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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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対策案

「本部の人間ってどうしてこいつを無力化したいんでしょうね?厄介だっていうのはわかるけどそれでここまで被害を出すようなら諦めたほうがいいんじゃ・・・」


「同じようなことを何人もの人が思ったのでしょう。特に指導者や代表が代わる度に同じようなことが起きていると思っていいでしょうね・・・同じ轍は踏まないと思いながらも同じような流れになっているという感じでしょうか」


良くも悪くも人間というのは自らの経験でしか物事を学習することができない。数多くの資料や誰かの証言があったところでそれを実体験として学ぶことはできないのだ。


当時はこれだけやってダメだったのならこうすれば行けるはずだなどという根拠のない考えの元実行した作戦がいくつもあるだろう。


ついでに言えばそう言った指導者たちに付き従う魔術師たちは不可能だとわかっていても従うほかないのだ。


どのような理由があれど上司からの命令は断るわけにはいかない。しかも大勢の魔術師たちが参加する中で自分だけ参加しないというのは許されないだろう。


ただでさえ相手が相手なのだ、一人でも多くの戦力が欲しいと思うのは必然だ。断れるような状況ではないしもしこれで成功すればその功績の一部は自分が得られるのだ。


そう言う下心や虚けな上司のせいもあって今までこういった作戦は繰り返されてきたのだろう。


今回の康太たちもその一部になろうとしている。だが本部の思惑なんて康太たちにははっきり言ってどうでもいいことだ。何とかして自分達だけでも無事でいたいと思うのは至極当然の対応だと言えるだろう。


「では皆さんある程度資料を読んだでしょうからとりあえず現状考えられる消耗戦以外の案を出していきましょう。何かありますか?」


真理がそう提案するが康太たちの中には具体的な対策などあるはずがない。


今回の相手がただの人間であったのならそれも考えられただろう。だが今回の相手はもしかしたら人間ではないのかもしれないのだ。そんな相手に対して通常の手段が通じるとは思えない。


だが何も言わないよりはましだ。とりあえず考えられる手段を次々出していくことにした。


「長距離からの狙撃は効きませんかね?昔ならまだしも今はかなり遠くからも攻撃できますし」


「狙撃というと当然銃を扱うことになりますね・・・その銃を扱えてなおかつ長距離から的確に狙撃できる人物が協会内にいることが条件になるでしょう。ですが相手がもしその狙撃手に気付いたら無駄になりますね」


「索敵範囲が広ければ簡単に気づかれちゃいますね・・・狙撃銃って大体どれくらいの射程が見込めるの?」


「ものによりけりだけど、一キロ以上離れてると本当にかなり腕前がないときついらしいぞ?それに距離があればそれだけでかい銃になるし・・・」


超長距離からの狙撃というのは実際不可能ではない。有効射程だけで言えば二キロ程度のものも存在しており、狙撃するだけなら不可能ではないだろう。


もっともそれだけの距離を空けた状態で人間一人を的確に狙い撃つとなると本職の人間でも難しい。


特殊作戦などに参加する軍人レベルでなければ不可能な所業だろう。そんな技術を持った人間が魔術協会にいるとも考えにくい。


「じゃあ魔術で狙撃っていうのはできないのか?すごく遠くからの一方的な攻撃みたいな感じで」


「現代の魔術師でできるような攻撃ならば恐らく相手も可能だと思っていいでしょうし、何より対策してそうですね・・・あまりに距離が遠いとこちらも誤魔化されそうですし・・・」


誤魔化されるというのはつまり魔術によって距離感やその場所など、視覚的な情報を変更される可能性があるという事だ。


文も扱える光系統の魔術であればそのあたりは容易に行える。長距離からの攻撃というのは相手にも理があるだろう。そう考えると得策とは言えなかった。


「いっそのこと物理攻撃のオンパレードができりゃよかったんだけどな・・・空爆とかそう言うの」


「どんな手段でも使っていいのなら考えたけどね・・・そんなことしたら一発でばれるし・・・何よりそれだけやっても防がれる可能性あるのよ?」


ぶっちゃけ爆発だけなら防ぐ手段いくらでもあるしと文は考えながら次の案を出してくる。


「いっそのこと正面からの戦いじゃなくて常に不意打ちってのは?相手も索敵を常に使わなきゃいけない分気を張るだろうし」


「索敵してる状態じゃ不意打ちにはならないだろ。それに魔力消費が少なすぎると消耗戦の意味がない」


「んー・・・実際考えてみるとできる手段ってかなり少ないわよね・・・毒ガスとか使っても風の魔術ですぐ対応されそうだし・・・」


現代の兵器や技術を使って倒そうという考えになっているのは今までの作戦において使われなかったであろう物を使おうとしているからだろう。


実際そうしたほうが確実だろうし、取れる選択肢は増えていく。相手が魔術師であり、なおかつ人外である可能性を考慮するとどのような行動をとっても無意味なのではないかと思えてならなかった。


「絶対に負けないようにするにはまず戦わないことが大前提になるよな・・・相手が戦おうとした瞬間に終わる気がする」


「あー・・・確かにそれはあるかも・・・今までの資料の感じだと相手が攻略しようと思った瞬間に勝負がついてる印象があるわ。戦わないことが最善策ってのもどうかとおもうけど・・・」


今までの資料を見て康太たちが感じたのは攻略不可能というイメージだった。まだ三箱目の段ボールの資料を見ていないにもかかわらずこの絶望感。今回ばかりは死ぬかもしれないなと思いながら康太は段ボールの中の資料に手を伸ばしていた。

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