一切の躊躇いなく行動できるくせに、誰かの期待を裏切るだとか誰かをだますだとかそう言う事がとことん苦手だ。


良くも悪くも愚直で素直、だからこそ文も安心して背中を預けることができているのである。


それを見抜くあたりさすがは何百年も生きてきた魔術師というべきか、人の性質を見抜くのに長けているようだった。


「同盟を組むうえで最も重要なのは実力ではない。如何に信じられるかという点だ。実力や性格面は少々頼りない・・・いや情けないが、コータは信頼できる可能性が高い」


「・・・まぁ信頼できるとは言わないんですね」


「当然だ、一目見ただけで人の全てを理解するなど不可能・・・コータとの同盟を続けるかどうかはこれからのコータとの同盟関係で判断する」


「・・・同盟を組むことは確定なのね」


文としては複雑な気分だった。今まで同盟を組んでいた相手がいきなり手の届かないような実力者と対等な同盟を組もうとしているのだ。


このままだと康太との距離が開いていくようなそんな気がしてしまう。ただでさえ実績面では康太に先を行かれているのに。


これ以上先に行かれては対等同盟などと呼べなくなるのではないか、これから先自分は康太の後をついて回るだけになるのではないか。そんなことを考えて文は僅かに歯噛みしていた。


文の中に僅かな焦りがあるのを康太は感じ取ったのかアリスに向かって口を開く。


「なぁアリス、文はどうだ?俺今こいつと対等同盟組んでるんだけど」


「は!?」


「ふむ・・・フミ・・・か・・・」


唐突な申し出に文は素っ頓狂な声をあげ、アリスはまじまじと文の方を眺めていた。


それこそ頭のてっぺんからつま先までまじまじと観察し、ふむふむと呟きながら彼女の隅々までを把握しようとしているようだった。


「なるほど・・・魔術師としての素質はかなり高いようだの・・・魔術師として過ごした年月もそれなり以上と言ったところか」


「そんなことわかるのか?」


「まず体の中にある魔力の性質を見ればそのあたりはよくわかる。いくつかの属性に変換しやすいように無属性、そして自分の得意な属性魔術用の魔力をそれぞれ保管している。これだけでもすでに平均以上は確定。保有している魔力の量からしてそれなり以上の実力者であることは容易に想像できる」


正面切って褒められるということにあまり慣れていない文はその評価に少し照れて視線を逸らしている。だがこの後に続いた彼女の言葉にその照れは消え去ることになる。


「だが戦い慣れていない感はある・・・魔術師としての能力はコータより上でも実際に戦うと恐らくコータ相手では苦戦するかもしれんの。まだ発展途上・・・いや成長中と言ったところか」


「・・・そんなことまでわかるの?」


「わかる・・・魔力をよどみなく操ることができているのはそれが平時だからこそ。お前達はまだ若い、その時点でよどみなく魔力を操れるという事は実戦に出た回数はせいぜい片手で数えられる程度だろう。そう言う魔術師は実戦で自分の弱さを実感する」


「・・・何でそんなことがわかるのよ」


「今までそう言う類の魔術師にはそれなりに会ってきた。才能を持っているが故に落とし穴に落ちやすい。フミはその典型といえる」


典型的なエリート。実際に魔術を操る実力はあるが実戦では弱いタイプ。特にラフファイトを苦手とする典型的な魔術師。


だがだからこそ怖さがない。強い魔術師ならこれくらいやって当たり前と思えるからこそ怖くない。


そう言う輩は実戦で全く予想していなかった事態に弱く、混乱し自分の本来の実力を発揮できないタイプだろう。


「実は先程私がコータと同盟を組んでいいと思ったのはフミの言葉があったからこそなのだよ」


「へ?そうなのか?」


「うむ・・・恐らく、フミはそれなり以上にプライドが高いタイプだろう。客観的に自分の実力と他者の実力を把握できるそう言う類の人間のように見える。だが同時に自分の弱いところをしっかりと見つめることができ、それを改善しようと努力できるタイプの人間」


「あー・・・確かにそう言うところあるかもだな」


康太に負けたにもかかわらずそれを素直に認め、自分にないものがあるかもしれないと康太の訓練の様子を観に行ったり、実際に体験してみたり訓練を交換するようなことをしたりと文は割と向上心が高い。


アリスのいうプライドが高いというのがどのレベルの事なのかはわからないが、そのプライドを一時的に無視してでも、格下とわかりきっている相手をなめることなく対等に見て自分の必要なものを得ようとする。そうすることができる人間なのだ。


「でもどうしてそれが俺と同盟組む理由になるんだ?」


「これはあくまで推論だが、フミがコータと同盟を組むきっかけになったのはコータから何かを学ぼうとしたからではないか?」


「あー・・・そうだったっけ?なんか別の理由があったような・・・」


実際は三鳥高校の先輩魔術師に対しての牽制でもあり、先にも言ったように文が康太から学べることがあるからこそ結んだというのもある。今となってはそれは理由の一つでしかないためにもはや康太も忘れかけている内容ではあるが。


「先も言った通り、このタイプは魔術師としてはかなり上の部類に属するだろう。恐らく学習能力も高いはずだ。恐らく自分になくて康太にあるものをすでに学習できている、あるいは学習する途上にいるはず。なのにまだ同盟を続けているというその点が私がコータとの同盟を決めた理由なのだ」


「・・・つまり今も文が俺と同盟を組んでるのが決め手になったってことか?」


「その通り。こういう輩は自分に利のあることしかしない。コータから学べることがすでに出尽くしているというのにその関係を破棄しないという事はコータに別の利を感じているからに他ならない。これも私の推論だが、恐らくコータとの付き合いが心地よくなったか、あるいは利益不利益とかそういことを抜きにして信頼できる相手だと理解したかのどちらかだの」


「・・・へぇ・・・そうなのか?」


自分の考えをほぼ正確にいい当てられた文は腕を組みながら顔を赤くして視線を逸らせている。


自分の考えと心情をここまで言い当てられると恥ずかしいを通り越して死にたくなってくる。


何より自分の信頼の度合いが康太が思っているそれよりもずっと大きく重いという事を本人に知られたというのがかなり精神的なダメージになっていた。


康太の様に真正面からそう言う信頼を伝えられればいいのだが、自分は真正面から素直にそういうことを言うことはできない。どうしても斜に構えて返事を返す形でなければ上手く伝えられないのだ。


「コータよ、お前に一つ助言をしてやろう。こういう輩は素直になるのが苦手でな、恥ずかしがっている時は暖かく見守ってやるのが良いのだ」


「そうなのか・・・わかった」


アリスの助言をどのように受け取ったのかは知らないが、康太は文の肩をやさしく叩いて満面の笑みを浮かべている。


その笑みと共に慈愛の瞳が自分に向けられていることがわかった瞬間、文はある意味吹っ切れた。


「あぁもう勝手な事言って!こっちの考え全部言っておいて何が見守るよ!こんなの公開処刑じゃないの!」


「よいではないか、こういう時ではないと素直になれんだろう?」


「素直になる必要なんかないのよ!こいつには基本的にいつも言いたいこと言ってるんだから!」


「自分の心の内を明かさない時点でそれは素直ではないのぅ・・・ふふふ・・・喜べコータよ、フミは私が同盟を組むに値しそうだぞ?」


「あったまきた!勝手にしなさいっての!」


「アリス、あれはどう反応すればいいんだ?」


「あれは照れておるのだ。素直になれない上にプライドが邪魔して喜ぶこともできない。だからこそあのように憤慨するしかないのだ。ここは微笑ましく見守ってやるのが吉だの」


アリスのいう事そのままに康太は微笑を浮かべて憤慨して自分たちに背を向けている文の方を見つめる。


どこか慈愛に満ちた瞳を向けられていることに気付いているのか、文はさらに心の中で憤慨していた。


だがこれ以上過剰に反応すれば相手の思うつぼだとわかっているのだろう。これ以上二人に対して何も言う事はなく、ただこの状況がどのように変わるのか、その流れを静観することにした。


もっとも現時点でだいぶ傷を負ったように思えるがそのあたりはもはや今さらというものだろう。


「まぁとにかく俺らと対等に同盟を組むってことでいいのか?それとも何か条件必要か?」


「いや必要ない。私としては単にお前達が信頼できるかのお試し期間のようなもの、まずは対等にお前達の生活や実情を把握させてもらう・・・っと同盟を組むのは良いのだが何か書面に残しておいた方がいいのではないのかの?」


「へ?別にいいよそんなの。俺と文もそんなもの残してないし、口約束みたいなもんだよ」


康太と文の師匠である小百合とエアリスは互いに弟子を交換するという約束事に関しては何やら書状を交わして正式に契約という形をとったようだが、康太と文の同盟にはそんなものは存在していない。


話の流れで『よし同盟組むか』という風になったから組んだだけで、別に同盟がなくても文と康太の関係性はほとんどと言って良いほど変わることはないだろう。


「お前は同盟という存在の意味をとことん理解していないようだの・・・いや魔術関係に関する教養がないのでは仕方がない話か・・・まぁよかろう。それで?お前達の同盟の名は?」


「・・・へ?そんなものない・・・と思うけど・・・文、俺らの同盟ってなんか名前あったっけ?」


「・・・そんなのないわよ。二人だけの同盟に名前つけてどうするの」


「何をもったいない。よし、せっかく三人になったのだから何かしら同盟の名を決めようではないか。こういうのは必要だぞ?なにせそれが通り名のようになるのだからな」


文のいう事ももっともだ。二人だけの同盟に名前を付けたところで何の意味があるのかと言いたくなってしまう。


だがアリスのいう事もまたもっともな理由だ。三鳥高校の魔術師同盟などのように自分達が所属しているもの等を同盟のシンボルとすることもできる。そうすることでその同盟に所属しているものが一体どのような人間なのかを理解することができる。


逆に相手に情報を与えかねないが、脅威度をわかりやすくするという意味では的を射ている発言である。


「そんなの急に言われてもな・・・姉さんは何かあります?っていうか姉さんって同盟組んでたりするんですか?」


「んー・・・私は不戦の条約を交わしたりはしていますが同盟というのは・・・名前なら三人に共通しているものを挙げてみたらどうでしょうか?」


「共通って言っても・・・康太と私ならまだしもアリスが含まれるとなかなかないですよ?」


ようやく復活してきたのか文は少しだけまだ赤い顔をこちらに向けて話を進めようとしてくる。


話の流れが先程までの自分へのいじり行為から同盟の名前に変わったことでここで積極的に話の流れを変えようとしているのだろう。


その少しだけ赤い顔がなければ完璧だったのだが、如何せん彼女は一度崩されてしまうとポーカーフェイスができない性質なのだろう。


「ブライトビー、ライリーベル、アリシア・メリノス、並べても特に共通点はないな」


「お前のは本名じゃないのか?術師名とかは?」


「昔は術師名を名乗る文化などなかったのだぞ?今さら何か付けろと言われてもな・・・」


仮面をつけなかったり術師名というそのものがなかったりと、一体いつの時代の話なのだろうかとアリス以外の全員が疑問符を浮かべる中、三人は互いの共通点がないかを考えていた。


実際この三人で共通点を探すのは割と難しい。康太と文なら日本人であり学生であり同級生であったりと割と共通点は多いのだが、そこにアリスが加わると途端に共通点を見つけるのが難しくなる。


同盟の名前など無理に決めなくてもよいのではないかと思える。少なくとも現段階で話すような内容ではないのは確かだ。



土曜日、誤字報告十件分、合計で四回分投稿


お祝いについては日曜日にまわします。例によってたくさんあるんだよなぁ。嬉しい限りです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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