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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十話「古き西のしきたり」

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二転三転

近接戦闘で不利なのは先ほどのやりとりで既に把握している。だが攻撃ではなく回避メインで相手の意識を逸らすことを目的にすればある程度接近しながら戦えるという事も分かった。


しかし相手が装甲にも似た魔術を発動した以上、こちらはそれを上回る攻撃を、装甲を打ち破れるだけの威力を持った攻撃をしなければならない。


先程の小型の鉄球は防がれた。距離がある状態では鉄球はダメージを与えることができないのは康太も真理も確認済みだ。


そうなってくると真理に渡したお手玉は決定打にはならない。それこそゼロ距離で発動しない限り良い結果は得られないだろう。


いや、もしかしたらゼロ距離で発動しても全くの無傷である可能性が高い。


しかも康太の魔力はだいぶ少なくなっていた。連戦に次ぐ連戦。今まで発動した魔術の数は数知れず、しかも肉体強化の魔術を連続して使用したせいもあってすでに六割近い魔力を消費してしまっている。


全ての魔力を足止めのためだけに使うというのならば問題はない。それだけの時間が稼げれば小百合はしっかりと目的を達成するだろう。


だが今回は目の前の敵もしっかり倒さなければいけない。小百合の下にこの男を行かせること自体がアウトなのだ。


任せると言われた以上きっちりと倒しておかなければ後でどんな小言を言われるかわかったものではないのである。


肉体強化はもう無駄に使えない。要所要所で瞬間的に使うのが最適だろうが、相手の攻撃速度と回避速度を考えるとほぼ常時使用状態とそう変わりはない。


だが少しでも魔力を温存しなければやってくるチャンスの時に魔力が枯渇していたなんてことになりかねない。


自前の弱弱しい魔力供給とDの慟哭の効果で魔力を補充し続けていると言っても肉体強化に加え他の魔術も使い続ければ供給より使用量の方が多くなる。なるべく魔力の回復をしながら相手の牽制をして相手に隙を作らなければならない。


だが康太はそこまで考えてその考えをすぐに覆した。


相手は格上。自分は未熟者。そんなことをして目の前の男が倒せるはずがないと結論付けたのである。


これで両者の実力が拮抗していて、なおかつ両者の特徴がそれぞれ明確に分かれているのであれば持久戦から徐々に差をつけていくような戦いにできたかも知れない。


ほんのわずかな差を少しずつ広げていく、そんな戦い方が出来ていたかもしれない。


だが両者の間には絶対的に実力差が存在した。少なくとも相手は康太より何枚も上手。持久戦に持ち込めばこちらが不利なのは明らかだ。それならばいっそと康太は考えたのだ。


肉体強化を全開にし、同時に再現の魔術を発動し魔力の消費量が供給量を上回ろうとも相手に隙を作ろうと康太は襲い掛かっていた。


槍での攻撃は前と同じ。だがその足運び、体さばきは今までのそれとは全く違っていた。


再現の魔術を使い空中に足場を作って空中を縦横無尽に駆けまわる。しかもカツキチの巨体の周りだけを素早く槍を振いながら跳び回る。


相手も肉体強化と肉弾戦が得意なだけあって康太の攻撃に完璧に反応している。康太の槍を的確に防御しながら自分の体勢が崩れないように足元にも気を使っているのがわかる。


だがそのおかげで一瞬だが真理への警戒が薄れた。


真理は土属性の魔術を使いその中にお手玉を二つとも潜ませると、周囲の廃材を念動力を使って持ち上げカツキチの周囲に展開してみせる。


真理がやろうとしていることを察した康太はカツキチの頭上に跳び上がりその頭上めがけて槍を突き立てるべく、一直線に落下していく。


康太の動きに呼応するかのように廃材はカツキチへと向かっていき、直撃の数瞬前、カツキチの足元に康太のお手玉が二つ姿を現す。


そして康太の槍と廃材がカツキチに直撃する瞬間、康太はお手玉の中に含まれている鉄球に込められたエネルギーを解放する。


上下左右、三百六十度すべてからの同時攻撃。康太にも鉄球が襲い掛かるが、その鉄球はカツキチの体が盾になって防いでくれる。何より周りの廃材が康太に鉄球が襲い掛かることを防いでくれていた。


阿吽の呼吸というのはまさにこういうことを言うのだろう。意識を頭上に集中させ、同時に攻撃する。しかも互いに負傷がないようにフォローしながらタイミングを合わせて攻撃する。


完璧な連携だった。恐らく並の魔術師ならこの攻撃を受けて無事でいられるものはいないだろう。


そう、並の魔術師であればここで戦闘は終わっていた。


そして今回相手にしている魔術師は、良くも悪くも並ではなかった。


カツキチは体中に光るオーラを纏い、頭上から襲い掛かってきた康太の槍をその両腕で掴み、廃材には目もくれず足元には水の膜を展開していた。


完全に読まれていた。


あの一瞬でこちらのやるべきことを読んだのだろう。もしもう少し攻撃が早ければ、あと数瞬だけ攻撃が早く届いていれば、あるいは康太が蓄積の魔術を解放するのがあと一瞬早ければ相手に致命傷を与えることができていたかもしれない。


本当に紙一重の差が、康太と真理の渾身の攻撃を相手に防御させてしまった。


槍を掴まれたままではどうしようもないと、康太はカツキチの腕を掴んでその腹めがけて何度も蹴りを当てる。だがまったくびくともしなかった。だがそれでも康太は何度も蹴り続けた。


全く痛くないとはいえ相手も何もしないはずがなく、康太は槍を掴まれたまま地面に叩き付けられ、肺の空気がすべて押し出されるかのような感覚を覚える。


そして体を蹴り上げられ宙を舞っている瞬間、その光景が目に入った。


自分の体めがけ拳を叩きつけようとしている、巨体。


「姉さん!逃げて!」


防御態勢をとるよりも早く、康太はそう叫んだ。


前衛である自分がいなくなれば真理へと攻撃が集中してしまう。それは避けなければならない。


拳がめり込む数瞬前に康太は全力で肉体強化をかけ防御しようとするも、その腹部めがけて全力の一撃が直撃する。


肉が潰される音が聞こえた気がした。


筋肉の繊維と内臓にまで届くのではないかという容赦のない一撃は康太の体を大きく吹き飛ばした。


ちょっと所要にて予約投稿


反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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