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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
八話「深淵を覗くものの代償」

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反省と治癒

「・・・ん・・・あれ・・・?」


文が目を覚ました瞬間、認識できたのは見慣れない天井と鼻を突く芳ばしい香りだった。その香りがコーヒーのそれであると気づくのに少しだけ時間がかかってしまった。なにせ頭が混乱していて視界を正常に戻すのにすら時間がかかったほどだ。


「お、ようやく起きたか。痛いところあるか?これ何本ある?」


文が目を覚まし体を起こそうとしているのを確認したのか、康太はコーヒーカップを持った状態で指を三本立てて見せる。


正気かどうか、というより視界が正確かどうかを確認しようとしているのだろうがその判別の仕方はどうかと思えて仕方がなかった。


「三本よ・・・私どれくらい気絶してた?」


「二時間くらいだな。そこまで長い間じゃない」


「うわぁ・・・なんか情けないわ」


「殴られて気絶したんだから仕方ないだろ。それよりどっか痛いところとかあるか?特に頭とか」


殴られて気絶したという事は脳を揺らされたという事でもある。この場に真理がいれば治癒魔術でそのあたりをすぐに治した状態で気絶させておくのだが、残念ながら真理はこの場にいない。


脳へのダメージというのは結構バカにならない。毛細血管が一つ切れただけでもかなりの深刻な状態を起こす可能性がある。


「・・・ん・・・一応頭痛はないわ・・・頭は大丈夫みたいね」


「頭が大丈夫っていうとまた別の意味に聞こえるけどな。とりあえず無事で何より」


「ん・・・なんか殴られることに耐性ができてきてる気がするわ・・・前はもっといろいろときつかった思い出があるけど・・・」


「あぁ・・・確かに最初に気絶させられたときはもっとグロッキーになってたしな。そう考えると確かに耐性はできてきてるかもな」


殴られ続けることによって人間に耐性ができるかと言われると正直疑問を浮かべてしまうが、今回文はどうやって殴られたのを認識した状態で気絶した。ギリギリのところで後方に飛ぶなり歯を食いしばるなりの対策が取れていたのかもしれない。


どちらにせよ以前に比べるとだいぶ近接戦闘に関してはましになってきているように感じられた。


「それで、奏さんは?」


「ん、今ちょっと奥に行ってる。奥にシャワーがあるからそれ浴びてるんだよ。あの後も結構訓練したからな」


「二時間も時間があればそうなるでしょうね・・・まだまだ先は長いなぁ・・・」


康太がほとんど気絶せずに訓練できている中で文は一度気絶してほとんど訓練ができない状況にあった。


これが今の康太と文の間にある実力差だ。


もちろん総合的な魔術師戦になった時は文の方が圧倒的に上なのは言うまでもないのだが、近接戦という部門に関していえば康太の方がずっと先を歩いている。


どんな分野に関しても負けることがいい気分なはずがない。文としては康太に対してはいかなる分野でも勝っておきたかった。


なにせ康太はこの二月から魔術師になった素人で半人前以下なのだ。そんな康太に何かで負けることは文としてはだいぶプライドを傷つけられることでもあるのである。


もっとも四月に負けた時点でプライドも何もない状況になっているのは言うまでもないことであるが。


ふと康太の方を見ると、康太の体にもいくつも打撃痕や僅かな斬撃の痕が残っているのに気付く。


恐らく文が気絶した後も延々と訓練をしていたのだろう。痛々しい姿を見て文は僅かに目を細めてしまった。


「あんたのそれ・・・何とかならないの?酷い有り様よ?」


「ん?あぁ傷か。とりあえず今肉体強化使って回復してるんだけどな・・・やっぱ俺の肉体強化じゃ治りをちょっと早くする程度しかできないわ」


康太の使える肉体強化は無属性の物。身体能力やら感覚機能やら、人間がもっているあらゆる機能を全体的に高める事ができるがその反面一つ一つの機能の強化はそこまで高いわけではない。


治癒能力を限定的に強化できる魔術でもあれば話は違ったのだろうが、今はこの無属性の強化だけが康太にとって唯一の治療の方法だった。


「文は治療魔術って覚えてないのか?覚えてるならやってほしいんだけど」


「簡単に言わないでよ。治療魔術って結構難しいのよ?真理さんみたいにしっかり勉強したりしないと結構面倒なことになるんだから」


「肉体強化系の治癒ならできるだろ?それでもいいぞ?」


「それでもあんたが使ってるのと同じようなものよ?属性の肉体強化でもたぶん今の状態とあまり変わりないわ」


治癒魔術にはいくつか種類がある。大まかに分けると肉体強化を用いた治癒とそれ以外の治癒だ。


康太が今用いているのが肉体強化を使った治癒。これはもともと人間がもっている治癒能力を魔術で一時的に助長することで得られる治癒である。特定の属性の肉体強化を応用すれば高い効果を得られるが、やはりそこは肉体強化、人間の限界を超えることはできない。


ない腕を生やしたり、そこにない血液をどこかから作り出すということもできはしない。


無から有を生み出すタイプの魔術ではないため、その分体力を消耗するし栄養がなければ一気に死に近づくだけなのである。


文も属性型の肉体強化を修得しているし、治癒の真似事もできるがそれは康太が使っているのと似たようなものだ。はっきり言って真理ほど高い治癒性能があるわけではない。応急処置レベルのものである。


一応今日も予約投稿


とりあえず予約投稿は今日までにしようかと。明日からは年末だしちょっと多めに投稿しようかなとか考えています


これからもお楽しみいただければ幸いです

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