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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
八話「深淵を覗くものの代償」

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武器の手札

「奏さんは無属性で何か射撃に近い魔術は覚えてないんですか?」


「もちろん覚えてはいる。だが正直私がホイホイとお前に魔術を教えるのはよくないようにも思えてな・・・」


「・・・奏さんが俺の師匠じゃないからですか?」


「それももちろんある。だがお前自身未だ完璧にしていない魔術がいくつもあるだろう?課題をいくつも与えるのはあまり良くないように思う」


奏のいうように康太は未修得の魔術がいくつもある。特に実戦で使えるまでの練度に至っていない魔術がいくつもある。


以前智代に教わった解析の魔術や構築の魔術。そして奏に教わった魔術も未だ完全にものにできていない。


しかも小百合から新しく教わっている魔術もそうだし、さらには暗示の魔術でさえ完璧に使えない。風属性の魔術も未だ完璧とは言えない。


抱えている未解決の問題が多すぎるのだ。奏のいうようにあまり課題がいくつもありすぎても困るだけかもしれない。


やるべきことが多すぎるより一つのことに集中できていた方が効率はいいのかもしれない。康太は今やるべきことが多すぎる。


その為これ以上その課題を増やすのは得策ではないと奏は思っているのだ。そしてそれはたぶん間違いではない。


「まずは今の戦い方が盤石になるように尽くせ。少なくとも手札は増えてきているんだろう?それなら少しずつ距離を開いてでも戦えるようにすればいい」


「まぁそうなんですけど・・・課題は多いんだよなぁ・・・特に俺の場合長期戦は苦手ですからね・・・」


「・・・あぁ、お前の素質の場合確かに長期戦はあまりしたくないだろうな。ならなおさらだ。一撃で相手を確実に倒せるだけの手段や戦術を身に着けておいて損はない。それができるだけの手段をお前はすでに有している」


康太の使える魔術はどれも攻撃力の高いものが多い。使用方法にもよるが再現、蓄積といった魔術は当たり所によれば人を死に至らしめることが十分に可能な魔術なのだ。


康太が今までそれをしてこなかったのは偏に康太自身が人を殺すことそのものを忌避しているからに他ならない。


後は今所有している魔術をどのように活かすか。ただそれだけなのである。


「でも奏さんの所に来る時って大概槍の訓練しかしてないですけど・・・これで強くなれますかね?」


「何を言うか、お前の師匠は小百合だろうが。魔術師としての指導はあいつにしてもらえ。私はあくまで武器の扱いを学ばせるだけだ。それ以上は干渉しないようにしている」


確かに康太の師匠は小百合だ。そして奏自身あまり出過ぎた真似をしないようにしている節がある。


康太の師匠が小百合であるということを明確にしているというのもあるだろうが、何よりも彼女自身がそうであろうと、そうしないといけないと考えている節がある。


出過ぎた真似はしない。だからこそ彼女は槍の扱いしか康太に教えないのだ。


だが小百合の兄弟子として、康太に少し目をかけてやりたいと思うのも事実。その為康太に対して魔術を教えることもある。


どちらも行うのは矛盾しているかもしれないが、魔術師とて人間だ、時には矛盾した行動もとってしまうだろう。


「一度私と模擬戦闘を行ってみるのもいいかもしれないな。お前の実力がよくわかるだろうし」


「え・・・奏さんと・・・?槍だけじゃなくて?」


「魔術を使った総合戦闘だ。小百合や真理とはよくやっているんだろう?」


「そりゃやってますけど・・・奏さんとやると俺の身がもたないっていうか・・・最悪死ぬ可能性があるっていうか・・・」


「そのあたりは安心しろ。私だって人並みに弟子を持っていたんだ。ある程度の加減はしてやる。そうだな・・・今度休日でもあればあの店に顔を出すか」


まさかの事態に康太は若干ではあるが冷や汗をかいていた。


確かに小百合や真理と日常的に総合的な戦闘訓練は行っている。だがそれはあの二人だからこそ信頼できるのだ。


先日の戦い、奏の戦いの一部始終、というか奏の脅しの瞬間を見ていた康太としてはあれを自分にも向けられるのではないかと気が気でなかった。


あんな状態になったら自分も失禁してしまうかもなと思いながら康太は眉を顰める。


「でも奏さん最近忙しいんですよね?休みなんて取れるんですか?」


「今の社会には労働基準法というものがあってな、必ず休みを取らなければいけないという原則が成り立っているんだよ。もっとも原則であって絶対ではないがな」


「・・・えと・・・それは守らなきゃいけないことなんじゃ」


「世の中の全員が法律を守っているとでも思ったか?国によって違い、時代によって変わる法などいちいち守るようでは魔術師はやっていけないぞ?」


確かに奏のいう事は一理があるように思えるが、実際は休みがないことを豪語しているだけの事だ。


休んだ方がいいと思うのだがなと康太はため息を吐く。いつかこの人過労で倒れてしまうのではないかと康太は若干不安になっていた。


まさかこの会社全員が休日なしで働いているわけじゃないだろうなと、この会社のブラック度を今度調べてみようと思いながら康太はとりあえずコーヒーのお代りを入れることにした。


自分がこうしてやってきている間は奏をねぎらってやろう。そう言う風に思ったのだ。


社会人というのは大変だなとしみじみ実感しながら。


今日明日、もしかしたらあさっても私用で予約投稿になるかもわかりません


反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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