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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
番外編「祝福された少女が望むもの」

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撤退は迅速に

「最後にもう一つ、この依頼、失敗したらどうなりますか?」


「わからないというのが正直なところだね・・・僕の首が飛ぶか、あるいは大きなペナルティが与えられるか、その二択かな」


先ほどとは打って変わって、いつも通りの話し方になったのを見て、これはおそらく本当なのだろうと神加と詩織は判断していた。


「その依頼の、依頼主は誰ですか?」


「答えられない」


「依頼主の目的は?」


「答えられない」


「なぜ私たちに依頼をしたのですか?」


「君たちが適任だと・・・・・・僕がそう思ったからさ」


はっきりと答える時と、明らかに言いよどむ時がある。おそらく前者は本当のことを、伝えられることを言っていて、後者は嘘であるということをアピールしているのだろう。


「今回の依頼は私たちだけに依頼するんですか?」


「いいや、今回は君たちだけではなくほかの人物も同行する。合同の任務さ・・・きっと・・・・・・・協力してくれるよ」


本当ならばすぐに、嘘かあるいは違うことならば言いよどむ。


正直かなり面倒くさいやり取りだが、それでも支部長が何かしらの圧力をかけられているのであれば、これ以上追及するのは逆効果であろうことは予想できた。


『やはりこの部屋は何者かに見られているようだな・・・術式が走っている感じがする』


『どっかからか覗いてるぜぇ?さすがにどこからなのかはわからないけどなぁ』


『支部長は間違いなく弱みを握られているか圧力をかけられているとみて間違いないでしょう。となればこれ以上は・・・』


『わかってる。一度引いて状況を整理したほうがよさそうね・・・』


神加が目くばせすると、詩織も同じようなことを考えていたのか小さくうなずいて応えた。このままこの場所にいるのもまずいと判断してのだろう。部屋を出るための扉の方に意識を向けているのが神加も理解できた。


「わかりました支部長、あとは報酬のことだけ教えてください。そしたらあたしたちは準備に戻りますから」


「今回の依頼はただ物を届けるだけだからね。そこまで高くはない。けれど、戦闘が起きた場合のその消費などは補填が約束されているよ」


「残念ですね。それじゃあ私たちは失礼します」


神加と詩織は支部長室を出て足早に支部内を歩いていた。


「すぐに店に戻る。アトリも来るでしょ?」


「行く。いろいろと準備しなきゃだもんね」


どこに監視がいるかもわからないこの状況で悠長にしているほど二人は間抜けではなかった。


「シノ」


「わかってる」


詩織の言葉を受けるよりも先に、先ほどまでは感じなかった視線が自分たちに刺さっていることに神加は気づいていた。


あの部屋を監視していたものだろうか、それともこの場所に新しく神加をあまり良く思っていないものが現れたのか。


どちらにせよこの支部に長居するだけの理由はない。


神加と詩織は足早に支部から小百合の店の最寄りの協会への門を開いてもらい、即座に日本支部から脱出していた。


門のある教会から即座に出ると、二人はわき目もふらずに全力で走り出した。


真夜中で誰もいないことが幸いした。自分の魔術師の装備を即座に片づけながら走る二人を見るものは全くと言っていいほどにいなかった。


「やばくない!?さっきのやばくない!?やっぱ本部かな!?」


「じゃない?うちの支部長に圧力かけられるって言ったらそれぐらいしか思いつかないし、でもなんであたしたちを直接指名してきたのかしら」


「あの支部で私たちを指名する理由・・・思い当たる点は多いけど、戦闘が起きるってことを想定してるってことはちょっと面倒な案件なんじゃない?」


「でも、面倒な案件を解決するように支部長が依頼を受けたなら、兄貴の部隊を使うはずよ。一応あの部隊支部長直轄なんだし」


「でも支部長のあの言い方だと、圧力かけてる方から私たちを指名したっぽくなかった?妙に言いよどんでたのって、あれ嘘だってことでしょ?」


「たぶんね。支部長が気をきかせてくれたってことでしょ。どっちにしろあんまりいい流れとは思えないけど」


全力疾走しながら神加と詩織はいき一つ切らさずに話し始める。互いに思ったことを、考えたことを互いに共有していく。


この二人は少なくともあの支部長の状態が正常な状態であるとは考えていなかった。


何かしらの圧力をかけられているのだろうということはすでに確定。問題はなぜそのようになっているかというところである。


「私たちの方で本部にアプローチかけてみる?」


「やめたほうがいいわ。あたしたちまだ本部にコネも何もないでしょ。そんな状態でアクション入れたらさらに面倒になりそうな気がする」


「八方ふさがりかぁ・・・でもなんかこのまま言うことをそのまま聞くっていうのも癪じゃない?」


「それはそうだけど・・・けど、あんまりアクション起こしすぎると、たぶん支部長がなんかされる」


「それはダメだね。支部長がいなくなったらうちの支部崩壊するし」


今の日本支部は今の支部長がいるからこそ回っているということを二人は知っていた。


今の支部長がいなくなれば日本支部は緩やかに、そして確実に崩壊への道をたどるだろうということも容易に想像できた。


「とにかく情報は集めよう。何が起きてるのかとか、背景がわかれば少しはわかるはず!」


「了解!とりあえず店に戻って情報整理しよ!」


二人はそのまま全力疾走したまま小百合の店に戻っていく。その二人の姿を見ることができたのは偶然通りかかった一般人の酔っぱらいくらいのものである。


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