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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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管理と実情

「ということで部隊の拠点を作りたいんです。作っていいですよね?」


康太はさも当然のように支部長のもとにやってきて大まかに説明していた。有無を言わせない発言に支部長はやや頭が痛くなるのを感じながらも、実際康太がやろうとしていることに対して反論できるだけの材料がないのも事実だ。


部隊として編成する以上、部隊の拠点となる場所が必要であることは事実だ。作戦会議にしても物資の保管にしても人材の配置にしても、それらがないと成り立たないといっても過言ではない。


「それは・・・構わないんだけど・・・どうして僕にそれを?」


「可能ならその拠点に門をつないでほしくて。できます?」


康太の言葉に支部長は、また恐ろしいこと言いだしたよ、と眉をひそめる。


もちろん康太の言い分も理解しているつもりだ。拠点を作る以上、拠点はなるべく動きやすい場所がいいに決まっている。そう考えた時協会の門があるかないかで集まりやすさや指示を受けた後での動きやすさもかなり変わってくる。


「えっと・・・協会の門をその拠点に作ってほしいってことだよね?」


「はい。支部長権限でできませんか?一応支部長直下の部隊になるわけですし」


確かに支部長が動かしやすい部隊になるため、名義的には支部長の直轄部隊になるのは間違いない。


問題は協会の門を支部長の指示で増やすことができるかどうかという話だ。


「それは・・・んー・・・不可能ではないよ?不可能ではないけれど・・・現実的には難しいかなぁ・・・」


「どうしてですか?」


「協会の門は協会全体で運用してる。けど各門の管理自体は各国に任されてるんだよね。日本なら日本支部が、ロシアならロシア支部がって感じで、それぞれの国が管理してるんだよ」


「はい、それはわかってますけど」


「で、ここからが問題。管理は僕らでもできるけど、新しく作るとなると術式を扱える魔術師を呼ばなきゃいけない。で、その魔術師が問題でね」


「・・・あぁ、本部にいるってことですか」


支部長が可能ではあるが現実的ではないといった言葉の意味を康太は理解できた。康太と本部は今あまり関係が良いとは言えない。


仮に康太が拠点のために協会の門の敷設を頼んだとしてもそれを許可してはくれないだろう。


「協会の門の管理はできても、門の作成に関しては本部の人間だけができる・・・とそういうことですか」


「その魔術師たちが本部に所属しているというだけだけどね。協会の門はかなり高度な魔術だ。一つ作成するにしても、何人もの魔術師が何日もかかって作り出すものだから時間はかかるし面倒でもある」


協会の門の原理は簡単だ。龍脈と呼ばれる大地の力を原動力にして転移の術式を用いる。その術式は今まで作り上げた門一つ一つとリンクさせることでどの門にも行けるようにするというのが協会の門だ。


だが思い出す。康太はかつて協会の門が使われ、いや作られていたことを。


「でも支部長。以前協会の門が勝手に作られてたってこと、ありましたよね?こいつの時に」


康太はそう言いながらウィルを動かす。かつて協会の門を管理している、神父の魔術師がいた場所には確かに協会の門があった。


あれも本部で作り出したとなれば、それはそれで問題になる。


「あぁ、そういえばその話はしていなかったか・・・あの門は、協会で使っている門の劣化版とでもいえばいいかな。協会の門がそれぞれをリンクしてどこにでも行けるようにしているのに対して、あの門は一か所・・・つまり日本支部にしか行くことはできなかったんだ」


「つまり、行先の制限が追加されていたと・・・その程度であればだれでも作れるんですか?」


「いやいや、それでもかなりレベルが高いことには変わりないよ。あの神父の背後にどんな魔術師がいたのか・・・あるいは神父という立場を利用して頼んだのか、それはわからないけれど、あれは本部が作った門ではない。それは確かだ」


「なら、日本支部とだけつなげる門を今回の拠点に作ることも不可能ではないってことですね?」


康太の言葉に支部長は唸り始める。確かに不可能ではないかもしれない。能力を制限、もとい劣化させれば、本部の力を借りなくとも作成は不可能ではないだろう。


だが不可能ではないというだけだ。現実的に可能かどうかはまた話が別になってくる。


本部に黙って行動しようにも、おそらく康太の行動は本部にもマークされている。そんな状態で本部に隠す形でそれをやるのは現実的ではない。


「本部にもそれを公表する形になると・・・やっぱり許可されるかは微妙だよ?」


「どうあがいても危険が及ぶのは日本支部の中だけの話、そういえば本部も折れませんか?」


「どうかなぁ・・・そこは交渉次第だと思うけど・・・本部からすればさ、本部が管理できていない門を増やしたくはないんだよ。当たり前だけども」


「なるほど、本部が管理できていない門が増えれば本部の必要性がさらに薄くなるから・・・ってことですか」


「そういうこと。だから作らせてって言ってもダメって言われるのがオチなんだよ。そこでどう交渉するかって話なんだけど」


支部長も個人的には康太たちの拠点に門を作ってやりたいとは考えているのだろう。だが残念ながら本部が邪魔になる。


どうにか交渉して作成できないかと考えているようだがそれも難しそうである。


とりあえず門の作成は一度置いておいて、別の話を切り出したほうがよさそうだと康太は部隊の話に移すことにした。


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